現在のスタッフとその専門

松浦雄介教授

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専門:文化社会学・国際社会学

  • 「記憶と文化遺産のあいだ―三池炭鉱の産業遺産化をめぐって」《西日本社会学会年報》No.11、2013年
  • 「社会運動から都市暴動へ―フランス郊外における集合行為の変容について」『日仏社会学年報』第19号、2010年
  • 『記憶の不確定性―社会学的探究』東信堂、2005年 など

中川輝彦教授

専門:医療社会学

  • 「実践家としての心理士」『ソシオロジ』第52巻3号、2008年
  • 「心理士の自己コントロール」『保健医療社会学論集』第15巻2号、2005年 など

多田光宏准教授

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専門:社会問題論・現代社会論・社会理論

  • 「社会の文化―世界社会の時代における文化の概念のために」『社会学評論』第62号1巻、2011年
  • 「外国人に対する態度類型とその性質―『不法』外国人と両義派・排外派・受入派」『ポピュリズムとローカリズムの研究―東京の同化・統合のリソース』2006年 など

歴代スタッフ

 社会学研究室の歴代スタッフは、研究室が法文学部時代からあるせいもあって、とてもバラエティに富んでいます。またいずれの教員もそれぞれの領域では広く知られている業績をもつ社会学者たちです。

 法文学部時代、最初に社会学担当として着任したのが間場寿一氏です。間場氏は政治社会学を専門とし、その後には『地域政治の社会学』(世界思想社)『講座社会学9政治』(東京大学出版会)などをまとめました。間場氏に代わって着任したのは越井郁朗氏です。越井氏はG・H・ミードの研究で知られており、「コミュニケーションの基礎過程」や「G・H・ミードにおける社会的相互作用と社会的自我」などの論文をまとめました。

 越井氏に代わって着任したのが仲村祥一氏です。仲村氏は『現代娯楽の構造』(文和書房)『社会学を学ぶ人のために』(世界思想社)などの社会学的研究に加え、それまで社会学が周辺的にしか取り扱ってこなかった性や病気の現代的問題状況についても社会学的に探究し、その業績が広く知られています。『日常経験の社会学』(世界思想社)『社会病理学を学ぶ人のために』(世界思想社)など多くの著書があります。社会学講座発足の翌年に仲村氏に代わって着任した高津等氏は高齢者の問題を専門とし、『社会集団論』(黎明書房)『社会福祉調査』(岩崎学術出版)『共同連帯論』(葦書房)などの著者があります。

 高津氏とともに社会学講座発足時から教育研究を担当してきたのが丸山定巳氏です。丸山氏は都市社会学から出発し、地域社会の構造と変動、地域問題と住民の対応などに重点を置いて研究を行うとともに、水俣病事件の研究を進めました。丸山氏の水俣病事件研究は広く知られており、1996年には水俣病研究会編の『水俣病事件資料集』(葦書房)を刊行、同資料集は同年の毎日出版文化賞を受賞しました。また同年には国際的な産業公害研究にも参加し The Long Road to Recovery: Community responses to industrial disaster (United Nation University Press) を執筆しました(共著)。

 丸山氏が地域社会学講座の担当になったために教養部から移籍してきたのが田口宏昭教授(当時)です。田口教授は医療社会学と死の文化論の領域での研究を進めてきました。そして「肺癌病棟におけるコミュニケーション」「医療における不確定性を権力」などの論文や『医療と病気の社会学』(世界思想社)をまとめました。

 高津教授に代わって着任したのは、田間泰子氏です。田間氏は出産や中絶をめぐって女性の身体に対して加えられる社会的文化的刻印の問題を取りあげ、その後には『母性愛という制度』(勁草書房)『「近代家族」とボディ・ポリティックス』(世界思想社)などを著しています。地域社会学講座に着任した蘭信三氏は当初村落共同体の研究に焦点を置いていましたが、やがて満州移民や在韓日本人妻に関心を移し、とりわけ前者については調査をもとに『「満州移民」の歴史社会学』(行路社)を著しました。本書は熊日出版文化賞を受賞しています。蘭氏には他にも『「中国帰国者」の生活世界』(行路社)などの編著があります。

