センターについて

概要

学術的・社会的背景

(1)学術的背景

現在、日本近世に関する歴史学研究は、幕藩制国家のアジア的専制性を重視する研究段階を脱却し、16世紀を起点に各藩領等の地域社会において展開した自治的行政の具体的分析と総合化によって、日本社会の基礎構造を明らかにすることが強く求められるようになっている。この点で、質量ともに最高の大名家・藩政文書群たる永青文庫史資料の寄託を受けている熊本大学に対する国内外からの学術的期待は極めて高い。

また、世界的研究・教育拠点としての発展を目指す本学にとって、人文社会科学分野における学際的新研究領域の開拓のための学術的財産として、永青文庫史資料を充分に活用するためのシステムの構築が求められている。

本学部は、こうした学術的要請に組織的に対応する必要がある。

(2)社会的背景

熊本城本丸御殿の復元に伴う入場者の増加、熊本県立美術館の永青文庫常設展示の好評といった事実に明らかなように、熊本築城400年を契機とした熊本地域の歴史文化への社会的関心は近年になく高まっている。こうした社会的状況を受けて、熊本藩政史料や歴代熊本藩主旧蔵の書籍群等のほぼ全てを管理している熊本大学には、熊本県の文化行政担当部局や財団法人永青文庫をはじめとする諸団体から地域文化創造事業(永青文庫史資料群の国指定実現をも含む)への参画が強く要請されており、これに組織的に対応する必要がある。

必要性・緊急性

上記の学術的・社会的要請は、いずれも熊本大学に早急な組織的対応、すなわち永青文庫史資料を専門的観点から分析・活用する研究組織の早期の立ち上げを求めるものである。

また、永青文庫史資料は、政治、経済、行政、法制、教育、社会運動、思想、医学薬学、建築、芸術文化に至るまでの、人間活動のほぼ全域に関わる数万点の歴史資料等からなるものであり、人文社会科学系における研究拠点の整備の核として、本史資料群を分析し活用に供するセンターの設置が必要かつ緊急性を帯びていることは明らかである。

センターの概要・特色

以上のことを踏まえ、本学部の目標達成に向けて、専任教員及び兼務教員を中心に、非常勤研究員、研究支援者等を配置した組織として「文学部附属永青文庫研究センター」を新設するものである。

(1) センターの業務

本センターは、次に掲げる業務を行う。

  1. 永青文庫史資料の総合的研究に関すること。
  2. 永青文庫史資料による地域文化の研究に関すること。
  3. 永青文庫史資料による文化創造事業の実施に関すること。
  4. 永青文庫史資料の研究に関する文化行政機関等との連携及び支援に関すること。
  5. その他センターの目的を達成するために必要な事項

(2) 教育研究活動の特色

○研究事業

熊本大学拠点形成研究B(「永青文庫」資料等の世界的資源化に基づく日本型社会研究)等の成果に基づき、かつ当該史資料群の研究上の基礎的条件を整備することを目的とし、当面、次のような研究事業計画を策定して計画的かつ集中的に研究推進を行う。また、研究成果を文化事業等を通じて定期的に発表する。

  1. 永青文庫史資料群の国指定を視野に入れた基礎目録の作成
  2. 室町・戦国時代以来の「細川家文書」の撮影と出版
    ※室町幕府将軍、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、大名の文学・芸術等に直接関わる史資料群
  3. 藩政公式記録等の翻刻出版
  4. 永青文庫史資料に基づく拠点的研究の組織に関する諸事業

○文化事業

  1. 研究事業の成果を反映した永青文庫史資料等に関する市民向けフォーラム、公開講座の実施(熊本県教育庁文化課等と連携)
  2. 永青文庫史資料等の公開展示(附属図書館、熊本県立美術館等との連携)
  3. その他永青文庫史資料による地域文化創造に資する事業

(3) 他学部・他機関との連携等

当面、永青文庫史資料を管理する附属図書館、歴史資料の展示施設・組織としての五高記念館、また社会文化科学研究科との密接な連携のもとで事業を推進する。

なお、ことに文化事業については、熊本県教育庁文化課、熊本県立美術館、熊本県文化協会等の機関と連携して展開する。

(4)研究実績

本センターが計画する研究事業、文化事業の前提となる本学部スタッフの実績には、以下のものがある。

○主な研究実績

  1. 吉村豊雄・三澤純・稲葉継陽編『熊本藩の地域社会と行政―近代社会形成の起点―』(思文閣出版、2009年3月)の出版
  2. 永青文庫「町在」詳細目録・データベースの完成(2009年3月)
  3. 熊本大学拠点形成研究プロジェクト『東アジアの文化構造と日本的展開』(北九州中国書店、2008年)の出版
  4. 稲葉継陽『日本近世社会形成史論―戦国時代論の射程―』(校倉書房、2009年3月)の出版

○主な文化事業実績

  1. 「阿蘇家文書修復完成記念 阿蘇の文化遺産展」(2006年)を熊本大学と熊本県立美術館との共催で開催し、本学部スタッフが中心となって熊本大学所蔵「阿蘇家文書」を全巻出展し、県立美術館学芸員等と共同で作成した図録や講演とともに好評を得た。
  2. 熊本県立美術館「熊本城築城400年記念 激動の三代展」(2007年)の展示企画・図録作成・講演に本学部スタッフが参画し、永青文庫史資料から出展品を選定して展示キャプションと図録原稿を執筆するなど、県立美術館学芸員との共同作業を通じて展覧会の成功に貢献した。