しゃべり場

偏見を食らう スターゲイジーパイ編

 皆さん、初めまして!
 文化人類学ゼミ三年、日髙翔太です。

 今回初めてこのコーナーを担当させていただきます!
 先輩方の記事を色々と拝見させていただきました。内容は自由と言われているものの、何やら海外に行った経験などを書いておられる方が多い印象です。

 しかし、私には海外旅行の経験など一度もございません!!!

 「何とかできないものか……料理でも、作ろう!!!」

 海外の料理を勝手に作って勝手に食べ、勝手に理解した気分になろう!
 そういう誤魔化しを含んだものが本企画になります!

 初回(そもそも続くかも定かではないですが……)となる今回は、イギリス南西部コーンウォールに伝わる伝統料理、スターゲイジーパイ!

 パイから魚の頭がまるごと生えた強烈なビジュアルで有名なこの料理は何かと「まずいイギリス料理」の一例として挙げられがちです。
 一方で私は思いました。

 「パイから魚の頭が生えていて、それが一体何だっていうんだ?」

 実際にどのような料理であるのか、実際に製作していきます!
 と、いうわけで……

 実際に完成させたものが、こちらになります。

写真1:焼き上がり。

 本来はサバやニシン、ピルチャードを使用するらしいのですが、用意できた生地が小さかったので、今回は小イワシで代用させていただきました!
 なんでもスターゲイジーパイが頭を出した見た目なのは「大漁」を表す意味合いがあるそうで、つまり頭が無ければスターゲイジーパイではなくなってしまいます!

写真2:加熱前。生の魚の頭が中央に鎮座するインパクトのある絵面。

 内容物ですが、捌かれていない魚一匹がまるごと入っているわけではなく、しっかり下処理を行い各種具材と共に煮込んだタネが敷き詰められています。
 具体的には玉ねぎ、エリンギ、ベーコン、茹で卵を細かく刻み、イワシと共にサワークリーム、コンソメスープで水気が飛ぶまでじっくりと煮込みました。その後味を調えるためにパセリと黒コショウ、塩を使用しています。
 また、頭はパイ生地にタネを乗せた後で最後にトッピングするわけですが、この時下地がそのままだと崩れてしまうので、土台としてマッシュポテトを使用しました。
 と、ここまで行けば大体わかると思うのですが、この料理――

 「まずくなる要素」なくないですか???

写真3:生地で包む前のタネ。包み切れなかった残りは後日パンに挟んで頂きました。

 一応、タネから魚の小骨がところどころ飛び出ている絵面はあまり見栄えのいいものとは言えなかったのですが、それは私が小イワシを用いて腹骨の処理を省略したからです。本来はニシンなどを使用しますから、腹骨までしっかりと処理します。

 こんなに手の込んだ料理が巷でゲテモノ判定を下されているという事実。尾頭付きをありがたがる国の人間が一体何を言おうというのでしょうか。
 ゆで卵を作り、マッシュポテトを作り、魚を捌き、具材と煮て、最後に生地に包んでオーブンで焼く。
 やってみて理解しましたがこの料理、凄まじく手間がかかっています。今回の調理では17時に開始して終了したのが21時でした。まさに祭礼の為の料理といった感じがしますね!

 四つも作ってしまい一人では食べきれないので、丁度暇をしていた友人の宅へ包んだパイを持って押し掛けることに。

写真4:酒とパイ。友人等からも好評で余った一つは争奪戦に発展。

 イギリスと言えば黒ビールと合わせ、友人二人と共に乾杯。
 魚や肉の脂がじんわりと染み込んだパイ生地は外サクサク中しっとりでうまい!濃い目の味付けで作ったので、苦み強めの黒ビールとの相性も抜群です!
 こうもうまいと見た目のインパクトもむしろ丁度いいアクセントに思えてきますね。

 スターゲイジーパイは、コーンウォールのマウゼル村を起源とし、嵐の吹き荒れる冬に一人漁に出て大漁の魚を獲り村を飢えから救ったトム・バーコックを讃えるために作り始めたのが起こりであるそうです。
 インパクトのある見た目は全てのパイが中に魚が入っていることを証明するためであるそうで、空を見上げる魚の頭から「スターゲイジー」の名がつけられたとのこと。

 ふざけているようにも調理が雑であるようにも見えてしまうそのデザインには、トム・バーコック氏に対する村の人々の感謝が籠っているということでした。

 今回製作したのは7月でしたが、その由来から現地では冬に作る料理です。肌寒い時期に味わうと、また違った美味しさを感じられるかもしれませんね。結構手間のかかる料理ですが、皆さんもぜひお試しください!

 それでは、また会う日まで。