文学部通信16号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~総合人間学科■芸術学   田代 萌佳さん(3年) 芸術学研究室では、音楽や絵画など、様々な分野から芸術に関することを幅広く学ぶことができました。演習では自分の関心のある作曲家や写真家について文献をもとに研究発表を行い、毎週のゼミで先生方と議論を重ねてきました。また、私たち自身がステージに立ち、“演奏をする”ということの意味を考える実践型の授業もありました。 中でも、最も印象深かったのは、大学近くの子飼商店街で月に2回行われているコミュニティ音楽療法の実習です。この実習では、地域に根付き、開かれた音楽療法を目標に、準備や片付け、セッションのサポートをしています。参加者の方々と四季折々の歌を一緒に歌ったり、歓談したりする中で、コミュニティの課題や音楽療法のあり方など多くのことを学べて、とても魅力に感じています。12月には、日ごろのセッションの成果を発表するコンサートをパレアホールで実施しました。大きな会場でのコンサート企画・運営はほとんどの学生にとって初めての経験でしたが、終演後には、参加者や見に来てくださった方々から感謝の言葉をもらえて、とてもやりがいを感じ、感動しました。 この一年で演習や実習を通して芸術学に関する理解を深めることができ、とても有意義な時間を過ごせました。来年度は先生方や研究室の楽しい仲間たちと、卒論完成に向けて興味のある分野について積極的に研究を進めていきたいです。■社会学     松島 美希さん(4年) 社会学とは、私たちが生きているのはどんな社会か、を探る学問です。たとえば日本における昨今の貧困や非正規雇用、地域格差や教育格差、未婚化や少子化、ジェンダーなどをめぐる問題から、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ現象、世界各地の移民問題まで、国内外を問わず社会のありとあらゆる事柄が対象です。 私の所属ゼミでは、個性溢れるメンバーとともに、そうしたあらゆるテーマに関する文献を読み、議論しています。毎年合宿も行っており、今年度は天草諸島を訪れ、からゆきさん(明治以降にアジア各地へと「身売り」した若い女性たちのこと)の足跡を辿り、日本の近代化のあり方について考えました。 卒業論文では、沖縄の米軍基地をテーマに選び、現地(普天間や辺野古、嘉手納など)でのフィールドワーク、さらには東京でも外交資料を集め、なぜ沖縄に基地が集中しているのかを明らかにしました。論文は約13万字にもなり、 苦労も多くありましたが、大変やりがいもあり、貴重な経験となりました。■地域社会学  原口よしのさん(3年) 地域社会学研究室では毎年、様々な地域にて調査実習に取り組んでいます。今年度は熊本県牛深市にて、雑節産業についての聞き取り調査を行いました。質問の内容は、家族構成や雑節づくりの道を選んだ契機、作業過程でのこだわり、そして「怒られた話」など他者とのエピソードです。調査報告書の作成に当たって、人同士の関わり合いの話を聞き出すことが最も重要です。なぜなら読み手は、経験談から具体的にイメージし、身近なものと捉えられるからです。老若男女問わず地域の人々と関われることは勿論、調査方法を身をもって学ぶことができる点も調査実習の魅力の一つだと言えます。 ゼミでは文献を読み進めながら、各テーマについて議論します。扱う内容は家族や都市コミュニティなど地域社会に関すること全般で、先生と学生との距離が近いため、得られるものは濃く大きいです。 今後も新たな地域や人々との出会いを大切に、学びを深めていくことができればと思います。■地理空間学   山本 ういさん(3年) 地理研の魅力は雰囲気です。穏やかでお酒が強い鹿嶋先生と、お姉さんのような存在の米島先生。そして楽しい先輩方、様々な年代の院生、留学生、また他研究室の人や後輩も出入りする、ごちゃごちゃした面白い雰囲気の研究室で過ごしています。 ゼミでは自分の興味に合わせて先行研究を紹介してきました。様々な研究テーマの中で地理学的な視点や手法がどのように現れているのか学びつつ、論文を要約する力、自分なりに批評する力、分かりやすく伝える力、そして何かしら発言する力を身に付けたと思います。 地理調査実習では2年生とともに鹿児島県の甑島を訪れて、移住・交通・農業の3テーマを研究し、現在は報告書をまとめています。少人数、学生主体の作業で、個々の能力を存分に発揮しなければならず、後輩からも刺激を受けながら鍛えられています。 自分の個性、経験や問題意識に基づいて、どんなテーマでも研究できる地理学と、地理研で豊かな個性を守っている仲間たちを非常に気に入っています。今後は卒業論文制作に向け、今まで以上に様々な経験に揉まれながら頑張っていくつもりです。■認知心理学   黒田 尚輝さん(3年) 私は、この一年間、人間の認知機能について学んできました。