文学部通信18号
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2019年3月1日発行研究推進・地域連携委員会 委員長 伊藤 正彦  2018年10月20日(土)13:30~16:00に文学部1階A-3教室で第15回21世紀文学部フォーラムを開催しました。今回は「第二の発掘:先史・古代のムシが語るもの―新しい考古学・圧痕家屋害虫学の世界―」と題して、近年、新しい研究手法によって斬新な縄文時代理解を生み出している小畑弘己教授にお話いただきました。司会は、歴史学科の小林晃准教授にお願いしました。 小畑教授は、「圧痕家屋害虫学」という新たな歴史資料学の方法と理論をわかりやすく紹介し、土器圧痕として残るムシたちを通じて見えてくる先史・古代の人々の生業と心性について話されました。小畑教授の成果は、『タネをまく縄文人―最新科学が覆す農耕の起源』(吉川弘文館、2016年)でわかりやすく読むこともできます。関心のある方にはご一読をお薦めします。 報告してくださった小畑教授と司会を担当してくださった小林准教授に、この場を借りて御礼申し上げます。 21世紀文学部フォーラムは文学部所属教員の研究成果を広く市民の方々に知っていただくために企画されたものですが、来年度からは人文社会科学研究部(教員組織)の運営が本格的に始まるため、従来とは異なる形での市民向けの企画を検討しなければならないと考えています。 漱石・八雲教育研究センター兼務教員 坂元 昌樹  漱石・八雲教育研究センターは、2017年12月に水元豊文文学部長をセンター長に新たな文学部附属センターとして設置されました。本センターは、熊本大学の前身である第五高等学校ゆかりの夏目漱石と小泉八雲について、その熊本時代の資料等を含めた総合的な共同研究を進めるとともに、それらの研究成果を出版物刊行や市民講座等の開催によって定期的に発信することで地域の文化振興に貢献し、人文社会科学系分野の研究と文化振興の発展に寄与する人材の育成に資することを目的としています。 本センターの第1回公開フォーラムを、2018年3月24日(土)14:00-17:00に本学くすの木会館でテーマ「漱石とハーン:過去から現在、そして未来へ」の下で開催しました。第1部では本センター兼務教員による報告とパネルディスカッション(西槇偉教授・濱田明教授・永尾悟准教授・平野順也准教授・松岡浩史准教授・坂元昌樹)を実施し、第2部では西川盛雄本学名誉教授による特別講演が行われました。当日の司会を福澤清本学名誉教授に務めていただき、活発な質疑応答が行われるなど記念すべき第1回フォーラムとなりました。また、2018年8月12日から8月15日まで中国・呼和浩特の内蒙古大学で開催された国際学術検討会に西槇教授と坂元が参加し、センターでの共同研究に関わる研究発表を行いました。 本センターでは現在センターの公式ウェブサイトの製作を進めており、2019年3月には正式に公開する予定です。本センターの活動にご関心をお持ちいただけましたら、ご覧いただければ幸いです。永青文庫研究センター専任准教授 今村 直樹  永青文庫研究センターは、2017年度より学内共同教育研究施設となった。その2年目にあたる2018年度も、多くの豊かな成果をあげることができた。 まず、永青文庫資料に基づく研究活動では、稲葉継陽センター長による『細川忠利 ポスト戦国世代の国づくり』(吉川弘文館、2018年7月)、今村直樹専任教員が編集担当した『永青文庫叢書 熊本藩役職編』(吉川弘文館、2019年2月)が刊行された。後者は、第2期永青文庫叢書(全5冊刊行予定)の第1巻目となる。2019年3月2・3日には、全国の日本近世史研究者を結集した藩(大名家)研究のシンポジウム「熊本藩からみた日本近世―比較藩研究の提起」が本学で開催される。また、昨年度創刊された研究紀要『永青文庫研究』の第2号も、本年度末に刊行予定である。基礎研究では、本年度から附属図書館が所蔵する松井家文書の総目録作成事業に本格的に着手した。