教員

現地調査

中国青海省黄南チベット族自治州河南モンゴル族自治県

1990年代に比べて河南蒙旗ではほとんど羊肉が食べられなくなりました。
それは、ヤクの数が増え、羊が減ってきたからだと言われています。羊の数が減ったのは、狼が増えたからだと言います。
そして、狼の数が増えたのは生物多様性の保全のためだと理解されています。

そこで、牧畜民たちは、狼に強い種として、ヤクという家畜の飼育、さらに最近では、野生ヤク(アムドチベット語で、「ジョン」)の種を導入し、ヤクの群れにおける野生種の割合を高めていくべく、知恵を絞り、財力を投入しています。

結果、人間が狼を増やし、狼は羊を減らし、ヤクを増やし、その野生化を促進させている、というような連鎖が生まれています。
もしかしたら、この「人間―狼―家畜の野生化」の連鎖は、人間(文化)のため急増した狼(自然)とはなにか?家畜(文化)とは何か?野生(自然)とは何か?文化と自然を二分しその安定的な分類基準をもつ人間などは本当にいるのか?といったことを考えさせる契機となるのかもしれません。