文学部通信第15号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2016年3月1日発行 2005年に出発した、熊本大学の文学部では最も新しい学科ですが、おかげさまで、今年度は学科設立後11年目という、いわば2周目のスタートともいえる年になりました。コミュニケーション・英語・情報・メディアをキーワードに、現代社会の課題を解決するための総合力を身に着けてほしい。そんな思いから、コミュニケーション情報学科では、専門に分かれたコースを設けず、一学科一コース制で教育を行ってきました。 今年は33名の新1年生を迎え、そして、32名の卒業生を送り出そうとしています。学科内で仲が良いのがこの学科の良さという声が学生からささやかれますが、同じ方向を向いて仲の良い学年もあれば、それぞれが違う方向を向いて個性尊重型で仲の良い学年もあり、学年ごとの個性も、また学年を越えた交流の多さも特徴と思われます。 また、熊本大学文学部では一番の就職率を示してきた当学科ですが、今年も、就職希望者中で男性100%、女性96%の高い就職決定率となりました。留学も含めた積極的な国際教育と英語教育、人間力アップを意識した教員の学生一人一人に対する緊密なかかわり、企業や地域と連携した現場主義の授業があると思われます。■今年度の就職・進学状況について 上記のように高い就職決定率を今年も示すことができました。内訳は、一人が地方公務員になるほかは、企業就職となっています。今年は、業種で細かく見ますと、金融業が5名、情報通信業が4名と最も多く、製造業、運輸・郵便業、サービス業も多くなっています。勤務予定先ですが、今年は例年に比べると熊本県内は若干少なく、熊本県外の九州内が4割強、東京・神奈川が4割弱となっています。また、就職を希望をしなかった者の中にも、自ら事業を立ち上げる予定の者などヴェンチャースピリットをもつ学生も現れてきています。今年度は大学院進学希望者がおり、東京大学大学院に合格しています。今年は就職試験の解禁が8月と遅かったこともあり、暑い時期の戦いとなりましたが、それぞれが希望をもって就職できる先と出会えたように見えます。■成果を上げる英語教育、留学での学び 英語ネイティブ教員と日本人教員による集中的な英語教育も本学科の特徴です。ネイティブ教員による授業「スピーチ・コミュニケーション」等は、緊張感と共に、学生も一層の気合の入る授業です。英語ネイティブ教員の一人であるイアン・アイズマンガー准教授は今年度サバティカルを得て研究に集中しています。来年度には、最先端の知見を得て教育に復帰する予定です。学科長でもあり、丁寧な指導と人柄で信頼を集めてきたテリー・ラスカウスキー教授は今年度が定年退職前の最後の1年でしたが、来年度にもシニア教授として本学の教育に携わっていただけることが決定しました。 3年次終了時までにTOEIC850点を目標にしている本学科では、今年も学生主体のTOEIC勉強会「グローバル勉強会」が熱心に行われました。週2回計7時間の勉強会に加え、試験前には2週間の連日特訓を行っています。楽しく励ましあっての勉強環境は、就職試験でも注目されるTOEICの点数向上にもつながっています。この勉強会から今年も6名の長期の海外留学する学生を輩出しました。この勉強会では、昨年に引き続き、自らの点数アップを目指すだけでなく、英語勉強のノウハウを高校生に伝授するプロジェクトを自ら企画実施し、これらの活動は、熊大の「きらめきユースプロジェクト」としても採用されています。 昨年度から文部科学省によって開始された官民協働海外留学支援制度『トビタテ!留学JAPAN』を活用して本学科から2名の学生が留学していましたが、今年、英国から帰国し、海外研修で成長した姿を見せてくれました。『トビタテ!留学JAPAN』による留学経験者が帰国後に全国から集められての「留学成果報告会」のプレゼンでは、そのうち一名が審査員特別賞を受賞するなど、全国においてもリーダーシップを発揮しました。先輩に続き、今年度中に、6人が長期留学を開始しています。このうちの多くが『トビタテ!留学JAPAN』を含む奨学金を得ています。■現場主義の特徴ある授業 本学科では、映像作品や広告コンテンツをプロフェッショナルの映像プロデューサーやコピーライターの指導の下で実際に制作する「情報技術応用演習」、NHKの方などを講師に迎えての「メディア論」など、メディア現場の第一線の方々による授業も多く行われています。その一方で、哲学をバックグラウンドにした教員による「人間とは何か」といった哲学的探究を深める「コミュニケーション情報学特殊講義A」なども、学生には人気の授業です。 また、企業や地域社会と連携したインターンシップ型の教育機会が多いのも本学科の特徴です。昨年度から開始された水俣・芦北地域の地域づくりや商品開発等を学生がインターンシップでお手伝いする「コミュニケーション情報学特殊講義B」では、今年度は熊本大学のCOC地(知)の拠点整備事業も兼ねて、今年度は水俣の自然のどんぐりの植生を調べ、新しい商品開発や地域活性化につなげていこうとする「どんぐり地元学プロジェクト」と、芦北地域の「クリスマス・マルシェ」の企画実施をさせていただきました。芦北では、水俣病被害後の漁業復興への挑戦と象徴となる養殖真ガキのオイスターバーや、願いを込めたランタン流し企画を提案し、地域の新しい象徴となる可能性が開けました。  授業という枠を超えて、社会と積極的につながっていく活動もおこなっています。ゼミで行っている市内中心部の老舗「鶴屋百貨店」を舞台とした、子ども向けのイベント・プロデュース・プロジェクト「スコラチエロ」(イタリア語で『空の学校』の意味)は、活動開始後3年目を迎え、大幅なリニュアルをおこないました。これまでの「楽しみながら学べる」というコンセプトに、本学科のセールスポイントのひとつでもある実践的な英語学習によるスキルの活用、地元の若手クリエイターとの協業、といった要素を加え、名作童話を楽しみながら英語に親しめるアクティビティとして再スタートさせています。百貨店にとっては、次世代の顧客を育成するブランディングを産学連携でおこなうという試みです。学生にとっては、学んだ知識をプロフェッショナルの助言を受けながら社会にアウトプットしていくインターンシップ的な経験です。 これらの教育機会は、大学の中だけでは出会えない地域や企業の大人たちと出会い、学びを得る重要な機会となっています。6コミュニケーション情報学科就職・進学状況(単位:人、2014年1月16日現在)▲ 行政の方と一緒に芦北の真ガキを焼く▲ 提案したランタン流しは新しい風物詩になるか▲ スコラチエロの活動「えほん de イングリッシュ」▲ 高校生への英語授業活動の風景

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