漱石を読むグールド(1)

グールド草枕


久しぶりにグールドを聞いてみました

グレン・グールドが『草枕』を愛読していたことは有名です。グールドは『草枕』に魅了されていたようで、ラジオ番組のために『草枕』から一章を朗読したりもしています。馬子になりきって台詞を読み上げるグールドの演技は一聴の価値ありです。しかし、グールドは1章の全てを朗読しているわけではなく、あちらこちらとばして読んでいるのです。興味深いのは、グールドが削除している個所です。朗読には小説のとおり那古井や芭蕉が登場します。しかし、シェリーの雲雀の詩、ダビンチ、ファウスト、ハムレットにふれている個所は全く登場しないのです。たしかに、1章では西洋の詩は人事を扱っていると批判しています。同時に、西洋人にかぶれている読者に対しても批判的な眼差しを向けているわけですから、グールドも漱石にならって可能な限り西洋的な要素を排除しようとしたのでしょうか(つづく)。

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