文学部通信17号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~総合人間学科■哲 学     松本 大雅さん(3年) いま学んでいるのは、おもに認識論と存在論です。認識論は、世界をどうやって私が認識しているのかを、存在論は、存在するとはどういうことかを考える領域です。本履修モデルでは、はじめに哲学の基礎的な考え方を学ぶ「哲学概論」を受講した後、論証形式について学ぶ「論理学」、ゼミで文献を読む「哲学演習」などを履修します。 一年を通して私が感じたのは、疑問を抱くこと、そしてその疑問を問い続けることの難しさです。哲学の文献を読むとその著者の人となりや性格といったものを感じます。哲学では問いが根本的であればあるほど、またその人にとって避けられない問いであるほど、困難さに突き当たるので、その人物の格闘を自分が追随して体験するような錯覚を感じます。私は課題研究でヴィトゲンシュタインが視野について書いた文章を扱っています。難しい文章に度々直面しますが、根気強く挑んだ経験は社会で評価されるものだと信じます。■心理学    井立田 茉乃さん(3年) 心理学研究室の魅力は【個性と助け合い】です。心理学のメンバーは個性豊かで、興味のある分野は全く違い、各自専門的に知識を吸収しています。その一方で、各人の実験の被験者になったり、違う視点からのアドバイスを行ったりして、助け合っています。先生や先輩、院生の方々も親身になってアドバイスをくださる環境で、授業がない日も研究室に集まって個人の勉強をしながら助け合って学んでいます。 授業では、日本語の論文から英語の論文まで数多く読み、認知心理学の現状や実験方法を学び、わかりやすく発表できるように理解を深め、専門知識を増やしています。さらに先行研究から得た知識を実践的に応用して、自分で実験を考え組み立て、データの分析も行っています。 自分の興味のある分野を深め、個人の勉強に疲れたら個性豊かな仲間たちに刺激をもらっている日々です。今後はさらに個人の分野の研究を深め、切磋琢磨し和気あいあいと認知心理学の世界を探求していきたいです。■芸術学   木佐貫 朝菜さん(3年) 芸術学研究室では、個性豊かな仲間が集い、音楽や美術など幅広く芸術を学んでいます。興味のある写真家について発表を行ったり、実際に演奏の場を体験したりするなど発信型の授業が多く、芸術を多角的に学ぶことができるのが魅力的だと思います。  研究室の活動で最も印象深く感じているのは、子飼商店街で行われているコミュニティ音楽療法の実習です。参加者の方々と昔懐かしい歌を歌ったり、ときには小芝居、ゲームを取り入れたりして、音楽療法のあり方や参加者との関わり方などを、楽しみながら学びます。12月には、セッションの成果を発表する「レトロコンサート」を行いました。本コンサートでは、学生が中心となり、企画・立案、運営にあたります。自分たちの頭に描いたものを形にしていくという作業は、簡単なものではありません。しかしその分、参加者の方々のいきいきとした笑顔や、かけてくださる温かい言葉に心から感動しました。仲間たちとひとつのものをつくりあげる経験をしたことで、絆も深まったように感じます。 来年度はこの1年で学んだことを活かし、さらに深く、興味のある分野について研究を進めていけたらと思います。■社会学      東 大貴さん(3年) 社会学は、様々な社会現象に目を向け、そのメカニズムを解明していく学問です。ここでいう社会現象には誰もが当たり前だと知っていることも含まれます。例えば、普段何気なく交わしている「挨拶」から社会問題となっている「自殺」に至るまで、あらゆる事象が社会学の研究対象となり得るのです。 私は社会階層、そのなかでも学歴について研究しています。産業化の遅れた日本では国民の教育水準を高めることによって、その遅れを取り戻そうとしました。そのため産業が発達するよりも前に学校教育が始められ、学歴に高い価値が与えられました。現在、そうした学歴は、人々の間に格差を生み出し「正規の格差生成装置」として機能しています。このように我々の社会の仕組みを紐解いていくことが社会学の醍醐味であると思います。 私の所属するゼミでは、笑顔の絶えないメンバーたちとともに、中川輝彦先生の優しくきめ細やかなご指導を受けることができます。そうした環境で社会学を学ぶことで、新たな視点や考え方を身に付けることができました。これからも適度に遊び、学問研究に尽力して参ります。■倫理学     山本 知佳さん(3年) 倫理学は人間の行動の規範となる物事の道徳的な評価を理解しようとする学問です。倫理学履修モデルでは、ディスカッションや講義を通して多様な倫理学の理論を学ぶことができます。私の所属するゼミでは、規範倫理学と応用倫理学という分野が中心となっています。この分野に完全に即していなくても、倫理学の立場から自分の興味があることを研究することができます。私は芸術作品の展示・発表における倫理について研究しています。また、ヘイトスピーチに表現の自由が認められるかということを研究するゼミ生もいます。