文学部通信17号
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  ▲2017年課題研究・夏合宿(七城)文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2018年3月1日発行■日本史学 今年は13名の2年生を研究室に迎え、総勢43名(大学院生2名含む)となりました。3年生と大学院生が参加する「歴史資料学野外実習」では、昨年度に引き続き甲佐町緒方家の地方史料を整理しました。今年度からは、本学に在職されていた松本寿三郎先生からご寄贈いただいた近世文書群の整理に着手しました。朝から夕方までのまさに“古文書漬け”の5日間は、学生にとっては試練だったようですが、最終日近くなってくると、読める文字も増え、作業する雰囲気も明るくなってきました。期間中には、甲佐町でフィールドワークをし、古文書に出てきた地名や碑文を発見しては、一喜一憂している姿がみられました。この実習成果は、『古文書実習報告書』として3月に公表する予定で、今その編集作業の真っただ中です。9月には、恒例の「研究室合宿」を小国町で行ないました。2年生と3年生はこれまで受けてきた実習のなかからテーマを設定し、4年生は各分野にわかれて卒業論文の構想を発表しました。夕食のバーベキューでは教員・学生が親交を深め、お互い学内とは異なる一面を知ることができました。3年生は「研究室合宿」で発表した内容をさらに高めて、11月に九州大学との合同ゼミで報告しました。4年生は11月の中間発表を経て、1月に卒業論文を提出しました。卒業論文は学生たちの大学生活の集大成として、教員一同、真剣に読み込んでいきたいと思います。■考古学 2017年度は4月に2年生4人を迎え、大学院生2名、研究生1名を含め総勢19名でスタートしました。たいへん考古学に熱心な2年生で、将来が楽しみです。5月の新歓ハイクでは皆で佐賀県吉野ヶ里遺跡を訪ねました。今年度の夏の発掘調査実習は昨年に続き、長崎県対馬市の越高遺跡と熊本県阿蘇市の上御倉古墳で実施しました。越高遺跡は韓国新石器時代の土器を主に出すおよそ7000年前の遺跡で、学史的にも学術的にも重要な遺跡です。対馬市教育委員会と合同で9月に大学院生や4年生の応援参加を得て、民宿に宿泊しながら、13日間発掘調査を行いました。その結果、多量の隆起文土器(韓国新石器時代の土器)や黒曜石製の石鏃などが出土し、さらには日本の縄文時代の炉址とは形が異なる朝鮮半島の伝統と思われる方形の石囲い炉を検出しました。この遺跡では、これまで遺構の存在が疑問視されていただけに、遺跡の価値をさらに高める貴重な発見となりました。上御倉古墳では墳丘部の測量調査を4月と8・9月にかけて(計11日間)8名の参加を得て行いました。この測量図は今後の調査に向けての重要な基礎資料となりました。いずれの調査も現在3年生を中心に発掘報告書を作成中です。11月には小畑弘己先生が第5回古代歴史文化賞大賞を受賞されました。■アジア史学 平成29(2017)年度のアジア史研究室は、4月に大学院生が1人誕生したほか、4人もの新2年生を迎えたことで、構成員の人数が一気に倍増することになりました。新メンバーの面々は、いずれも個性が豊かであることは言うまでもなく、学問に非常に熱心に取り組んでおり、毎日のように研究室を利用しています。夜に外から煌煌と明かりが灯る文法棟3階のアジア史研究室を見上げる度に、これからの研究室を担う若い力の頼もしさを感じます。 今年度も昨年度に引き続き、安徽大学との間で交流が持たれました。7月に本研究室の大学院生がサマープログラムを利用し、安徽大学の差配によって現地の史跡などを訪問する機会を持ったものです。1週間ほどの期間でしたが、大いに充実した訪問となったようです。 また今年度はメンバーが増えたこともあり、夏にはここ数年中断されていた合宿を行いました。