認知心理学研究室では、主に実験や論文抄読などの演習を通して人間の認知機能について学ぶことができます。実験では自分たちが実験者と被験者を兼ねることで実験者と被験者という双方の視点から実践的に学ぶことができました。また、実験によって得られたデータに統計的処理をして分析することで実験結果について客観的に判断する力も培うことができました。論文抄読では、数多くの論文に触れることで最近の認知心理学の研究では何が問題とされているのかということを知ることができ、研究の方法や結果について詳しく学ぶことができました。 私は、先生方からご指導していただき、また先輩方からアドバイスをいただけたことで、認知心理学への理解を深めることができました。今後もさらに知識を深めることができるように尽力していきたいと思います。■認知哲学     方志 桃香さん(4年) 認知哲学では、心・知識・言語の3つの観点から心と世界の関係を哲学のやり方で考えています。心とは何か、知るとはどういうことかなどについて学び、考えることができます。認知哲学履修モデルの授業には、哲学の基礎的アプローチを学ぶ「哲学概論」をはじめとし、論理的な考え方を学ぶ「論理学」や、一つの文章を読み、先生とともに少人数でその内容について議論する「認知哲学演習」などがあります。 私はこの1年、「感情の言明・認知における一人称権威」をテーマに卒業論文に取り組んできました。先生との一対一の面談による指導で、論文を書き進めるうちに直面した疑問点等をひとつひとつ解決することができました。私自身、認知哲学履修モデルで学ぶうえで最も大切なものは、「粘り強く考える力」だと思っています。そしてこの力は大学生活においてのみならず、社会に出てからも必ず役に立つものだと確信しています。■文化人類学    中原 浩基さん(4年) 文化人類学研究室では書物や映像メディアによって表現される民族誌を読み、ゼミ生や先生と議論して考えを深めます。またフィールドワークやエスノグラフィーという言葉が強調されます。これらはインタビュー、観察や資料採取など様々な経験をする調査の総称です。さらに他の研究室の学生と交流をしています。 現在文化は一か所に留まらずに常に変化して、様々な文化が相互に影響を与えています。私は研究室で文化との関わりを考える機会ができました。研究テーマはマンガの擬音語・擬態語の翻訳の壁についてです。マンガの海外進出やマンガの中の言葉を翻訳する上での困難について調べました。そこからマンガと海外のファンとの関わり、マンガと言葉の関係について学び、今まで注目してこなかったマンガの中の擬音語・擬態語について多くの発見をしました。その分析から自分に新たな視点が入ってくるのは楽しく、文化人類学を学べてよかったと思っています。■民俗学    宮崎 康平さん(4年) 民俗学研究室では2年次の調査実習でフィールドワークを行います。今年は人吉球磨と天草の二手に分かれて実際に地域を歩き、その土地の方々に聞き取りをしながら調査を進めていきました。 3、4年次から取り組む卒論のテーマは自分たちが興味のあるものを自由に選択しています。今年の卒論のテーマは人吉のおくんち祭、下関の森神信仰、TVゲームの変遷、ペットとしてのうさぎ、大分の吉四六話、在日コリアンの祭祀、動物園の慰霊碑など幅広いテーマを設定しています。このように自分の生活に身近なテーマを研究できるところが民俗学の良さだと思っています。 他にも民俗学研究室では研究やゼミだけではなく研究室で地元の小麦粉からうどんを打ったり、東北地方では恒例の芋煮会を開催したりと楽しいイベントも行っています。この一年はメリハリのある環境で楽しく研究を進めることができました。■倫理学     松﨑 千香さん(3年) 倫理学は人間の行動の規範となる物事の道徳的な評価を理解しようとする学問です。倫理学履修モデルでは、ディスカッション形式や講義芸式などの形態で授業が行われており、多様な倫理学の理論を学ぶことができます。 私の所属するゼミでは、メタ倫理学と応用倫理学という分野が中心ということになっていますが、興味のある議題があれば自由に研究することができます。私は、メタ倫理学を中心に研究しており、私たちにとって道徳とは何なのか(実在論)ということを主に学んでいます。先生方からは、研究に必要な文献を薦めていただいたり、自分のレジュメを添削していただいたり、優しく的確なご指導を受けてきました。ゼミでは週ごとにレジュメ発表をしており、ゼミ生同士で活発な意見交換を行っています。自分の研究するものとは全く違う分野の発表を聞くことで、自分の研究分野にも新しい視点をもつことができました。この一年で、さまざまな議論をする機会があり、学生同士で倫理学の理解を深めることができ、とても有意義な時間を過ごせました。文学部通信 第16号3

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