しゃべり場

たくさんの初めて

 はじめまして。交換留学生の曾甜です。

 熊本大学に来て、たくさんの「初めて」を経験しました。初めてのゼミ参加、初めての研究発表、初めての学会参加、初めての沖縄調査などです。

 ゼミには2つの読書ゼミと1つの個人研究発表のゼミがありました。読書ゼミでは、2冊の本を読みました。1冊はユクスキュルの『生物から見た世界』で、もう1冊はインゴルドの『メイキング』です。

  日本に来る前には、人類学はもっぱら人間に関する学問だと思っていました。しかし、ユクスキュルの『生物から見た世界』を読み進める中で、人間はこの世界で特別な存在ではなく、他の生物と同じく環世界に生きるものであるということを理解しました。

 そしてインゴルドの『メイキング』という本は私にとって難しかったです。でも少し噛み砕いてみれば、またその魅力を感じることができます。本全体の内容は緻密で壮大で、物質から建築まで、設計から幾何学まで、細線から未来までなどを描いています。人類学者はどうであるべきかをより深く考えることができました。『メイキング』の一節を引くと、「真の学者はみな、ロバなのである。頑固で、むら気があり、粘り強く、好奇心旺盛で、気が短い。同時に自分の世界に魅入られ、感嘆している」。自分が本当の学者になるにはまだ長い道のりがありますが、未来がどうであれ自分の目標に向かって前進し、いつか満足のいく答えを書くことができると思います。

 大学での学習以外では、6月3日にはシンジルト先生と一緒に東京に出張し、明治大学で開かれた日本文化人類学会第五六回研究大会に参加しました。大会の発表者には若い博士だけでなく、白髪交じりの老教授もいます。私は静かに彼らの発表を聞いて、簡潔で明瞭な研究の構想、耳目を一新した研究内容に圧倒され、、私は思わず自分の研究内容にどんな価値があるかを考えました。これまでは、自分は研究が好きだと思って、自分の好みで研究したい内容を選びました。

 読書ゼミと違って個人研究発表のゼミでは、多くの先輩や後輩の研究内容を聞いて、その内容の多様性にいつも驚いていました。いざ自分の発表になり、とても緊張しましたが、なんとかこなすことができました。そこで、ゼミ終了少し前に、私の発表に対して、シンジルト先生から、皆さんに対して自分の研究の意義をアピールしてほしいと求められました。どのように答えればよいか、その時には、分からなかったのですが、今となって、自分から離れて、客観的に自分の研究を見る能力をもつことが大事だなと思うようになっています。

 私の研究テーマは、沖縄の風水です。そのため、日本にいる間、ぜひ沖縄に行きたいというのが、私の夢でした。8月9日午後3時に熊本空港を出発し、一時間後には青い海と青い空が目に入り、沖縄が近づいてきたことを知り、ドキドキしながら沖縄にたどり着き、五泊六日の沖縄の旅をスタートさせました。沖縄の調査で歩くことが多く、私の沖縄の滞在は一週間足らずでしたが、最後の二日間は疲労困憊でした。今回の調査、いくつか成果は得られましたが、まだまだ足りないものも感じました。今後また沖縄に行く機会があればぜひもっと本格的な調査をしたいと思っています。

 沖縄から帰ってきてから、人類学という学問について、人類学者になるという条件についていろいろと悩みながら考えました。人類学の営み、あるいは、人類学者になるということは、多くの本を読み長く理論的な訓練を受けるだけではなく、強靭な体力と見知らぬ地に行く勇気が必要だということを理屈だけではなく経験的にも理解しました。熊本大学の交換留学生活は終わりましたが、私に残された素晴らしい思い出と汲み取った知識が心に種を植え、いつか美しい花を咲かせるものだと、確信しています。

沖縄のシーサー

 

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