氏 名 |
三瓶 弘喜SAMPEI Hiroki
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職 名 | 准教授 |
所 属 | 歴史学科 世界システム史学コース |
連絡先 |
TEL | FAX Email sampei*gpo.kumamoto-u.ac.jp(*を@に変更して送信してください) |
サイト等 | https://researchmap.jp/read0047408/ |
専門分野・研究分野
アメリカ史
研究内容
① 自己紹介と現在の研究テーマ―「面白い!」が導いてくれる豊かな世界―
「いつも楽しそうに研究をしているところが、三瓶君の良いところだ」。これは、大学院時代の指導教員からいただいた、そして今も私が大切にしている言葉です。振り返ると、私の研究を突き動かしてきたのは、何よりも「面白い!」という好奇心でした。
たとえば、19世紀前半のニューヨークを描いた絵画を整理している時に、大通りを闊歩する豚の絵に遭遇したことがあります。なぜ路上に豚がいるんだろう?気づいてみると私は、この豚のミステリーにどっぷりと浸かっていました。今では想像もつきませんが、当時のニューヨークの路上には、庶民が放し飼いにしていた2万頭(!)もの豚がいたのです。そしてこの豚たちは、ゴミ収集車がない時代において、家々から路上に放り出された生ゴミをパクパク食べてくれる有能な道路清掃人であり(エサ代タダで勝手に成長!)、そしてまた、経済的困窮時においては、家族を飢えから守る最後の拠り所となったのでした(売って良し、食べて良し!)。すなわち路上の豚の正体とは、庶民が生み出したエコロジカルな道路清掃・福祉システムであったのです!これまで私は、このような庶民の生活世界とその文化に強い関心を抱いてきました。
現在は、奴隷制下に生きるアフリカ系の人々の家族史を描きたいと考えています。制約された環境の下で、奴隷たちはどのように家族を形成し、そして守り、時にしたたかに、そして力強く、自らの「生」(ライフ)を創り出そうとしたのか、その主体的な「生」の軌跡を描きたいと考えています。
みなさんも西洋史研究室で、「面白い!」という感性が導いてくれる、色鮮やかで豊かな世界を一緒に探求してみませんか。
② 高校生ならびに歴史を学ぶ大学生へのメッセージ―歴史の勉強は誰のためにするもの?―
歴史学科に入って来る多くの学生は、高校で歴史学科を受験すると決めた時から、両親や友達や先生から、何度も繰り返し次のような質問を浴びせかけられたのではないかと思います。「何で歴史学科になんて行くの?」。そしてみなさんは、自己防衛のために、「歴史は、こんなに役立つんだ」ということを後知恵的に考える必要性に迫られ、そして周囲だけでなく自分を納得させるためにも、常にこの「歴史の有用性」という強迫観念に向き合ってきた、あるいは、ずっと縛られてきたのではないかと思います。他の先生方とは意見が異なるかもしれませんが、私自身は、一度この強迫観念から自由になることが大事なのではと思っています。「研究は面白いだけではダメだ」ということがよく言われますが、こうした発言には、「学生はみな、研究を当然面白いと思ってやっているはずだ」という教員の思い込みがあるように思われます。まず何よりも、「研究って面白い!歴史って面白い!」、そう思えることが学問の出発点として物凄く大事だと、私自身は確信しています。
卒業論文を指導して思うのですが(そして修士論文や博士論文では、より一層強く感じることなのですが)、自ら「面白い!」と思って、何の打算もなく無我夢中で研究に打ち込む学生には、最後にいつも「知の女神」がニッコリほほ笑んでくれるように思われます。こうした学生は、こちらが放っておいても、勝手にどんどん勉強を推し進め、自分の視野や世界を広げていく、だから伸びしろも大きく、その研究も、たとえ粗削りではあっても、可能性に満ちた力強いものに仕上がっていきます。
少し議論が飛躍しますが、このことは、「大学での歴史の勉強は、一体、誰のためにするものなのか?」という根源的な問いを提起しているように思われます。アメリカでは現在、「パブリック・ヒストリー」という歴史学の新しい考え方が、重要な潮流の一つになっています。これまでの「アカデミック・ヒストリー」という考え方ー歴史学は専門の研究者相手にすべきものであり、学会に貢献することが大事という考え方ーに対し、パブリック・ヒストリーは、こうした学者による歴史の占有を批判し、「歴史学のデモクラシー化」をはかるものです。それは、歴史を学ぶ者一人一人(そこには学生も市井の人々も含まれます)の主体的な歴史の探求・取り組みを、一つの意味のある「歴史実践」Doing Historyとして捉える立場であると言えるでしょう。大学での4年間の学びを最後に、広く社会へ出ていく多くの学生にとって、「歴史の勉強は、一体、誰のためにするものなのでしょうか?」。少なくとも私は、「社会的有用性」や「学会への貢献」といった強迫観念の虜になることなく、まずは何よりも、「自分のために」歴史を勉強して欲しいと考えています。
③ プロフィール(趣味など)―日本を飛び出して、世界の広さを感じよう!―
私の専門はアメリカ史なのですが、20代半ばから、世界を旅することにハマってしまいました。なかでも、南米のボリビアやカリブ海のプエルトリコ、返還前の香港、EU加盟以前のポーランドを訪れたときの思い出は、強く心に刻まれています。世界を実際に体験することの興奮を学生たちにも味わってほしいと思い、これまで西洋史研究室の多くの学生たちを連れて、ヨーロッパやアメリカを10回以上旅してきました。スペイン、フランス、イタリア、オーストリア、チェコ、オランダ、ベルギー、そしてUSA。興奮する学生たちのキラキラした笑顔を見て、「本当に連れてきて良かった!」と思いながら、これまで頑張ってきたように思います。もしかしたら、私自身が一番楽しんできたのかもしれません(笑)。使い古しの言葉ではありますが、ぜひ日本を飛び出して、世界の広さを感じ、様々な風景や人々の生活、そして価値観に触れてほしいと思います!きっと、日本社会の問題点だけでなく、良いところも見えてくるはずです!そして、みなさんを取り巻く強迫観念からも、きっと自由になれると思いますよ!
④ 主指導教員として携わった学部生・大学院生の研究テーマ
2023年度)★博士論文「18世紀ニューイングランド漁業が構築した環大西洋交易圏の歴史的意義」/★修士論文「美容文化で働くこと―20世紀前半アメリカにおけるビジネスウーマン―」、「1391年反ユダヤ暴動をめぐるアラゴン王権とバレンシア都市当局の政治的利害」/★卒業論文「ミシュランが作った『フランス』―ベルエポック期を中心として―」、「19世紀パリにおける犬の飼育とブルジョワ文化」、「クロアチア独立国におけるジェノサイドの視覚化とプロパガンダ化」、「近世ヴェネツィアにおける祝祭文化と都市」、「19・20世紀転換期のグローバル・フロンティア―英米の膨張主義とボーア人移民―」、「カイオワ・インディアンの宗教儀礼とキリスト教宣教師による文明化」、「20世紀アメリカ広告にみる『戦争と女らしさ』」
上述の「パブリック・ヒストリー」に関して書いたエッセイです。関心のある方は、下の薄ピンクのタイトルをクリックしてください!
「パブリック・ヒストリーについて」(『西洋史研究室年報 第20号』、2019年3月所収)
主要な業績等
【著書】 |
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【論文】 |
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社会的貢献・活動等
主要な所属学会
九州西洋史学会、西洋史研究会、社会経済史学会、アメリカ経済史学会