『それから』を観る

久しぶりに『それから』(1985)を観ました。
初めて見たのは大学生のとき。おそらくVHSを借りてきたのだと思います。2019年にもなるとインターネットの有料チャンネルで鑑賞することができました。今は亡き監督森田芳光、松田優作(代助)、笠智衆(代助の父)。時代の流れを感じます。さて、一度しか観たことがなかったのに、幾つかの場面は鮮明に覚えていました。ご覧になった方ならわかってもらえると思います。
映画の冒頭で三千代(藤谷三和子)の写真がうっすらと写しださされ、そしてタイトルが流れる美しい場面。笠智衆と松田優作の不自然な距離(膝は触れ合っているにちがいない)。「ベースボールは上達したかい?」という代助の台詞(やはり野球ではないんだ)。三千代が鈴蘭をいれている鉢の水を飲む場面(なぜここまで細かくカット割りしたのだろう)。さらにはスパイク・リーお得意の登場人物が浮遊するかのようなカットまである(しかしこっちのほうが数倍良い)。前観たときと同じことを考えながら観ている自分にも気づきました。
しかし映画の最後の感想は昔のとは全く違ったのです。観ていない人の為に詳しくは書きませんが、最後は小説とは異なります。この最後に昔は納得しなかったのです。しかしこの映画はこうでしか終われないでしょう。素敵なエンディングです。
まだ映画『それから』を鑑賞されていない人は是非ご覧ください(そういえば笠智衆は玉名の人だったな)。

  • 熊本大学文学部バナー画像
  • 永青文庫研究センターバナー画像