熊本県上天草市
カミノハナ古墳群測量調査
(2011年度)
徒 然 な る ま ま に
2011年8月28日(日) 12日目
最終日。
昨夜は、現場最後の夜ということで、前島にある旅館「海の都」に泊まりました。
そして、打ち上げをかねたささやかな宴会。
調査でお世話になった上天草市教育委員会の課長さんほか3名、ビジターセンターの山川さん、文化財保護委員の山崎さんをお招きして、楽しい夜を過ごしました。
千崎古墳群の調査の時もそうでしたが、地元の方々の協力なくしては、こうした考古学調査は成り立ちません。
ですので、何とか一度、お世話になった方々とお酒を酌み交わす機会をもちたいと思っていたのですが、それが実現できてとてもうれしい気持ちでした。
こうした1次会の終了後、お招きした方々はお帰りになったのですが、旅館に宿泊する熊大の面々は男子部屋に集まって2次会・・・
翌日の運転のこともあるので、お酒を控えつつも、暴れるChimpanを肴に楽しい夜が更けていきました。
そして今日。
朝一に旅館を立って大学へ。
11時頃に4台の車が無事到着し、器材の撤収作業。
段取りよく行ってくれたおかげで、12時過ぎにはすべての片付けが終了しました。
今回の測量調査は、メインの沖縄実習調査の前に行うということもあり、当初は少々微妙な位置付けで、しかも異例なことに4年生が多く参加し、かつフィールドマスターも4年生がつとめるというものでしたが、でも、これはこれでよかったのではないかと感じています。
熊本大学考古学研究室の学生は、世間では現場経験が豊富のように思われているようで、学生も勘違いしているきらいがままあるのですが、実際は絶対的に現場経験が足りません。
実測も本当に下手なんだよなあ・・・
これは、近年、行政発掘調査に参加することが難しくなり、またそうした気概のある学生もほとんどいなくなってしまったことに大きな原因があるのですが、だからといって、大学ですべてお膳立てするというのは間違っていると思っています。
もっと、自分で考えて行動せんかい!、と強く思います。
でも、私が可能な限りは古墳の調査を継続していくべきだなあと、今回、久しぶりに測量調査を実施して強く感じました。
そうした調査をともにすることで私にも大きな刺激がありますし、また現場の最中で日々成長していく学生さんをみることも本当にうれしいことです。
今後も模索を続けたいと思っています。
2011年8月27日(土) 11日目
何とか昨日で一通りの現場作業を終了。
天草青年の家にも本日でお別れ。
2011年の今、2008年の千崎古墳群第7次調査から3年が経過していますので、上天草市の古墳を知っている学生も数人となっています。
そのため、現場中に1度は、周辺の古墳見学に連れて行きたいと思っていたのですが、雨・・・雨・・・でなかなかそれもかなわず、でも、撤収日前日の今日、ようやく実施することができました。
コースは、千崎古墳群→桐の木尾ばね古墳→広浦古墳→長砂連古墳→大戸鼻古墳群(北古墳・南古墳)→高舞登山。
装飾古墳館の池田さんが、装飾古墳の環境モニター調査に来られたので、大戸鼻の石室や石棺のなかもじっくり見ることができました。
あらためて思ったのは、大矢野島と上島のあいだの海峡の重要性。
下のもっとも上の写真は、広浦古墳背後の九電鉄塔からその海峡を眺めたものですが、カミノハナ古墳群や広浦古墳、長砂連古墳などの主要古墳がこの海峡を望む場所に築かれていることがよくわかります。
そうしたなかでも、カミノハナ古墳群は海峡のど真ん中に位置しています。
これを見るだけで、カミノハナ古墳群の重要性がわかるのではないでしょうか。
広浦古墳背後の鉄塔からは、東の八代・大鼠蔵から南の大戸鼻、そして東の大矢野・上島まで一望できます。
その眺望はすばらしく、学生さんも感動していたように思います。
ここは、知る人ぞ知る絶景の地ですね!
では、この日の写真を以下に・・・
上から、
広浦古墳背後の鉄塔から西をみた眺め
鉄塔の下の学生さん−−鉄塔でふざけるChimpanたち
長砂連古墳の直弧文−−大戸鼻南古墳石棺の装飾文様
大戸鼻北古墳の入口−−大戸鼻北古墳の穹窿状天井







