文学部通信18号
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  ▲2017年課題研究・夏合宿(七城)文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2019年3月1日発行■日本史学 4月、10名の2年生を研究室に迎え、大学院生を含めて計42名で、新年度をスタートさせました。9月に行われた「古文書実習」は本研究室伝統の授業ですが、今年度は緒方家文書(上益城郡甲佐町)を整理する3年目でした。特に今年は近世前期の「差さしがみ紙」(庄屋への伝達や命令を伝える文書)の整理に着手したため、難解さも例年以上でしたが、庄屋を接点とした領主権力と民間社会との生き生きとした様相に触れることができ、歴史を学ぶ面白さを満喫しました。5日間の集中実習が終わっても、調査報告書の原稿作成作業が待ち受けているのも、この授業の特徴です。この原稿を書いている1月初旬は、印刷業者への入稿直前の段階ですが、年度末には14冊目の報告書が無事、納品されることでしょう。なお本実習は、今年度の熊本大学教育活動優秀賞を受賞しました。 同じく9月、研究室合宿を阿蘇郡小国町で開き、2年生も先輩たちに交じって、前期演習の成果を共同研究報告として発表しました。夜は参加者全員でバーベキューを囲み、ゆっくり語り合いました。11月、4年生は卒業論文中間発表会、3年生は九州大学との合同ゼミに臨みました。この合同ゼミも、貴重な「他流試合」の場として、長く続いている行事です。年越しを挟んで、卒業論文・修士論文提出日が迫ってくると、研究室のムードは極度に緊張します。その後も、2月中旬の口頭試問終了まで、この学問的な緊張を楽しむ時期が続きます。■考古学 2018年度は4月に2年生9名を迎え、大学院生3名、大学院研究生1名を含め総勢22名でスタートしました。久しぶりに大勢の2年生が入り、研究室も活気づきました。5月の新入生歓迎ハイキングでは皆で宇土半島とその周辺地域の古墳や貝塚を訪ねました。今年度の夏の発掘調査実習は、昨年に続き長崎県対馬市の越高遺跡と熊本県阿蘇市の下御倉古墳で実施しました。越高遺跡は韓国新石器時代の土器を主に出すおよそ7000~6500年前の遺跡で、日韓交流の歴史を語る上で、学史的にも学術的にも重要な遺跡です。対馬市教育委員会と合同で9月に民宿や青年の家に宿泊しながら、15日間発掘調査を行いました。今回は、韓国の釜山大学から学生4名の参加があり、友好を深めることができ、まさに現代版の日韓交流でした。発掘調査の結果、韓国新石器時代の土器である隆起文土器や石斧などが多数出土し、かつての調査で確認されていた層位的な出土状況を再確認するとともに、その下部にもより古い文化層があることが明らかになりました。これらの成果を受けて、来年度は4年間の発掘調査の成果報告書の作成が待っています。全国的にも注目されている遺跡だけに、今後、遺跡の価値をさらに高めるべく頑張っていきたいと思います。下御倉古墳では墳丘部の測量調査を8月に実施しました。上御倉古墳と合せたこの測量図は今後の阿蘇地方の古墳研究にとって重要な基礎資料となりました。12月には10名の有志にて韓国釜山市を訪ね、韓国の新石器時代や考古学に関して研鑽を積むことができました。■アジア史学 平成30年度のアジア史研究室は、2年生3名、3年生4名、4年生2名、大学院生1名の計10名でスタートいたしました。昨年度は4年生が不在であったことを考えますと、アジア史研究室で全学年がそろうのは久々のことになります。昨年度に比べ、昼食時に研究室が混雑することが多くなったのも、研究室の活気の表れといえるものと思います。 今年度も熊本大学と安徽大学との間で学術交流が行われました。7月に4年生2名が安徽大学のサマープログラムに参加し、昨年同様に史跡の探訪などを行ったものです。このプログラムには日本の学生だけでなく、世界各国からの学生も参加するものらしく、2名の4年生は彼らとの国際的な交流も満喫してきたようです。 9月には昨年に引き続き、夏合宿も行われました。場所は人吉市内の旅館で、温泉や人吉城跡にも徒歩で行ける便利なところでした。