しゃべり場
「新しい」モンゴル医療
初めまして。 修士課程1年のジャボウエン(賈博源)です。
伝統医学というと、日本では薬草を用いた療法のイメージが強いかもしれません。とりわけ広く親しまれているのが漢方薬です。一方、遊牧文化を背景にもつモンゴル医学では、肉のスープが薬の効果を高める「薬引」として用いられています。このように、環境の違いは医療のあり方にも反映されているのです。
だが、近年においては、「蒙医心身インタラクティブ療法」というアプローチがモンゴル医学の現場に導入されています。そこで、患者たち自身の言葉がいわば「薬」として処方されています(写真1)。
写真1 内モンゴル国際モンゴル医病院 モンゴル医心身医学科
主任 ナゴンビリグ医師
(http://nm.people.com.cn/big5/n2/2021/0819/c196689-34874468.html)
私が調査している施設では、普通の病院のように、患者たちが静かに診察を受けることはありません。ある療養病棟で、たくさんの患者たちが一つの場に集まり、みんなの前で自分の病気や人生の苦しみ、トラウマを語るのです(写真2)。
現場にいる一部の人たちが、誰かの語りに共鳴して静かに涙を流したり、あくびをしたり、汗をかいたりするといった身体的な反応を示すこともあります。これを現場では「好転反応」と呼んでいます。さらに注目すべきは、この語りの力が病院の中だけで終わらない点です。講義や語りなどを含む治療の様子は音声として記録され、特に病気のない人たちの間においても、夜寝る前にスマホでその音声を聞きながら眠りにつく人たちがいるそうです。
たぶん彼らにとっては、現場の声そのものが、まるで音楽療法のように、日々の「ケア」として機能しているのかもしれません。言葉やあくびなどの音声が空間を越え、人々の生活の中で薬になっているのではないかと思われます。この「新しい」モンゴル医療のあり方に、私は強く惹かれています。
「病気が治るというのは、一体どういうことなんだろうか?」
そんな素朴な疑問から、近代的な医療とは違うこのパワフルな空間と、人々の治癒のプロセスを追いかけてみたいと思うようになりました。これからの修士課程では、もっと深くこの現場に入り込んでいくつもりです。フィールドで見つけた面白いエピソードや、よく分からない謎があれば、また皆さんと共有したいと思います。
写真2 内モンゴル自治区オルドス市オトグ旗第二人民病院の治療を行う施設
(https://m.thepaper.cn/baijiahao_23281404)