2011年8月26日(金) 10日目
現場作業の最終日。
残る範囲の測量と古墳分布状況の写真撮影。
調査開始当初は、測量に不慣れな学生ばかり、そして雨ばかりでどうなることかと思いましたが、やはり現場は人を作るのでしょう。
2年生は途中で帰らなくてはならず残念でしたが、残る学生は最後にはおよそまかせておけるくらいにはなりました。
まだまだなところは多々ありますが・・・
急遽計画した測量調査でしたが、まあまあの図には仕上がったと思います。
あとは、今後どうするか。調査をどのように進めるべきか。
その辺のところが大きな課題であると感じています。


2011年8月25日(木) 9日目
学生1人が腹痛のため、現場は7人。
少人数ですが、元気一杯で作業です。
今日は、昨夜に矛盾がみつかっていた箇所の確認作業から。
光波と平板の併用。
同じ平板測量ですが、いくつかの方法を学生に示すことができたのはよかったと思います。
そのあと最後に残していた2号墳周辺の測量に入りました。
ほぼ終わりまで到達したのですが、またまた一転雲が広がり、雷が・・・
危険なので、天草ビジターセンターまで撤退。
でも、幸いなことに天気がひどくなることもなく、ビジターセンターでコーヒーをいただきながらかなりまったりとした時間を過ごしました。
さて、この現場ではやるもの・・・
・・・チンパン、ニャァップ、キョウソ様。
2011年8月24日(水) 8日目
キャッホー!!
朝から晴れて、1日中太陽が出ていて、気温も30℃を超えたか?
この現場初!
一部の等高線に少しの矛盾が出ていて、明日、確認が必要ですが、もう本当に終わりがみえています。
雨さえ降らなければ、最後は天草の古墳見学に当てることができそうです。
学生もその日を楽しみにしているので、明日・明後日、ラストスパートです。
下の写真の右は3号墳から2号墳を見た風景。左は6号墳下から5・3号墳を見上げた風景です。


2011年8月23日(火) 7日目

右の写真のように、またしても大雨。
今午前9時過ぎですが、宿舎のミーティング室で待機しています。
今回の宿舎、天草青年の家では、我々が滞在する10日間ほどの間にさまざまな団体が入れ替わり立ち替わり宿泊していきますので、それに合わせて部屋が割り当てられます。
ですので、我々の部屋も数日おきに変更になり、そのたびに荷物を片付け、部屋の掃除をして移動しなければなりません。
ちょうど今日がその日にあたっていて、雨降りの待機中なのですが、部屋でゴロゴロすることもできず、ミーティング室で思い思いに過ごしているというわけです。
とはいっても、机に突っ伏して寝ている学生がほとんどなのですが・・・
さて、こんな雨ばかりの現場なのですが、昨日ははじめて雨音を聞かない日となり、太陽も顔をのぞかせてくれました。
1日中、雨の心配なく作業ができたのはこの現場では初めてで、とても貴重な1日となりました。
そのおかげか、1つの班だけはちょっと苦労していたみたいですが、淡々と順調に作業が進んで、何とか終わりがみえてきたような、そんな気がしています。
昨日夜のミーティングでは、今日で終了がほぼみえると思うので気合いを入れて!、とみな決意してくれていたのですが、今朝の雨でちょっと出鼻をくじかれた感じです。
午後からでもいいので、雨よ、上がれ!!
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今、午後9時20分。
夜のミーティング室です。
幸いなことに午後は作業ができました。
途中、少し雨に降られはしましたが・・・
今日から8人。平板は2台。
古墳群の周辺から中心へ攻め上って行っていて、そろそろ中央の2・3号墳に到達しつつあります。
ようやくという感じですが、でも終わりがみえたので、あとは天気の回復を祈るのみ。
うまくいけば、最後の1日、天草の古墳見学に学生を連れて行くことができそうです。
そうなることを目指して、いざ。
2011年8月21日(日) 5日目


