慶田研究室ニュース

【KAFS・報告】熊本人類学映画会 第12回 6/4(Mon)16:20-, 12th Session: Let's Talk about The Film Arrival and Anthroplogy!!

2018年6月4日(月)に開催した第12回KAFSの報告です。
今回は、慶田ゼミとグローバル教育カレッジのリカード先生とのコラボ企画。映画Arrival「到着/メッセージ」を文化人類学的視点から考え、語り合うという主旨で開催しました。

 
◆映画要約
今回、取り扱った映画『Arrival』(ドゥニ・ヴィルヌーブ監督 2016年)はハリウッド映画、SF映画に分類される映画です。映画では突如、世界12カ所に謎の飛翔体が現れます。飛翔体に搭乗しているエイリアンたちが地球に来た目的を探るため、軍隊やそのほかの科学者とともに言語学者のルイーズ・バンクス博士(エイミー・アダムズ演)は彼らと直接対峙します。バンクス博士は根気強く時間をかけ、のちにヘプタポッド(7本の脚の意)と呼ばれるエイリアンたちの言語を習得し、多くの地球人が共有している時間認識と異なるヘプタポッドたちの時間形態を理解していきます。
 
 
◆トークセッション
[学生によるプレゼンテーション]
鑑賞後、慶田ゼミの学生の斉藤みわさん(日本語担当)、杉本空駿さん(英語担当)によるプレゼンテーションがありました。二人は事前にゼミ内で行われた討論をもとにこの映画と人類学の関係について発表しました。今回の映画は通常のKAFSで上映している映画と異なりハリウッド映画です。しかし、随所に文化人類学と関係の深い場面が見られます。プレゼンテーションでは、at(anthropology today vol.34 issue.1 Feb 2018)に掲載されていたデヴィッド・サットン(David Sutton)の論文を軸に、サピア・ウォーフの仮説、非線形的時間、書くことの実践について言及しています。
二人はこの映画について、サピア・ウォーフの仮説や非線型的時間を持ち出すことで私たちが捕らわれている文化の檻、ベネディクト・アンダーソンの言葉を借りると「ヤシ殻の椀」を考えるきっかけをくれた映画なのだと結論づけています。
 
[フロア]
二人のプレゼンテーションの後で、全体のディスカッションを行いました。セッションには留学生の参加者も多くみられ、とりわけ、コミュニケーション、言語に関するコメントが寄せられました。映画内、またサットンの論文でも取り上げられていたサピア・ウォーフの仮説(言語が思考に影響を及ぼすという仮説)に関して、特に多言語を話す学生の関心が高かったです。その中で、アラビア語、英語、インドネシア語を話す学生から言語によってジェンダーや一人称、個人を指す名詞の変化が異なること、それによって彼の思考も変化していくことを話してくれました。また他の学生からも、話す言語によってアイデンティティに変化を感じるという意見があがりました。
その他、映画に登場した概念「非線形的時間」に興味を持った学生が多くいました。映画内で登場したヘクタポッドの言語には時制がなく、その言語を習得したバンクス博士もヘクタポッドと同じ時間感覚を獲得することができました。非線形的時間とは、私たちの多くが時間だと考えている、過去が未来に向かって不可逆的に進行する線形的時間と異なります。線形的時間から見ると非線形的時間は過去、未来、現在の順序があやふやだと言えます。そのため、映画内で非線形的時間感覚を身に着けたバンクス博士は未来の映像を観たり、過去の出来事についてつながりを感じることが出来なかったりと線形的な時間から外れた体験をします。この非線形的時間を題材にすることで、時間感覚といった私たちが当たり前だと疑わなかった物事について、異なった他の捉え方があるのではないかと、映像という手法を通して問いかけられた気がするというコメントが寄せられました。
 
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フロアからのコメントにもあった、母国語、外国語によって思考の変化を感じるという意見について、個人的に母国語を話すときと外国語を話すときで自分のパーソナリティに違いを感じるという考えに同意するとともに、外国語だけでなく、母国語に限定しても、言語を学習していく過程で個人が経験したことが言語に反映されると考えます。そのため私は言語によって思考が左右されるというサピア・ウォーフの仮説に概ね同意しています。しかし、言語が個人に帰属するものであると言い切れないとも考えます。サピア・ウォーフの仮説のように、言語に相対的な特性を見出すことが出来る一方で、私たちは言語によって、意思疎通をはかり一定の認識を共有することができます。その時、一つの単語について個人間の厳密な認識のズレを言及せずとも概ね相手の発言を理解できます。共有という性質を考えると、言語には普遍的要素も含まれていると言えるのではないでしょうか。プレゼンテーションをした二人の学生も、この映画はサピア・ウォーフの仮説に対して「イエスともノーとも言える」と結論付けています。習得した言語は個人のものですが、言語そのものが他者や社会に共有されているものであるため、言語の性質は相対主義のみに帰結しないのだと思います。それゆえ、私たちは他者とコミュニケーションを広げていくことができるのではないでしょうか。(田口)

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当日の様子、左:香室撮影、右:田口撮影

 

次回KAFSの開催は決まり次第HP等でお知らせします。

 

[これまでの活動]

★セッション第12回  お知らせ

★セッション第11回  お知らせ報告

★セッション第10回  お知らせ報告

★セッション第9回 お知らせ報告

★セッション第8回 お知らせ報告

★セッション第7回 お知らせ報告

★セッション第6回 おしらせ報告

★セッション第5回 お知らせ報告

★セッション第4回 お知らせ報告

★セッション第3回 お知らせ報告

★セッション第2回 お知らせ報告

★セッション第1回 お知らせ報告

 
Kumamoto Anthropology Film Society (KAFS)
運営委員:慶田勝彦、ジョシュア・リカード、香室結美、田口由夏

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