文学部通信16号
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 文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2017年3月1日発行■アジア史学 平成28(2016)年度のアジア史研究室は,4月に新たに進級した2年生を迎え,相変わらず小規模ながらも個性豊かな研究室として船出しました。今年度の事件としましては,やはり4月の熊本地震を振り返らなければなりません。アジア史研究室でもたくさんの書籍が落下するなどの被害が出ましたが,4年生たちがいち早く書架にビニール紐を張って二次被害を防止してくれたのが頼もしく思われました。 また昨年度から引き続き,中国の安徽大学との活発な交流も行われました。5月に伊藤正彦先生と小林が,原田信志学長らとともに安徽大学に学術交流のために赴いたほか,10月には安徽大学からの博士課程の学生1名が,アジア史研究室の研究生として加わりました。半年間の滞在ですが,筆談を交えながら両国の文化について歓談するなど,学生にとっても大きな刺激になっているようです。今後も海外との交流を一層深めていきたいところです。 さらに特筆したいのは,9月に高知大学から大櫛敦弘先生をお招きし,集中講義を行って頂いたことです。普段聞くことのできない貴重な講義に,学生たちも真剣に取り組んでくれたようです。とくに2年生はこれから自分の研究テーマを考えなければならないため,とてもいい機会になったのではないでしょうか。 来年度のアジア史研究室は,現2年生が中心となって運営していくことになります。今年身につけた知見をもとに,新2年生とともに活力ある新たな研究室を作り上げてくれるものと期待しております。■考古学 2016年度は2年生4人、大学院修士課程2人を迎えました。3年生5名、4年生6名、大学院修士2年1名、研究生1名を合わせ総勢で19名となります。新体制となり、意気揚々と、新学年がスタートして間もなく、熊本地震が発生しました。それぞれ実家に戻ったり、避難所での避難生活を送りましたが、全員無事で5月からは授業に復帰しました。今年度の夏の発掘調査実習は9月10日より10日間、昨年に続き、長崎県対馬市に所在する越高遺跡で行いました。昨年度の調査で十分に把握できなかった韓国新石器時代の隆起文土器の層位的な出土状況や遺跡の形成過程の解明のため、遺物包含層を掘り下げ、多数の遺物を得ることができました。発掘調査はもちろん、1月現在、その層位的出土状況の検討や土器型式の年代観の分析のため、院生2名を中心に、3年生や2年生が必死に報告書作成のため日夜頑張っています。また、本年度は、発掘調査が終了した後、遺跡を残した韓国新石器人たちの足取りを探るため、韓国釜山市への研修旅行を行いました。韓国を初めて訪れる人ばかりでしたが、著名な東三洞遺跡や釜山市立博物館を訪ねることができ、おいしい韓国料理とともに、充実した旅行となりました。これ以外に、8月の最終週には杉井先生率いる上天草市の大道鬼の釜古墳の測量調査が行われ、多数の学生が合宿しながら、測量技術の腕を磨きました。また、5月には先々代の主任教授であった白木原和美先生の米寿をお祝いする祝賀会を熊本市内の料亭で開催し、先輩方も多数参加いただき盛会となりました。なお、今年度の集中講義は、新潟大学の白石典之先生にご出講いただき、モンゴルや中国東北部の考古学について学びました。思わぬ災害に心を痛めましたが、人とのふれあいの大切さや学ぶことの楽しさを実感した思い出深い一年となりました。■西洋史学 本年度は、個性溢れる新2年生10名を迎え、研究室は総勢36名の大所帯となりました。4月の大地震のため、少なくとも1カ月間は勉強できる環境になく、卒論・修論に取り組む4年生・院生にとっては、大変な1年であったと思います。しかしそのハンディキャップを見事に乗り越え、なかでも11月末に福岡で行われた九州西洋史学会・若手部会では、院生の益田太樹君、4年生の塚本尚哉君、永島早紀さん、奈須俊樹君、平方悠介君が、それぞれ素晴らしい研究報告を行い、参加した他大学の学生や先生方からも、「熊大生の報告が一番面白かった」「熊大生の研究発表の水準は本当に高い」という非常に嬉しい評価を沢山いただきました。