文学部通信16号
6/8

文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2017年3月1日発行 希望に燃えて入学者32名(当学科)を迎え、授業開始後ちょうど一週間で、熊本地震が起こりました。熊本地震で被災された学生とご家族の皆様にお見舞いを申し上げます。 コミュニケーション情報学科では、県外からの学生も多く、彼らの多くは14日の最初の大きな揺れのあとで実家に戻り、16日未明の本震自体は経験しないですんだ学生も多かったようです。一方で、下宿で本震も経験し他の学生と肩を寄せ合って避難所にいった学生や、その後避難所運営や復興のボランティアに関わった学生、実家で家族と共に被災し影響を受けた学生などもいました。 約3週間の地震による休講を経て、授業を再開しましたが、遠方に住むご家族は、まだ余震の続く中でお子様を熊本に戻すにあたり心配もあったと思います。学生のご家族の皆様には、この困難の時期の1年の教育活動を直接間接的にご支援くださりましたことに、心から感謝を申し上げます。そして何よりも、教職員・学生一同力をあわせて、この1年を乗り越えてくることできましたことに感謝をしております。■地震と暑さにも負けず、勝ち取った就職。 結果的に地元志向に。 就職活動の解禁時期が毎年変動する中、今年の解禁は夏。やっと余震も落ち着いてきたかと思ったころの暑い戦いとなりました。2017年2月23日時点での就職決定率は90%となっています。26名の就職決定者のうち、4名が公務員(うち1名が国家公務員、うち1名が警察官)、それ以外の22名が企業就職となりました。 企業就職を業種ごとで見ると、「金融業」「電気・情報通信機械器具製造業」が最も多く、3名ずつ、それ以外では、「はん用・生産用・業務用機器具製造業」「医療業・保健衛生」が2名ずつとなっています。職種では、事務従事者(総合職含む)が12名、販売(営業含む)が10名、と多くなっています。赴任先の地域別でみると、2月23日時点で赴任先が決定している21名のうち、熊本県内が7名、九州全体では13名、東京・神奈川・大阪が合計8名となっています。九州圏内への就職が多いというこの傾向は、例年と同じものとなっています。 地元企業や自治体への就職が多いことは、グローカル教育(グローバルかつローカル)を掲げる熊本大学としては、ローカルの側面では好ましいことであります。しかしグローバルという側面では、同学科は英語によるコミュニケーションの教育に力を入れ、留学者も多く輩出していると考えると、外資系企業への就職や海外留学といった進路を選ぶ学生も、将来はもっと出てきてほしいと期待しています。■日ごろから楽しく修練し海外にはばたく コミュニケーション情報学科は、英語によるコミュニケーション力の増強とそれによる国際的に活躍できる人材の育成に力をいれています。今年度も、英国のリーズ大学(1名)、同ダラム大学(3名)、豪のニューカッスル大学(1名)に合計5名が留学し、そのうち、3名が文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」の留学生として、留学費用の給付を受けています。 このような長期留学の準備として、同学科では、公式の授業としてネイティブの教員による英語での授業のほか、学生による自主的な英語勉強会である「TOEIC勉強会」を、平野教員の指導のもと続けています。特に今年は、例年の週1度程度の定期勉強会に加えて、TOEIC公開テスト前の集中特訓を実施しました。合計7名が9月の公開テストを受験した。本テストでは、900点以上1名、850~895点2名、800~845点3名、750~795点1名という好成績を残すことができました。 この「TOEIC勉強会」は、自らが英語力をつけることを目指すだけでなく、高校生に対する出前授業をすることで「指導する力」の育成も行っています。コミュニケーション情報学科卒で以前のTOEIC勉強会参加者が勤務している大分県立臼杵高校で、昨年に引き続き、今年も大学生による出前授業に行かせていただきました。授業では、勉強会の学生たちが制作したオリジナルテキストを用いて講義を進めていきます。学科教授のアドバイスを受けながらテキストの制作にも取り組み、それを用いて指導実践をする体験は、英語を学ぶ喜びを分かち合い伝えていく貴重な体験となっています。 またこのTOEIC勉強会では、学生の自主企画を大学が財政支援する「きらめきユースプロジェクト」を受け、オリジナルグッズを学生が企画し制作するということを行っています。グッズの配布を通して熊大の活動のPR実践を行うなど、広告等のパブリック・コミュニケーションの研究にも力を入れる同学科の教育実践ともなっています。 ■熊本地震や水俣病60年など、地域の課題 に取り組みながら学ぶ実践力 地域志向型教育や地域貢献活動も今年も引き続き熱心に行いました。江川教員ゼミで地元流通業を代表する鶴屋百貨店との連携でおこなっている「スコラチエロ(イタリア語で『空の学校』の意味)」は、イベント制作を通じた百貨店でのマーケティング実践です。幼児のいるファミリーをターゲットとしたマーケティングおよびブランディング活動で、百貨店のスタッフとともに学生自身が企画を考えイベントや広告メディアの制作をします。地震の影響で当初予定のイベントは中止を余儀なくされましたが、10月に再開し、地震後の最初の活動としてハロウィーン特別イベントを制作、その他、名作童話を題材とした幼児向け英語アクティビティ・イベントをおこなっています。 江川教員ゼミでは、被災の激しかった益城町でも、被災地支援を兼ね、ワークショップを通じたタウン誌制作を地元の子どもたちと行いました。タウン誌制作を通じて地震で今までの学びの場を失った子どもたちが自分を表現する楽しさを味わって技術を身につけてほしい、という思いで夏休みに開催したものです。子どもたちが記者で編集者となる、「We Love Mashiki」をテーマにタブレットやパソコンを使って紙面を作成するワークショップなど、学生たちは、ここでも、大手出版社の有志メンバーと連携し本格的な印刷物に仕上げています。ボランティアを通じて、本格的なメディア制作の実務の知識やノウハウを学ぶ機会となりました。  また、石原教員による「コミュニケーション情報学特別講義B」では、今年は、水俣病公式確認から60年ということで、水俣を訪ね、水俣病患者や家族の方や地域の行政の方など、水俣病の問題と向き合い地域再生をリードしてきた方々にお話を伺うというフィールドワークの授業を行いました。熊本県出身者で小学校5年生の時に水俣病学習で水俣を訪ねたことがあった学生もいましたが、大学生になり、子どものときとは違う形で水俣病問題の複雑さを理解する機会となりました。不正義と不条理の中から希望を切り開いてきた語り部の方々や水俣のリーダーが、人生をかけて話してくださる一言ひとことを伺う中で、表面的ではない人としての誠実で深いコミュニケーションとその裏にある人としての生き方を学生も受け取ったと思います。6コミュニケーション情報学科▲出前授業の様子(写真は昨年度)▲益城で制作したタウン誌

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る