
この本に関わった教員
小林 晃
Akira KOBAYASHI
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南宋政治史論
ひとこと紹介
中国宋代(960~1279)は皇帝の権力が前代から飛躍的に増大し、のちの明清時代の皇帝の原型が形成された時代だとされてきました。確かに前半の北宋時代(960~1127)にはそうした状況が見えるのですが、後半の南宋時代(1127~1279)になると、一転して皇帝よりも宰相が強力に政治を主導する傾向も見られるようになります。なかでもとくに大きな権力を行使した4人の宰相を「専権宰相」といいます。従来は「専権宰相」を宋代史上の例外とすることで、宋代政治の前半と後半で見られた上記の矛盾を説明しようとしてきました。
しかし南宋150年の歴史のうち、「専権宰相」が中央政治を主導した期間は70年にも及び、それを例外視することは南宋政治そのものを例外とすることになりかねません。4人の「専権宰相」も各政権の内実が検討されることもなく類似した権力者として片付けられ、南宋は政治上の変化の乏しい時代だと見なされてきたのです。
本書は「専権宰相」を宋代政治史の展開のなかで必然的に生じた存在と見なしつつ、南宋150年の国際・国内情勢の変容のなかで4人の「専権宰相」の政権がいかに生みだされたのかを政治の動態面に注目して明らかにしようとしたものです。
主要目次
- 序章
- 第一章 南宋三省攷―高宗朝初期の対外危機と「三省合一」
- 第二章 南宋孝宗朝における太上皇帝の影響力と皇帝側近政治
- 第三章 南宋寧宗即位直後における韓侂胄権力の確立過程
- 第四章 南宋寧宗朝における史彌遠政権の成立とその意義
- 第五章 鄭真輯『四明文献』の史料価値とその編纂目的―『全宋文』『全元文』の補遺を兼ねて
- 第六章 史彌遠神道碑訓注稿―南宋四明史氏の伝記史料その一
- 第七章 史彌堅墓誌銘訓注稿―南宋四明史氏の伝記史料その二
- 第八章 南宋寧宗朝後期における史彌遠政権の変質過程―対外危機下の強権政治
- 第九章 南宋理宗朝前期における二つの政治抗争―『四明文献』から見た理宗親政の成立過程
- 第一〇章 南宋四明史氏の斜陽―南宋後期政治史の一断面
- 第一一章 南宋後期における両淮防衛軍の統制政策―浙西両淮発運司から公田法へ
- 付章 南宋寧宗朝政治史研究の前進のために
- 終章
※ 詳細な目次は出版社のページでご確認ください。