現地では学生たちが精読した研究書の内容をレジュメ形式で発表しました。意見交換も活発になされ、有意義なひと時が過ごせたのではないかと思います。さらに同月には京都市立芸術大学の渡辺信一郎先生をお迎えしての集中講義が行われました。中国古代史の貴重なお話を聞くことができ、大きな学問的刺激を受けたのではないでしょうか。 アジア史研究室では学生同士の仲が良く、勉強を進めるための良好な環境が整ってきていると思います。平成31年度は学生が主体となってこの環境を維持し、研究に邁進して行ってくれるものと期待しております。■西洋史学 本年度西洋史研究室は、行動力溢れる2年生8名と院生1名を新たに迎え、総勢31名となりました。2年生の行動力は、熊本大学の垣根を越えて、九州で西洋史を学ぶ学生が集う九州西洋史学会若手部会で発揮されました(11月)。若手部会では、参加校中唯一の2年生チームとして、竹隈雅人君、三浦聖斗君、美淋光哉君の3名が、「アメリカにおけるベースボールと文化統合」というタイトルで独創的なプレゼンテーションを行い、熊大パワーを発揮してくれました。また本年度は、多くの学生が海外で活躍した年でもあります。3年生の庄﨑太郎君が、文部科学省の海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」に採択され、9月よりトルコのチャナッカレ大学に留学し、トルコと日本の架け橋となるべく現地で頑張っています(庄﨑君は熊大初のチャナッカレ大学への留学生です)。また2年生の美淋光哉君も、文学部の国際奨学事業に採択され、こちらも熊大初となる、アフリカのルワンダおよびウガンダにおける海外支援ボランティア活動に従事しました(9月)。また他にも、イスラエルやラオスなど、世界中の様々な地域に研究室の学生が飛び出しました。今年度は、集中講義として文化史学と共同で九州大学から今井宏昌先生をお迎えすることができました(12月)。情熱溢れる今井先生の講義を通じて、ナチズムと2つの世界大戦に関するドイツ現代史を学ぶことができました。卒業論文・修士論文も含めた本年度の学生たちの研究活動の軌跡は、3月に刊行される『西洋史研究室年報 第20号』に綴られる予定です。■文化史学 2018年度は、新たに10名もの2年生が研究室の仲間に加わり、3年生5名、4年生9名、大学院生1名をあわせ、日本人学生だけで25名の大所帯になりました。スイス、中国、ベトナムから来熊した留学生を加えると総勢28名。指導教員陣は、昨年同様、新井先生と鈴木先生のお二人です。 4月に新2年生と中国から来た留学生の歓迎コンパ、7月に前期お疲れさま会、9月に課題研究・夏合宿を「木の研修施設」(七城)で行いました。夏合宿は1年間の日本留学を終えスイスに帰国する留学生の送別会を兼ね、多くの4年生も駆けつけて別れを惜しみました。10月はその入れ替わりにベトナムから訪れた留学生の歓迎会、12月は忘年会とキリタンポ鍋(4年生卒業論文激励会)、1月は卒業論文・課題研究お疲れさま会と、研究室恒例の行事で盛り上がりました。 学生が自主的に決定する課題研究の今年のテーマは「壁」。日本における方言の壁や、キング牧師が見た黒人と白人の間の壁、まさに壁そのものである北アイルランドのピース・ラインなど、それぞれ個別テーマで調査し、レポートにまとめました。新井先生の演習テーマはカルチュラル・スタディーズ、鈴木先生の演習は福沢諭吉の『女大学評論』です。8月には大阪府立大学の酒井隆史先生をお招きした集中講義があり、11月には研究室メンバーの5名が文化人類学研究室の学生たちと共に宮崎県高千穂町の土呂久地区を訪れ、ヒ素鉱毒公害に関する体験学習を行いました。4▲古文書実習3日目の午後、緒方家文書が伝来した 上益城郡甲佐町糸田地区でのフィールドワーク風景▲対馬市越高遺跡での現地説明会風景(2018年9月16日)▲恒例の天草での夏合宿 夕日をバックにバーベキュー▲人吉市での夏合宿の様子▲2018年課題研究・夏合宿(七城)歴史学科

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