朝から大雨・・・
現場初日から雨の音を聞かない日はありません。
で、天草ビジターセンターにて午前中待機。
でも、午前10時から上天草市郷土史研修同好会の方々20人弱の見学会があり、雨だったのでまずはビジターセンターの休憩室にて資料や本を使っての説明。
そのあと、幸いなことに瞬間的に雨が上がって現地を見学していただきました。
とても熱心に説明を聞いて下さり、またとてもていねいに現地を見て下さって本当にありがたかったです。
午後、助っ人で来てくれていた弘中君が帰ると、とたんに雨が上がって、現場へ。
2年生は今日が最終日なので、何とか作業ができて本当によかったと思います。
「あ〜、帰りたくない」という言葉が2年生から出て、そんな時、調査をやってよかったなあと心から思います。
さて、昼食の時、そういえば今日は8月21日で私の誕生日。
弁当のあと、学生たちからバースディ・ケーキのプレゼント。
「うれしくも少し恥ずかし誕生日かな」
2011年8月20日(土) 4日目
今日も午前中に雨がちらつき、現場が始まって以来、すきっと晴れたことがありません。
いやはやという気分ですが、まあ、天気には勝てないということで・・・
今年の測量調査ですが、メインの実習調査、沖縄の前に行うということで、学生は希望者のみの参加としています。
それでも結構参加して働いてくれているのですが、まだ授業があったりして(夏休みですよ!)、明日の夕方にはすべての2年生が帰ってしまいます。
まだまだ不慣れで、平板もろくに立てることができない2年生ですが、とはいえ彼らがいてくれるのといないのとでは、もう大違い。
現場作業の人員配置の面でもそうですが、現場の雰囲気作りのうえでも彼らの存在は相当に大きい。
だから彼らが明日の夕方に帰ってしまうことはかなり痛い・・・という気持ちです。
そんなこともあり、3年生1人を1日だけですが引き留めてしまいました。
ごめん。そして、ありがとう!!
さて、昨日から明日までは昨年度の修了生、弘中君が手伝いとして参加。
今日は数年前の修了生、三好君、それから鹿児島の藤井君がシュークリームを持って見学に来てくれました。
雨も連れてきてくれましたが・・・
さて、明日の現場は最大人数の15人。
1つのヤマがやってきます。
2011年8月19日(金) 3日目
いや〜、天候不順ですねえ・・・
今日は3日目ですが、午後になってこの現場ではじめて太陽の顔を見ることができました。でも明日の午後、また雨の予報。なんともはや・・・
今日から平板が3台回り出しました。
でも、測量がはじめての学生がほとんどなので、平板は昨日から動き出したのですが、スピードはまだまだ。
というか、すこぶる遅くって、かなりイライラしてしまします。
とはいえ、大学の実習調査というのは、多かれ少なかれこのようなもの。
おそらく、私がはじめて平板測量をした1年生の頃、それは京都府埋文センターの現場でしたが、担当者の三好さんはとても辛抱強く私を見守っていて下さったのでしょう。
今になって、そうした学生時代の先輩や先生方を思い出してしまいます。
まあ、平板が動き出して2日目の今日、それぞれの班が何とかチームになってきたような、そんな雰囲気を感じます。
天気さえもってくれれば・・・と思います。
以下の写真は、今回の宿舎、天草青年の家からみた天草の海。
こんなどんよりした曇り空が続いています。


ミーティング室も用意していただいたりして、かなりのご配慮をいただいて、とてもありがたく思っています。
右の写真は、初日、朝の集いにおける熊大考古学学生面々の挨拶風景。
小学生もいるなか、気持ちを盛り上げて、チクサクコールで気合一発!
カミノハナ古墳群の現地ですが、調査に入る前は、もう、本当に草ボウボウ。
ちょっと、どうしようかと思うほどの荒れ放題で、まったく地面がみえない状態でしたが、シルバー人材センターに伐採を頼むと見違えるほどの状態に。
丘陵尾根線上に横穴式石室を内部主体とする円墳がほとんど間隔をおかずにポコポコと築かれている様子がよくわかります。
どのように写真を撮ろうかと思っているのですが、3つの平板班を見て回っているだけで時間が過ぎてしまって、写真のアングルを決めることもままならないこの3日間でした。
下の写真は、調査風景。
1号墳班と6号墳班です。


2011年8月17日(水) 初日
実に3年ぶりの古墳の調査。いよいよ開始。
熊本県上天草市松島町所在のカミノハナ古墳群。
今からちょうど30年前に甲元先生たちが発掘調査された古墳群です。
円墳8基。主体部は横穴式石室。
1号墳がもっとも古くて、TK208頃。その後6世紀まで継続して営まれます。
天草で唯一、円筒埴輪・形象埴輪を樹立する古墳群で、横矧板鋲留短甲や独立片逆刺長頸鏃などが出土しています。
こうした主要遺物については再整理して2009年に報告書を出したのですが、その作業時から古墳そのものの再調査も必要だと感じていて、今回、その機会を得たというわけです。
今日は、朝7時に大学の考古学資料室に集合。
レンタカーに器財を積んで、大雨のなか上天草へ。
天草では雨が降っておらず、午後から何とか予定通りの作業を行うことができました。
本日は、レベル移動と基準点設置。
相当の距離のレベル移動でしたが、その作業を指名した2年生がとても頑張ってくれて誤差2o。
2級の許容誤差範囲内に収めてくれました。
今回の宿舎は、天草青年の家。
熊大の施設、マリンステーションほど自由ではありませんが、28日までの約10日間。
目的を達成し、無事終わらんことを・・・