文学部通信13号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~ 2014年3月6日発行- 新たな「スタート」に向けて - 2013年度のコミュニケーション情報学科は、決して順風満帆と言える状況ではありませんでした。学生の就職状況や語学学習などにおける学生の質の変化から、人材育成の戦略や施策において幾つかの課題が表面化しました。ただ、課題が早めに見えたことは本学科にとってはむしろ幸運なことであり、既に教育プログラムを始めとした改善に動いています。■再設計が求められるキャリア支援 今年度末に卒業予定である就職率は85.7%と、昨年度の100%から下がる見込みです。教員や保育士など採用枠の少ない職種志望者がおり4名の学生の進路(14年1月現在)が未定となっていることに加え、休学や留学による留年者が多く、例年に比べて母数である卒業予定者数が28名と少なくなったことが、就職率低下の原因です。 それでも全国平均の学部生就職率に比べると20ポイント程度高いことが想定されますし1、本学全体および学部全体の数値を上回っている2ことを考えると、それほど憂慮する必要はないという声もあります。しかしながら、企業の採用意欲が上昇している中で結果を残せなかったのは事実です。 原因として考えられるのは学生の志向の変化です。業種では金融・保険、特に九州圏の地方企業あるいは全国企業であっても地域限定職への応募が増えるなど、全般的に安定志向が強まる傾向にあり、これらの企業の採用活動の時期は相対的に遅く、学生の一部は就職活動に対してのんびり構えすぎる傾向が見られます。 本学の「出口」のひとつとして想定していたマスコミ関係業種への就職は3年連続ゼロとなりました。文系においては、大学での教育と就職先の業種や職種が一致しませんので特定の業種などへの就職を目標としていませんが、先を見通しにくい時代において、旧来型の「安定」に安住せず、「挑戦」的なキャリア・デザイン力を学生には高めて欲しいと考えています。■格差が広がる語学に対する学習意識 本学科では実践的で高度な情報発信力の習得を目的のひとつにおいており、実践的な英語能力に関して具体的な到達目標を設定したうえで、カリキュラムを運営しています。3年次終了時までにTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)850点というのが、その目標です。今年1月の段階では、4名が「十分な英語運用能力があると認められる」850点を突破しました。正規授業だけではなく、週2回の課外勉強会や、「合宿」と学生が呼ぶ検定前の集中学習会の成果です。 ただし課題がないわけではありません。勉強会は数年前から教員主導から学生の自主的な運用に切り替えましたが、それにしたがって参加人数が減少気味になっています。勉強会や学習会への参加は、就職活動や卒業研究で忙しい4 年生と新入生を除いた2、3 年生の1割から2割、10~15名程度に留まっています。夏期の短期留学を伴う授業の参加者も10名程度であることから考えても、英語学習への取り組みについて、意識の格差が広がっているように感じられます。■教育プログラム改善に本格着手 このような状況を踏まえ、学科では教育プログラムの改善に着手しています。実社会の課題を学生主体で解決する課外のプロジェクト学習の強化に加え、正規カリキュラムについても、既存科目の最適化や新科目の開発などを図っています。 プロジェクト学習は、地域社会に現実に存在する課題に対して、学生が主体的に企画を立案し、周囲を巻き込みながら企画を形にしていこうという学びの形態で、個人のみならずグループや組織における課題発見力や解決力を強化できるとされています。本学科では、12年度末から地元の百貨店『鶴屋』のマーケティング活動に参画し、プロジェクト学習を実践しています。 百貨店の屋上や子供用品フロアなどを使って未就学児を対象としたワークショップを開催する「スコラチエロ」と名付けられた企画では、百貨店の顧客に対するニーズ調査・分析を実施したうえで、ワークショップのプランを百貨店サイドに企画提案し、実施に向けた調整、制作といった一連の作業を学生が主体的におこないました。動物の世界をジオラマで作るという9月の企画に始まり、12月にはリサイクル楽器を演奏するクリスマス楽団を結成する、というイベントを実施しています。この学習は地域でも話題になり、テレビ、新聞、ラジオなどで大学の新しい試みとして取りあげられました。 ▲ 12月の『スコラチエロ』の様子 既存カリキュラムの最適化では、コミュニケーション力の育成を目的として、演劇の創作活動を授業に導入しました。「演劇ワークショップ」と呼ばれる技法で、コミュニケーションの主体や状況を限定したうえでストーリーや配役を含めたシナリオを学生が作成し、自分たち自身が役者として身体表現をおこなうというものです。授業では、劇作家を非常勤講師として招き、学生3グループが異なるストーリーを考案、最終的にひとつの劇にしてまとめるというプロセスで演習をおこない、7月の終わりには、熊本市動植物園の屋外ステージで現代劇『桃太郎』を上演しました。 既存カリキュラムのスクラップ&ビルドなど、地道な改善もおこなっています。2016年3月卒業予定の学生から適用される企業の倫理憲章の見直しに対応し、キャリア・サポート系の科目を再編することにしました。既存科目を発展的解消し『キャリア・デザイン実習』に再編成するのに加え、経営戦略を実例から学ぶ経営学系の科目もスタートさせる予定です。■持続的な改革に向けて この一年、私たちは、人を育てるということに終わりがないことを痛感させられました。次から対へと常に改善すべきことが出てきます。学科の教員、スタッフ一同、新たな「スタート」としての思いを強くしています。注釈1. 全国平均は文部科学省『平成25年度学校基本調査』より算出。学部卒業の就職者と研修医の合計人数を就職可能者数(卒業者から大学院および専門学校等への進学、死亡・不明を除外)で割った数。ただし、本学科の数字は大学院修了の3名が含みます。2. 2012年度の文学部の就職率は81.1%です。 6コミュニケーション情報学科

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