継続中の事業である永青文庫資料中の初期藩政史料の細目録作成、「永青文庫資料総目録」のウェブサイト上での公開に向けた準備も着実に進展している。 社会貢献活動でも、多くの講演会・展覧会を開催した。稲葉センター長や後藤典子研究員が携わった、文部科学省情報ひろば企画展示「近世熊本城の被災と修復」(2018年5月18日~6月22日)、熊本県立美術館における「細川ガラシャ」展(2018年8月4日~9月24日)、企画協力を行った八代市立博物館未来の森ミュージアムの「ザ・家老 松井康之と興長~細川家を支え続けた「忠義」~」展(2018年10月19日~11月25日)、竹島一希兼務教員が監修した、附属図書館の第34回貴重資料展「永青文庫本に見る『旅』 ―細川幽斎文学書を中心に―」(2018年11月2日から3日間)などであり、いずれも盛況であった。「熊本大学文学会」は、教員と学生が参加して、文学部の教育充実と学術研究促進をはかり、学生会員が文学部で学ぶ環境をよりよいものにしていくための活動を行う互助組織です。文学部に関わる多くの教員と学生が加入しています。本年度に行った事業は次のとおりです。1. 文学部の事業への支援文学部での研究を学生や一般聴衆に分かりやすく公開して地域社会に還元する文学部フォーラムのための経費として50万円を寄付しました。2. 講演会や学術交流に対する支援日本中国語学会、熊本大学英文学会など学生も参加できる催しや国際シンポジウムなど5件に計19万円を補助しました。また、学生の企画・運営による他大学生との学術交流活動を支援するため「学生学術交流活動補助」を実施しており、西洋史研究室に2万円を補助しました。3. 図書等整備費の補助教育と研究に必要な学生用図書を充実させる事業を2年ぶりに復活させ、総合人間学科と歴史学科に対して15万円ずつを補助しました。4. 新入生歓迎行事/卒業関連行事/オープンキャンパスに対する補助新入生歓迎行事、卒業関連行事、オープンキャンパスに対して総額で約38万円を補助しました。5. 進級記念品の贈呈学生会員の4年生進級時に1人あたり4000円分の図書カードを記念として贈呈しました。6. 就職開拓に対する支援「公務員試験対策講座」および「教員採用試験対策講座」を受講する学生会員を対象に、1講座につき3000円の現金補助を行いました。7. 研修旅行に対する補助研究室等が行う研修旅行に参加する学生会員に1人あたり2000円を補助しました。8. 学生専用複写機の維持管理法文棟内での学生専用複写機の維持管理を行っています。カラーコピーについては大学周辺のコンビニエンスストアより安価です。1階文学部図書室内の閲覧室に設置してあるので、ぜひ利用して下さい。9. 『文学部通信』の発行この『文学部通信』の作成費用、および保護者の方々への発送作業とその経費は文学会が負担しています。10. 留学のための語学試験受験に対する補助今年度からの新規事業として、留学を控えた学生がTOEFL-iBTなどの語学試験を受験した際に1人あたり上限5000円の補助を出すようにしました。 こういった事業は、教員と学生の会員会費から皆さんに直接・間接に還元されているものです。文学会は、これからも多彩な事業を通じて会員を支援していく予定です。発 行:熊本大学文学部/熊本大学文学会編 集:熊本大学文学部 広報・情報化推進委員会 鹿嶋 洋、多田光宏、中川順子、朴 美子、江川良裕ウェブサイト www.let.kumamoto-u.ac.jp文学部通信 第18号2019年3月1日8第15回21世紀文学部フォーラムの報告第15回21世紀文学部フォーラムの報告永青文庫研究センター活動報告漱石・八雲教育研究センター活動報告永青文庫研究センター活動報告漱石・八雲教育研究センター活動報告2018年度 熊本大学文学会活動報告2018年度 熊本大学文学会活動報告2018年度文学会常任理事 井原 健 ▲ 講演する稲葉センター長とくまモン(於文部科学省)▲ 新センターの標札 (西槇偉教授 揮毫)▲ 報告される小畑教授

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