先生方からはレジュメ発表などを通して、研究の方向性や必要な視点について助言していただいています。ゼミでは毎週、自分の研究分野について発表しています。他のゼミ生の発表を聞くことで新たな視点を得て、自分の研究にも生かそうと思うことができます。3年生になって、学生同士や先生と議論する場が増えました。倫理学についてより専門的に学べるようになり、ただ授業を受けていたときに比べて理解が深まったと思います。■文化人類学  高貝 尚伽さん(4年) 文化人類学とは、「文化」を媒介としフィールドワークやエスノグラフィーによって様々なものを比較・考察することで多様性について理解を深める学問です。 私の所属するゼミでは、各々が興味のあることについて自由に研究しています。研究テーマは、四国お遍路、レヴィ・ストロース、ゲド戦記、変身、贈与論など多種多様であり、フィールドワークのために海外へ行かれた方もいます。また、映画を観たり、珍しい料理をみんなで作ったりするなど楽しいイベントも行いました。研究に必要なことだけではなく、直接関係ないことでも、興味があれば積極的に取り組ませてもらえるようなのびのびとした雰囲気のゼミだったからこそ、本当に様々な経験ができました。 これまでのゼミでの研究や経験を通して、私にとっての文化人類学とは、自らの人生の選択肢を広げるために今までは触れたことがなかったものに触れ、新しい気づきへと導いてくれるものだという見解を持つことができました。大学に入学するまで馴染みのなかった文化人類学に対して、自分なりの見解を持てたことはとても価値のあることだと思います。■地域社会学  別府 佳菜子さん(4年) 地域社会学は、現実の地域の具体的課題について学ぶ学問です。人びとを「鳥のように空から見渡す」のではなく、「虫のように草むらから観察する」のが地域社会学の特徴であるため、直接住民の方に聞き取りする方法もよく用いられます。本研究室でも調査実習において、この聞き取り調査を体験できます。私も実習の経験を活かし、卒業論文のための調査を行いました。また、地域社会学研究室では、少人数であること、調査で数日行動を共にすることなどにより、先生方、学部の先輩・後輩、大学院生、留学生という様々な立場の方と、勉強だけでなく、人としての深い繋がりを持つことができます。 この1年間は「地方高齢者から見た老いと生活」というテーマの卒業論文作成に取り組みました。先生方のご指導や、同じゼミナール生からのアドバイスにより様々な側面から自分の問題関心を見直すことができましたし、そして何より調査に協力してくださった住民の皆様のおかげで、拙いものではありますが、無事に地方高齢者研究を行うことができました。■地理学    安齋 公隆さん(3年) 地理学研究室では、クールで穏やかですが熱烈なホークスファンの鹿嶋先生と、お姉さんのように僕のくだらない相談にも乗ってくださる米島先生の下で活動しています。留学生が多く、幅広く様々な関心を持った個性的な人がたくさんいるのが、この研究室の魅力です。 この一年を振り返ると、地理調査実習では、2年生や院生と一緒に宮崎県の日南市を訪れました。私の班では商店街の再生事業について調査しています。実習では現場での調査の経験値を積むことができました。一方的に後輩との絆の芽生えも感じました。そして、現在行なっている調査報告書作成作業では、地理学を通じた考え方や表現方法を養えていると思います。 ゼミでは、自分の関心に基づいて先行研究を紹介してきました。その上で、先生方の的確できめ細かなアドバイスを受けながら、自分の研究テーマを具体化していき、現在は卒業論文の構想発表へと繋げています。 地理研に入ってから、様々なことに地理学というフィルターを通すことで新たな発見ができたり、研究室の先生や仲間からたくさんの刺激を受けながら過ごせていて、とても感謝しています。■民俗学     塩屋 拓海さん(3年) 民俗学の醍醐味は、多種多様なフィールドに自分の意思で自由に飛び込めることにあります。 私自身もこの1年は、しょうゆ産業の実態と将来像を明らかにするため、製造工場を訪問したり、実際にしょうゆを作ってみたりして研究に励んでいました。他にも各人が個性を存分に生かして研究を行っています。雨乞い大太鼓や金魚について、現地調査等を交えて深く突き詰める人もいれば、地元の祭りに参加し調査する人もいて、さらには日本の映画作品と落語を結び付けてしまう人までいます。ゼミではそんな個性豊かなメンバーが日々、活発に議論を交わしています。そして先生方も親身になってご指導くださる上に、中学校でのワークショップ等、貴重な体験を数多く提供してくださります。 民俗学研究室ではイベントも盛んです。今年も東北の文化である芋煮会を開催し、教授・学生の壁を越えて大いに盛り上がりました。 数多くの実践的体験を経て、私を含め皆が、幅広い見識を得られ、成長できたと思います。文学部通信 第17号3

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