文学部通信18号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~総合人間学科■哲 学     山本 慶己さん(3年) 哲学では「思考のスタイル」を学ぶ、ということを重視しています。それは教科書に出てくるような哲学者たちの「誰が」「何を」言ったかを覚える、というだけではありません。問題が生じた出発点や、そこからどのような議論を経て結論にたどり着いたかを、一語一語丁寧に読み解いていくことが大切なのです。この経験が自分の持つ疑問点への向き合い方、そして卒業論文へとつながっていきます。 3年生からの演習の授業での先生やゼミの学生たちとの議論では、自分の考えでは至らなかった点に気づくことがたくさんあります。その時には自分の読みの浅さ、考えの甘さを痛感させられることばかりです。ですが最初はぼんやりとしか見えていなかった景色が少しずつクリアになっていく感覚は気持ちのいいものです。またすぐに次の疑問が生まれてくることもあります。 普段はなんとなく、で済ませているような疑問について厳密に深めていけることが、哲学の醍醐味だと思います。■心理学    岩松 咲良さん(3年) 私たちの研究室は、心理学の中でも「認知心理学」という分野を専門としています。魔法のように人の心を読む…というわけではなく、人の行動や認知について実験で得たデータをもとに分析をします。“心理”という目に見えないものを統計で数値化するという点に興味を惹かれて、私はこの研究室を選びました。文系だから数的処理はちょっと不安…と思った方は心配無用!データ入力後の難しい計算はコンピュータがやってくれます。何か困った時は優しい先生や先輩方が優しく教えてくれるのでご安心ください。 認知心理学の研究のテーマ例としては、「着衣の色が人に及ぼす影響」、「音楽の感情喚起」、「他者の痛み経験時の観察者の不快感」、「若年者と高齢者の持ち上げ行動における重さ判断の認識」、「自閉症児における表情の表出と他者の表情理解」、「幼児の共感性と他者存在の効果」など様々で、自分が興味のあるテーマを見つけることができると思います。■文化人類学  三仙 千尋さん(4年) 文化人類学とは、文献やフィールドワークを通し、多様な民族の文化・社会を比較・研究していく学問のことです。総合人間学科の他の専門分野とも隣接しており、人と関わるあらゆる事象への理解を深めていけるところが、文化人類学の魅力です。 私の所属するゼミでは、文化人類学の基礎を押さえる時間と、各々が興味のあることについて自由に研究発表する時間の両方が、しっかり取られています。レジュメ発表を通して、様々な文化・社会への理解を深めつつ、自分の頭で考えまとめられるよう、日々鍛えられています。シンポジウム等に参加し、日頃学べないことを学ぶ機会もあります。 ゼミ生たちは、来日ムスリム、ソフト・パワー、各国の死生観などをテーマに、留学生と交流したり、興味深い文献を探したりと、それぞれのやり方で研究を進めています。時には食事をしながら、教授も学生も一緒に楽しく学んでいます。しっかり学び、適度に遊び、皆で成長できることを嬉しく思います。■社会学      三宅 千夏さん(3年) 私たちの日常であたりまえにある家族や友人関係、消費活動、教育や就労制度などの仕組みは、日本社会において自然発生的に生じたものではありません。国家にとっての都合など、何らかの原因があり成り立っています。社会学の面白さは、それらの「あたりまえ」が生まれた社会的背景を読み解き、新たな知見を身につけられるところにあります。多様な社会的立場にある人々に対して考察を行うことで、自らの偏った社会の捉え方に気付くことができます。そのために、様々な文献やデータ、時にはフィールドワークを通して今の社会を知ることが必須となります。 実際に今年度の社会調査実習では熊本大学の学部生約900人に、外国語や海外に対する意識についてアンケート調査を実施し、現在分析を行っています。10月のゼミ合宿では宮崎県へフィールドワークに赴き、地方の観光事業の変遷と現状を学びました。これからも座学だけでなく実践的な活動や、ともに学ぶ学生との議論、先生方からのご指導を通して多角的な視点から社会を見る目を養っていきたいと思います。■芸術学   秋元 美久さん(3年) 芸術学研究室では音楽や美術の理論をもとに、自分が興味を持った芸術について幅広く研究しています。芸術経験の有無に関係なく一から芸術について学べるので、芸術の知識がなかった私も楽しく活動しています。個性豊かで親身になって指導してくださる先生方や愉快なメンバーが集まっており、笑いが絶えないのも芸術学研究室の魅力です。 私は芸術と地域活性化の関係について興味を持っています。ゼミでは瀬戸内国際芸術祭など各市町村で行われている芸術祭について発表を行いました。