 教養部から移籍して来られたのが田中雄次氏と城達也氏です。田中氏はドイツ文学と映画研究で知られており、いくつもの独和辞書の編纂などとともに、時代や家族の問題を日本やヨーロッパ・アメリカ映画を素材に研究してきました。その成果は「表現主義映画≪カリガリ博士≫とその時代」や「小津映画のなかの≪家族≫」などの論文、『映画この百年─地方からの視点』(熊本出版文化会館)『ワイマール映画研究─ドイツ国民映画の展開と変容』(熊本出版文化会館)などの著書にまとめられています。また熊本大学にゆかりのあるラフカディオ・ハーンの研究も行い、文学部の同僚とともに『現代に生きるラフカディオ・ハーン』(熊本出版文化会館)を刊行しました。城氏は社会思想史を専門とし、とりわけ第二次大戦後のドイツの社会理論と知識人の精神構造などについて研究を進めてきました。その成果は『自由と意味─戦後ドイツにおける社会秩序観の変容』(世界思想社)にまとめられています。またその後、理想的人格の研究なども進め、『アイデンティティと共同性の再構築』(世界思想社)を刊行しました。

 この間、丸山定巳教授(当時)・田中雄次教授(当時)・田口宏昭教授は、水俣病と水俣病事件が現代社会に示唆するものについて共同で研究を進めてきました。『水俣の経験と記憶─問いかける水俣病』(熊本出版文化会館)と『水俣からの想像力─問いつづける水俣病』(熊本出版文化会館)がその成果です。これらの成果は熊大社会学研究室ならではの業績といえるでしょう。最初に出版した『水俣の経験と記憶』は日本図書館協会選定図書にも選ばれました。

 蘭氏に代わって着任したのが徳野貞雄教授(現・地域社会学スタッフ)です。徳野教授は過疎農山村の生活構造や地域社会構造の変化に焦点を当てた過疎農山村論や地域振興論を専門としてきました。また、農業・食糧問題に対する強い関心をもとに、従来の「産業としての農業」という視点に異議を唱えて「生活農業論」を展開し、多くのマスメディアの注目を集めています。著書としては『ムラの解体新書』(全国林業普及協会)『現代農山村の社会分析』(学文社)『農村(ムラ)の幸せ、都会(マチ)の幸せ─家族・食・暮らし』(日本放送出版協会)などがあります。

 田間氏に代わって着任したのが佐藤哲彦教授です。佐藤教授は犯罪社会学と医療社会学を専門とし、わが国ではじめて薬物使用者と薬物政策の社会学的研究を行っていることで知られています。またディスコース分析という方法論を導入し、それをもとに『覚醒剤の社会史─ドラッグ・ディスコース・統治技術』(東信堂)をまとめました。本書は日本社会病理学会学術奨励賞ならびに第7回日本犯罪社会学会奨励賞受賞を受賞しました。

 城氏に代わって着任したのが松浦雄介教授(現・社会学スタッフ)です。松浦教授は文化社会学・国際社会学を専門とし、当初は文学作品を題材として現代における記憶の諸相を研究した『記憶の不確定性─社会学的探求』(東信堂)を刊行しました。その後、産業遺産を対象に引き続き記憶の社会学的研究を展開するとともに、フランスを主なフィールドとした移民研究にも取り組んでいます。

 田口氏に代わって着任したのが中川輝彦教授(現・社会学スタッフ)です。中川准教授は医療社会学を専門とし、特に健康と病をめぐる知識の生産・応用の社会的組織化を研究しています。現在は、そうした観点から「専門職(profession)」と呼ばれる職業の調査研究を進めています。

 佐藤氏に代わって着任したのは、多田光宏准教授(現・社会学スタッフ)です。多田准教授は社会問題論と社会理論を専門とし、社会秩序のシステム分析やナショナリズムの問題を中心に研究をおこなってきました。現在は、各国の社会理論の比較研究、および日本の近代化についての研究に着手しています。