場所は天草にある民宿。目の前には歴史ある港が広がり、近くには温泉もあるという絶好の場所。残念ながら伊藤正彦先生は所用のため参加することはできませんでしたが、学生たちの親睦は大いに深まったようです。民宿では2日間にわたって漢文史料の読解を行いました。進行役を務める大学院生の指導のもと、難解な北宋時代の上奏文の内容をきちんと解きほぐすことができたと思います。 来年度はさらに研究室の構成員が増えることになると思いますが、現在の2年生・3年生が先輩として新2年生を引っ張って行ってくれることを心より期待致します。■西洋史学 2017年度は、元気一杯の2年生9名と院生1名を新たに迎え、総勢32名の大所帯となりました。このマンパワーを活かして、今年度も学生たちは熊本大学の垣根を越えて大活躍しました。オール九州で西洋史を学ぶ学生たちが集う九州西洋史学会若手部会では(12月)、熊本大学が開催校を務め、学生たちが総出で取り組んで大成功させました。なかでも、4年生の伊東愛さん、北園かなえさん、寺師宗利君、中島駿介君、三浦敦子さん、宮原万由子さんの6名が、それぞれ見事な研究報告を行い、参加した他大学の学生だけでなく多くの先生方からも、非常に高い評価をいただきました。またさらに、4年生の中島駿介君と2年生の庄﨑太郎君の研究プロジェクトがともに文学部国際奨学事業に採択されました。中島君は昨年の夏シチリアで中世建築群の調査を実施し、庄﨑君は今春にトルコで国際交流プロジェクトを行う予定です。また3月には、11名の学生が参加するスペイン研修旅行が行われます。今年も多くの学生が世界に飛び出します!今年度は集中講義として、夏に中世スペイン史の阿部俊大先生(同志社大学)、12月にジェンダー史の星乃治彦先生(福岡大学)をお迎えすることができました。また恒例の天草での夏合宿、オクトーバー・フェスト、クリスマス会なども開かれ、盛り沢山の1年でした。教員もまた、中川順子先生が10月に鹿児島県立高校教員の、三甁弘喜先生が11月に熊本県立高校教員の、研究会にそれぞれ招聘され、学外活動として講演を行いました。最後に朗報として、卒業生の中谷惣君(現在信州大学勤務)が、中世イタリア都市社会の研究により、今年度の日本学術振興会賞と学士院学術奨励賞という大変大きな賞をダブル受賞しました!■文化史学 2017年度は、2年生5人が研究室の仲間入りをし、大学院生(博士前期課程)1人が入学しました。3年生が9人、4年生が9人、大学院生が1人、後期よりスイス・チューリッヒ大学から来熊した留学生を加えると、全部で25人です。また、2年間新井英永先生が一人で指導されていましたが、近代日本思想史がご専門の鈴木啓孝先生が着任され、教員2名体制が復活しました。 4月に恒例の新2年生歓迎コンパ、7月に前期お疲れさま会。9月には2年ぶりの課題研究・夏合宿を「木の研修施設」(七城)で行ないました。12月にキリタンポ鍋(4年生卒業論文激励会)、忘年会、1月には卒業論文・課題研究お疲れさま会と、研究室恒例の行事で盛り上がりました。 学生が自主的に決定している課題研究の今年のテーマは「衝突」。水泳をめぐる思想的衝突や国会議事堂建築をめぐる衝突、はたまた徳富蘇峰・蘆花兄弟の衝突や「悪」との個人的衝突など、それぞれ個別テーマを設定しレポートにまとめました。新井先生の演習で取り組んだのはナショナリズム研究、鈴木先生の演習では福沢諭吉です。12月には西洋史・文化史共通の集中講義で星乃治彦先生(福岡大学)からドイツを中心としたジェンダー等の歴史を学びました。4▲日本史研究室合宿(小国町)▲対馬市越高遺跡での発掘調査風景▲若手部会の1コマ(熊本大学開催)▲アジア史研究室合宿(天草有明町)▲2017年課題研究・夏合宿(七城)歴史学科

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