実習では大学近辺の商店街で行っている高齢者向けのコミュニティ音楽療法に参加しています。また私たち学生が主体の音楽コンサートを計画・実施しました。音楽療法やコンサートを通じ、高齢者が活躍できる場を設けることが地域活性化に繋がることを学びました。 来年度は経験したことを活かし、地域活性化に芸術を生かすにはどうしたら効果的かさらに深く研究していきたいと思います。■民俗学     小野 純輝さん(3年) 民俗学とは文字で記録された資料ではなく現代の事象によって過去の人間生活を究明することにより、現代の生活文化を説明する学問です。そのため、実際に現地を訪れ、フィールドワークを行うことが必須です。 民俗学研究室では各人がそれぞれの興味・関心に基づき研究テーマを設定し、様々な場所でのフィールドワークを行ってきました。私の場合は現代に残る俗信というテーマをもとに「心霊スポット」に着目して、この1年で60か所以上の心霊スポットを巡りました。民俗学研究室の他のメンバーも、地元のことについて祖父母からの聞き取り調査を行う、日本酒に関心を持ち酒蔵の見学をする、あるいは民謡を求めて山奥の村まで訪れるなど活発なフィールドワークを行いました。 ゼミではフィールドワークで得た成果を元に、ときには先輩方ともまじわりながら、活発に議論を行い、その中で知識を共有し理解を深めていきました。民俗学研究室のメンバーにとってこの1年は大きく成長した1年なのではないかと思います。■地域社会学  永元 美妃さん(3年) 地域社会学は、現実の地域の具体的課題について学ぶ学問です。直接住民の方に聞き取りする方法や、アンケート調査などを用います。今年の調査実習では、自分の興味があることについて大学生を対象にしたアンケート調査を行いました。そこでは、結婚願望や孤独感、食事についてなど多種多様な質問がありました。質問文を考えることから結果の分析まで自分自身で行います。その過程では、先生や研究室のメンバーからのアドバイスもあり、考えを深めながら進めることができます。実際に自分たちが動いて得たデータに触れることができ、楽しみながら研究をしています。 地域社会学研究室では、優しく親身に教えてくださる先生方と学部の先輩・後輩、大学院生、留学生という様々なメンバーがいて、和気あいあいとした雰囲気で活動しています。鍋をしたり、空き時間には学年関係なく話をしたりと関わり合いが多いので、たくさんの刺激をうけながら楽しく過ごしています。■地理学    帆足 大地さん(3年) 地理学研究室は、留学生が多く、幅広く様々な関心を持った個性的な学生が多くいます。先輩方は、郊外住宅団地、芸術家の移住、楽園づくり、ワーキングホリデー、中国の工業地域など、それぞれのテーマで卒業論文に取り組んでいます。研究室の中は時折中国語であふれ、私たち日本人学生が置いて行かれることも、地理研の日常になっています。そんな私たちを指導して下さるのが、ホークスを愛する鹿嶋先生と、蚊を愛する米島先生です。先生方からは、ゼミ等で的確なアドバイスを受け、各自研究に取り組んでいます。 この1年間を振り返ると、地理調査実習では、現場での調査の経験値を積むことができ、地理学を通じた考え方や表現方法を養うことができました。課題研究では、地図の作成方法などを学びました。 地理研に入ってから、研究室の先生や仲間からたくさんの刺激を受けながら過ごせていて、とても成長できたと思います。■倫理学     森石 凌大朗さん(3年) 倫理学とは、人間の行動の規範となる物事の道徳的な評価を理解しようとする学問です。つまり、簡単に言い換えると、世の中にあるものへの「良い」と「悪い」の価値評価についてもう一度見直そうとする学問です。私たちが所属する倫理学履修モデルでは、倫理学についての文献を読むのはもちろんですが、プレゼンテーションやディスカッションを通して、知識や理論を学ぶ授業もあります。その中で、所属している学生は自分の興味がある分野に関しての知識を日々深めています。 私が所属している研究室では、主に深層心理学について取り扱っています。私たちの研究室は、自分の研究したい分野に関する本を読み、その内容について要約し発表するという授業形式をとっています。私はもともと、犯罪心理学を研究したいというやや漠然とした考えで研究室に配属希望を出したのですが、先生から多くの本を紹介していただいて、それを読んでいくことで、自分がより深く興味のある分野を見つけることができ、さらにその分野だけでなく、周辺分野の知識を高めることができました。私は現在3年生なので、あと1年間でさらに自分の研究分野に関する知識を高めていきたいです。文学部通信 第18号3

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