今年度の院生・4年生のがんばりは、『西洋史研究室年報 第18号』(2017年3月刊行)につづられる予定です。7月には、地震後初のイベントとして、天草で恒例の夏合宿が行われました。例年以上に多くの学生が参加し、夏の海とバーベキュー、そして温泉を心ゆくまで満喫しました。10月にはオクトーバーフェストを開催し、世界各国の様々なビールと学生手作りのドイツ料理、そしてチーズフォンデュを楽しみました。海外での活動としては、院生の益田君が国際奨学事業に採択され、9月にアメリカのニューオーリンズとニューヨークにて、20世紀初頭の黒人ボクサーの軌跡をたどる史料収集を行いました。今春2月末には、ヴェネツィアやヴェローナを訪れるイタリアでの海外研修旅行が行われる予定です。以上が研究室の活動報告ですが、最後に、大地震直後の最も支援が緊急性を帯びていた10日間、西洋史研究室の多くの学生が、熊大体育館に避難した学生・留学生・一般市民の方々のためにボランティアとして献身的な活躍をしたことを、ここであらためて記しておきたいと思います。■日本史学 今年は15名の2年生を研究室に迎え、総勢39名(大学院生1名含む)となりました。熊本地震により当初予定されていた行事は延期や変更となり、例年、3年生が参加する通称「古文書合宿」は学内でおこなうことになりました。甲佐町の地方資料群に5日間向き合い、学生たちには史料の取り扱いはもとより、古文書が伝える内容を正確に読み取る大切さを学ぶ機会となりました。文字通りの悪戦苦闘しながら地方文書に向き合っていましたが、次第に慣れてきたのか、読めなかった文字も減ってきてお互い教え合う姿も見られました。期間中、甲佐町へフィールドワークに行き、実地踏査の必要性を学ぶことができました。9月の研究室合宿では、今年は九重の研修所で行いました。3年生が明治22年の熊本地震、2年生が中世村落支配をテーマに報告し、夜はバーベキューで親交を深め、意見交換に花咲きました。翌日は中世史・近世史・近代史にわかれ、4年生が卒業論文で取り上げているテーマで発表しました。11月には卒業論文の中間報告を行い、4年生はお互い切磋琢磨し、2~3年生は今後の参考にしているようでした。今年は、熊本地震によりいつもと違う環境に置かれましたが、研究室所属の学生たちも積極的にボランティアに参加し、歴史学科に所属する学生だからこそできることを各自考えて行動していました。この経験を糧にして今後も頑張っていって欲しいと思います。■文化史学 2016年度は、2年生8人、3年生1人(転分野)が研究室の仲間入りをしました。3年生が合計で9人、4年生が9人、全部で26人です。熊本地震の影響で、例年4月の新2年生歓迎コンパは5月に延期され、研究室対抗バレーボール大会は開催されませんでした。9月には夏合宿の予定でしたが諸事情から中止。課題研究中間発表会に切り替え、熊本市民会館(シアーズホーム夢ホール)において二日間連続で行ないました。12月には4年生卒論激励会、忘年会、1月には卒論・課題研究お疲れ様会と、研究室恒例の行事で盛り上がりました。 学生が自主的に決定している課題研究の今年のテーマは「崩壊と刷新」。国内外の様々な問題を、「崩壊」と「刷新」の観点から議論し、各自レポートをまとめました。「世界システム史演習」と「文化史概説I」は、昨年に引き続き学外からお招きした塚本晋先生と河西英通先生にそれぞれご担当いただきました。塚本先生の演習で取り組んだのは丸山眞男の思想、河西先生の概説で学んだのは、日本近代思想の歩みです。新井先生の演習では、カルチュラル・スタディーズが取り上げられました。4月には小松先生の後任として日本近代思想史ご専門の先生をお迎えしますので、2年間一人で指導していた新井先生もほっとしています。4▲安徽大学からの研究生とアジア史研究室▲釜山市影島の太宗臺展望台にて(2016年9月24日)▲2016年課題研究・夏合宿▲天草の夕日に感動しながらバーベキュー(7月夏合宿)▲2016年課題研究中間発表会・打ち上げ旅行(天草)歴史学科

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