社会学研究室の成り立ち

 熊本大学文学部社会学研究室の起源は、そもそも文学部が法文学部文科として組織されていた時代にさかのぼります。熊本大学における社会学の教育研究は、当時の文科哲学科に社会学専任教員が着任して事実上始まりました。1962年のことです。最初の専攻学生は4名でしたが、その後増加、倫理学講座Bコースとして独立した3年目には20名を越える志望者があったため、専攻生を制限せざるをえなくなりました。社会学研究室は現在も希望者が多いのですが、それはすでに当時から始まっていたわけです。また当時は、現在では五高記念館となっている旧制第五高等学校の校舎を使って講義を行っていました。夏目漱石らも教えたあの五高の赤レンガ校舎です。

 その後、1977年に社会学講座が実験講座として正式に設置が認められました。ここが社会学研究室の正式な始まりとなります。さらに1979年、文学部発足(法文学部が文学部と法学部にそれぞれ組織されました)による地域科学科の創設にともなって、哲学科から地域科学科へと所属が変わりました。1982年には地域社会学講座が設置され、社会学の教育研究は社会学講座と地域社会学講座の2講座体制となりました。その後、大講座化という世間の流れによって、社会学講座と地域社会学講座が合併して社会学講座となり、教養部教員の配置換えによって(教養部にも社会学教員がおりました)、社会学講座はそれまでで最大の6人体制となりました。また、相変わらず学生の希望者も多く、学部生・院生と教員併せて100名ほどの大所帯でした。

 さらに2005年には、文学部改組にともない、人間科学科と地域科学科が合併、総合人間学科が誕生しました。総合の名にふさわしい、多くの研究領域をもつ学科となったわけです。そのときに社会学はもともとあった2つの流れである、社会学研究室と地域社会学研究室に再度分かれました。この2つの研究室は建物の都合上、社会学第1研究室ならびに社会学第2研究室に同居していましたが、2008年度より開始された文法棟改築にともない、2009年度からはそれぞれ独立の研究室を持っています。また教育研究領域として、社会人間学コースの社会学履修モデルを担当する社会学研究室は、現代社会一般の諸問題(医療・福祉・格差・グリーバリゼーションなど)を中心に教育研究をおこない、地域科学コースの地域社会学履修モデルを担当する地域社会学研究室は、現代都市農山村の諸問題(食と農の諸問題、少子高齢化、過疎化、地域環境問題など)を中心に教育研究をおこなっています。

 いずれの研究室も調査を基礎に教育研究を進めるという、これまでの熊大社会学の伝統を引き継いでおり、それもあって社会学研究室・地域社会学研究室の双方のスタッフが、大学院社会文化科学研究科では前期課程において現代社会人間学専攻フィールドリサーチ研究コース、後期課程においては人間・社会科学専攻フィールドリサーチ領域を担当しています。