文学部通信16号
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■総合人間学科         松下 奎さん(4年) 昨年、本学の交換留学制度を利用し、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州のガジャ・マダ大学に留学した。向こうの大学では語学講座、講義の受講を中心に、インドネシアの伝統芸能の研究を行った。とはいえ、研究といえるほど深い活動には至らず。その手前も手前。どちらかというと「お勉強」というのがふさわしい活動。たとえば、わけもわからないままひたすらに芸能を観覧したり、図書館で散々迷いながらようやく基礎的な文献を入手したりしてるうちに、あっとういう間に一年が過ぎた。 ジョグジャカルタはかつての王宮が置かれていた都市で、多数の文化遺産が遺っている。郊外にあるボロブドゥール寺院遺跡やプランバナン寺院遺跡が有名だ。遺跡だけではない。ジャワの伝統的な工芸、芸能もまたここで保存、継承されている。毎週市内のどこかで工芸の講習や芸能の公演が行われている。大学での勉強のかたわら、それらの活動に参加することで息抜きをしていた。 一番気にいったのはワヤンという人形芝居だ。毎月王宮広場で公演が行われる。留学期間中は毎月その公演に通った。なかなかハードだ。公演は夜の九時に始まり、そこから八時間ほど演目がつづく。博物館などでは短縮されていることが多いが、本式のほうは夜から朝までぶっつづけだ。また語り手はジャワ語で謡う。ジャワ語とインドネシア語は多少単語が共通しているものの完全に別言語だ。インドネシア語しか勉強していなかった私には内容はさっぱりだった。 自ずと人形の動きにだけ集中することになる。本当に不思議なことだが、それでも三時間くらいたつと各人形が登場する場面、語り手の調子、動きの特徴づけなどの要素から逆算して、おおまかなお話の内容が理解できてくる。   よくよく考えると人形芝居なのだから人形の動きに集中すればよい。そもそも人形の動きが何かを伝えているはずだ。語り手の言葉が聞きとれないからといってくよくよすることが倒錯だ。言葉が通じない、理解できない状況に終始ノイローゼ気味だった私は、ワヤンの公演をみるたびにそのことを確認し一息ついていた。 そして明くる朝。また言語的つまづきに撃沈する。そんな日々だった。短いがこれが私の留学体験である。 ■文学科          志水 鈴奈さん(4年) 私はイギリスのリーズ大学で約10ヶ月間交換留学生として様々なことを学ぶことが出来ました。リーズは大きく、大学もいくつかあって学生都市のようでした。留学したいと思うようになったのは高校生の時で、海外で働いていたことのある女性と出会い、その時の経験を話してくれる様子があまりにきらきらして見え、自分もこうなりたいと思ったことがきっかけです。 リーズ大学では心理学や音楽を始め、初めての分野ばかりを学びました。毎回授業前に参考文献を読んだり、授業内容を予復習するのは大変ではあったけど、そのおかげで授業でわかることも増え、その度にもっと頑張りたいと思えました。また、リーズ大学の学生は図書館では空席を探すのが大変なくらい勉強をしていて、その姿がさらに私に良い影響を与えてくれました。 私自身の成長した点として、留学する前に比べて何事においても考え方が柔軟になり、好奇心が増したと思います。留学から帰ってきて友人に「オープンマインドになった」とも言われました。この変化は異文化交流のおかげだと思います。授業やイベント、ボランティアを通して、様々なバックグラウンドを持った老若男女の人々と関わることでより異文化について考えさせられました。異文化交流にはずっと興味がありましたが、実際は想像よりも大変で、戸惑うことばかりだったけど、違うからこそ私もみんなも理解しようとし、自分の中に取り込もうとしていました。また、今まで出会ったことないような人たちとたくさん出会い、その中で自分の知らない世界をどんどん知っていくことが、自分の常識が相手にとっては初めての体験だったりすることがとても楽しく、そこから想像以上のものを得ることができたと思います。このような貴重な経験ができたのも家族を始め、相談に乗ってくれた友人たち、様々な面でサポートしていただいた大学の先生方や職員の皆様方のおかげであり、心より感謝するとともに、さらに成長していきたいと思います。■歴史学科           伊東 愛さん(3年) 年が明け、いよいよ就職活動が目前に迫ってきた1月。私は、二つのインターンシップに参加させていただきました。それが、熊本銀行と翔薬という医薬品商社でした。 熊本銀行では、銀行の基礎を学ぶ講義をはじめ、業務の疑似体験や行内の見学など、2日間という短い時間でありながら非常に多くのことを体験しました。私は以前より、金融業界に興味を持っていましたが、その理由というのは自分自身はっきりしていませんでした。自分はなぜ金融業界を志望するのか、銀行のどのような業務を通してどのように地域に貢献して行きたいのか。もやもやと自分の中にあったこうした疑問が、今回の様々なプログラムを通して明確になりました。 次に参加したのが、翔薬です。私ははじめ、この業界には全く興味を持っていませんでした。しかし、偶然聞いたインターンシップの説明会で「こんな仕事もあるのか」「もっと詳しく知りたい」と思い、参加することを決めました。翔薬では、業務の内容を学ぶだけでなく、自己分析のお手伝いまでしていただきました。医薬品卸とは、一軒一軒の病院、患者様のニーズにあわせて商品やサービス、情報を提案するというお仕事です。医師や看護師としてだけでなく、このような形でも人の命のサポートができることを知り、視野が広がる大変貴重な機会となりました。 それぞれ参加した目的は違いましたが、どちらも私にとって大きな収穫となりました。さいごに今回インターンシップに協力して下さった熊本銀行、翔薬の方々に感謝し、体験記とさせていただきます。■文学科          兒玉 一輝さん(3年)  熊本大学ではキャリア支援の一環として、様々な業種の社会人から話を聞く機会が設けられます。私はそのような機会を通して話を聞くうちに、社会人の方の語る仕事に対する姿勢に対して疑問を覚えるようになりました。 学内で話を伺った社会人の方々は、仕事に誇りをもって取り組んでいました。しかし、その誇りを持つことが出来る理由、つまり仕事に対する意識は何に依拠しているのかが私には伝わってこなかったのです。新しい視点から仕事について考える機会が欲しいと思い、私は大学三年生でのインターンシップに参加することにしました。 私が参加した日本生命のインターンシップは5日間にわたって行われました。前半で保険の仕事や業界の現状について説明を受け、後半では2班に分かれて、架空の顧客の情報に合わせて保険のプランを考えるワークを行いました。 強く印象に残っているのは、一日目に伺ったお話の中にあった「私たちは他者の仕事によって生まれたもので生きている。世の中に恩を返すために仕事をする」という考えです。仕事について「金稼ぎの手段」「自分が好きな分野を発展させるための行動」という考えを持っていた私にとって、その考えは新鮮なものでした。仕事に対して「これまでお世話になってきた社会に貢献している」という意識を持つことは、自身の就職のみならず世の中のほかの仕事に対する見方を変えることにつながりました。 社会人として経験を重ねている方の近くで、その仕事の一部を垣間見ることができるインターンシップは、代えがたい経験を得ることができる良い機会だと思います。 人生で最も濃いリーズでの10ヶ月間 インドネシアのガジャマダ大学に留学文学部通信 第16号7留学体験記インターンシップに参加して留学体験記インターンシップに参加して

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