文学部通信第15号
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 文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2016年3月1日発行■アジア史学 依然として少人数の研究室ですが,10月に小林晃先生が着任され,教員2人体制となりました。小林先生は,日本を代表する宋代史の若手研究者で,とくに南宋政治史の体系的認識の構築を嘱望されている方です。今後,主に小林先生が中国前近代政治史の分野を,伊藤が明清社会経済史の分野を担当していきます。 5月に文学部と安徽大学徽学研究中心との学術交流協定を更新し,さらに10月には安徽大学と大学間交流協定を締結しました。小林先生は,着任早々,交流協定調印式の通訳として活躍されました。今後,学生・院生の交流も可能になりましたが,さしあたり伊藤が徽学研究中心と徽州農村の共同研究を進めています。日々の研鑽の結果,学生たちは着実に研究の実力をつけてきています。小林先生も「学部生なのに漢文史料が良く読めますね」と感心するほどです。 体系的な理論と堅固な実証という熊大東洋史の伝統を受け継ぎながら,研究室の新たな歴史を拓いていきたいと思います。■考古学 2015年度は2年生5名、大学院修士1年生1名、研究生2名を迎え、総勢で21名となりました。夏の実習は今年から、長崎県対馬市にある越高遺跡と夫婦石遺跡を調査対象とし、8月9日から26日までの18日間実施しました。これらの遺跡はおよそ7000~5000年前の朝鮮半島の新石器人たちが残した遺跡であり、我が国でもきわめて稀な遺跡です。発掘調査は遺跡の保存状態を確認するため、地形測量や土層調査を主体としたもので、発掘は小規模に終わりましたが、遺跡の残存状況や遺物包含層を確かめることができ、今後の本格的な発掘調査への基礎情報を得ることができました。調査中は青年の家や地元の公民館に寝泊まりし、共同生活を送りました。また、9月上旬には杉井先生と有志学生8名で阿蘇市一宮町の上御倉古墳の横穴式石室の測量調査を行いました。難しい石室の実測や三次元測量を経験することができました。 昨年度発刊の報告書で、研究室の調査報告書は研究室創設以来50冊となり、40数年間にわたる継続した実習調査と報告書刊行という活動が認められ、大学から27年度の教育活動表彰を受けました。 集中講義にはアンデス考古学の世界的権威である国立民族博物館の関雄二先生に来ていただき、南米考古学の最新成果を学ぶことができました。今年は中国やモンゴルからの研究生が加わり、国際色豊かな研究室になってきました。■西洋史学 本年度は西洋史研究室にとって新たな出発の年となりました。昨年3月の丹下榮先生のご退職により、研究室は三瓶・中川の2人体制となりましたが、4月には個性あふれる新2年生12名と院生1名を迎え、総勢34名の大所帯となりました。教員2人にとっては嬉しい悲鳴をあげながらのスタートです。今年度も、学生たちのパワーが外へ向かって如何なく発揮された年でした。昨年3月には、九州西洋史学会若手部会(於福岡大学)で、現3年生の永島早紀さん、西村佳純さん、平方悠介君が、「アルザス・ロレーヌと国民国家」という題で他を圧倒する見事な報告を行い、共通テーマ「国民国家を考える」の議論を牽引しました。9月には海外研修旅行が実施され、ウィーンとプラハの世界遺産の街並を思う存分満喫し、世界最高級のワインとビールを楽しみました。また、4年生の田中聡子さんが国際奨学事業に採択され、夏にドイツとスイスにおいて教会壁画の史料調査を行いました。10月からは、ドイツ・ボン大学から2名の留学生を迎え、研究室はますます国際色豊かになっています。秋には、学生たちが手作りのドイツ料理に挑戦し、オクトーバーフェストで大いに盛り上がりました。また他にも、アメリカ黒人史研究をリードする大森一輝先生(北海学園大)をお迎えした研究報告会の開催(10月)など、なかなか大忙しの1年でした。今年度の学生の研究成果は、『西洋史研究室年報 第17号』にまとめられる予定です。■日本史学 2015年4月、2年生10名、研究生1名を迎えて、総勢49名(留学生5名を含む)で新年度の活動を開始した。今年度は近世史の安高啓明先生をお迎えしたので、特別なスタートとなった。5月の新歓遠足では、黒髪キャンパス周辺の史跡巡りを行った。身近な場所に、思いもかけない「歴史の痕跡」があることを再認識させられた。9月、3年生専門科目で、通称「古文書合宿」が行われた。八代市立博物館架蔵「野崎新地地主家文書」と本学附属図書館「佐田家文書」とを素材として、5日間、「古文書漬け」の日々を過ごした。後期に入ると、例年通り、古文書調査報告書の作成作業が本格化するともに、新たにブラジルからの留学生を迎え入れた。年明け早々、卒論13本、修論6本が提出された。安高先生の着任によって、本研究室のカラーも若干変化しつつあるように思う。この変化を追い風にして、研究室活動の一層の活性化を願うばかりである。 ■文化史学 小松先生が前年度末に逝去されたため、2015年度は大きな喪失感を抱えてのスタートとなりました。研究室の仲間入りをした2年生は8人。3年生が8人、4年生が8人、大学院生が2人、全部で26人です。4月に恒例の新2年生歓迎コンパ。7月の研究室対抗バレーボール大会では、日本史研究室との合同チームが優勝を果たしました。9月に課研・夏合宿を、昨年同様、菊池・七城で行い、12月には忘年会、1月には卒論・修論お疲れ様会と、研究室恒例の行事で盛り上がりました。 学生が自主的に決定している課題研究の今年のテーマは「叫び」。国内外の様々な歴史上の人物や問題を取り上げ、主に当事者の「叫び」という観点から議論し、それぞれレポートをまとめました。 小松先生がご担当予定だった「世界システム史演習」と「文化史概説」は、学外からお招きした塚本晋先生と河西英通先生がそれぞれ担当されました。塚本先生の演習で取り組んだのは丸山眞男の思想、河西先生の概説で学んだのは、日本近代思想の歩みです。新井先生の演習では、ナショナリズムが取り上げられました。4▲ 10月29日 安徽大学との大学間交流協定の調印式   前列右:熊本大学原田学長,前列左:安徽大学程学長▲ 発掘の打ち上げ風景(対馬市厳原の民宿にて)▲ 2015年課題研究・夏合宿(菊池・七城)▲ 9月の研究室合宿(於小国町)にて▲ 今年度のニューフェイス(4月お花見会)歴史学科

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