文学部通信13号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2014年3月6日発行■アジア史学 今年度は、4年生5名が卒業論文を提出して、無事に卒業を迎えました。卒業論文のテーマは、明末万暦年間の徽州の魚鱗図冊を分析したものが2本、明代地方官学での郷飲酒礼、清代の対外貿易の変化、清末四川の宗族内紛争です。文書史料を丁寧に分析したり、関係史料を自力で収集・整理したりするなど、例年以上に力作揃いでした。4年生の進路は、不動産、自動車販売、流通、公立高校教員など多様です。 30年以上にわたってアジア史研究室の運営、本学の教育・運営にご尽力され、日本の中国史研究・歴史学を大きくリードされてきた足立啓二先生が3月末で定年退職されます。長年にわたる足立先生のご尽力に感謝するとともに、ご健康とさらなるご活躍を祈念いたします。 アジア史研究室は大きな転機を迎えることになります。 ■考古学 2013年度4月に、6名の新2年生と2名の修士課程1年生を迎え、総勢21名の研究室活動がスタートしました。5月、新入生歓迎遠足で宇土の貝塚と天草の古墳を歩き、7月には岡山大学の松木武彦教授の集中講義(「日本列島先史~原史時代の型式学と歴史学」)を聴き、8月には昨年に引き続き阿蘇谷東北部にある平原古墳群6号墳の発掘調査をしました。この古墳は5世紀に造られた直径30mの円墳で、近くの前方後円墳群(中通古墳群)との関係が注目されています。今年も杉井准教授の指導で、修士1年生のフィールドマスターが1月に及ぶ調査をリードし、この古墳が石で葺かれた2段築成のものであることを確認しました。今年の阿蘇は雨が多く難渋しましたが、古いにしえの阿あそのきみ蘇君の本拠地にどっぷりつかった発掘三昧の体験は、学生諸氏の生涯の思い出となるでしょう。現在、参加者全員による発掘調査の報告書(研究室報告第49集)作成作業が進んでいます。発掘調査と報告書の刊行を毎年着実に継続し、学生の考古学の基礎的学力と発掘調査における実践力を養い、埋蔵文化財行政で活躍する人材を育成することは、本研究室創設以来の基本方針です。このほかに、研究室創設40周年記念論文集(『先史学・考古学論究Ⅵ』、来年3月刊行予定)の編集作業も進んでいます。学校教育や文化行政で活躍する多数の卒業生と教員による研究成果を定期的に公にし、学術面での社会貢献も続けてゆきたいと思っています。■西洋史学 2013年度は、新2年生10名、新大学院生2名を迎え、西洋史研究室は、総勢32名のにぎやかな研究室となりました。この1年間の活動を一言で表すと、それは、「境界線を越えて、外へ飛び出そう!」であったと思います。2013年3月には、10日間にわたってイタリア研修旅行が実施され、ヴェネチア、フィレンツェ、ローマという、歴史と文化あふれる世界遺産の古都を堪能し、現地の人々との交流を楽しみました。夏には、語学研修などでドイツやフランスへ多くの学生が遊学し、4年生の塚本春菜さんは、文学部の国際奨学金を得てフランスのオバジーヌ修道院を訪れ、中世の大規模な水車の遺構を現地調査しました。春には院生2人が、それぞれイギリスとドイツに出発する予定です。また熊本大学という垣根を越えて、九州全体から学生が集う「九州西洋史学会若手部会」に参加しました(2013年3月、8月、11月開催)。西洋史研究室からは、井上真奈さん、長島修一君、西本紘大君、益田太樹君、川並雅洋君が研究報告を行い、他大学の院生・学部生を相手に素晴らしい「他流試合」を行いました。とくに8月には、熊大西洋史が主幹校となって、30名を超える九重での夏合宿を成功させました。こうした経験は、学生たちに大きな刺激と自信を与えたようです。今年度の特殊講義では、久留米大学から池口守先生をお迎えし、古代ローマ史の最新の成果を、考古学的な調査をふまえてお話ししていただきました。また2013年3月には、丹下栄先生が共著『ヨーロッパ・「共生」の政治文化史』を、三瓶弘喜先生が編著『西洋近代における分権的統合』を刊行しました。6月には中川順子先生が、韓国・釜山で学術発表を行いました。■日本史学 4月に14名の2年生を迎え、総勢43名で新年度を迎えました。2年生は中世・近代の史料演習や古文書の現物を使った実習でカリキュラムをスタートしました。夏季の歴史資料学野外実習では、3年生と大学院生が八代市立博物館所蔵の地主文書群と、熊本大学にある「江上家文書」の目録作成及び翻刻文作成を行いました。前者は近世末~近代の八代海干拓事業に関する重要史料、後者は熊本藩玉名郡惣庄屋の家に蓄積された貴重な文書群です。夏季にはさらに、甲南大学の佐藤泰弘先生の集中講義「荘園史の諸問題」が開講され、学生たちは中世史研究の最前線を学びました。また9月の研究室合宿(熊本県小国町)や各種研究会、さらに九州大学との合同ゼミなど、学生の自主的な研究活動も着実な成果をあげました。 年度末には、こうした教育研究活動の成果が次々と出されました。2014年1月に卒業論文11本と修士論文2本が提出されました。いずれも力作の名に恥じないものです。また、夏季の野外実習で作成した目録・翻刻文を集成した『古文書学実習調査報告書Ⅸ』が3月に刊行されました。 教員たちも、吉村豊雄教授が論文集『日本近世の行政と地域社会』を校倉書房から刊行し、11月末には、吉村・三澤純・稲葉継陽の三教員が参加して「シンポジウム 日本近世の領国地域社会」を開催するなど、研究成果を世に問いました。近世史担当の吉村教授は、2014年3月末をもって定年退職となります。3月15日には、最終講義と盛大な記念パーティーがひらかれ、多くの卒業生が集います。卒業生らが寄稿した退職記念論文集も、2014年5月には出版の予定です。 ■文化史学 2013年度は、2年生7人が 研究室の仲間入りをしました。3年生が12人、4年生 が7人、大学院生が5人と、全部で31人です。4月に恒例の新2年生歓迎コンパ。5月の研究室対抗ソフトボール大会では、惜しくも優勝は逃しましたが昨年に続き準優勝を果たしました。9月には課研・夏合宿を昨年同様「木の研修施設」(七城)で行いました。1月の研究室恒例行事は、卒論お疲れ様会。4年生にとっては達成感と虚脱感の入りまじる忘れがたいひとときです。学生が 自主的に決定している課題研究の今年のテーマは「侵略」。国内外の様々な問題を、「侵略」の観点から議論しました。北海道、沖縄、朝鮮、中国、インド、パレスチナ、ハイチ、イギリス、アメリカ等、様々な国・地域のみならず、性や身体、動物等々も対象とし、それぞれ レポートをまとめました。 今年度、小松先生が文学部長に就任されました。激務ゆえに以前のような授業 数を担当されることは難しいため、8月に集中講義で吉村和真先生(京都精華大学)、後期演習で清水靖久先生(九 州大学)をお招きしました。吉村先生の講義で学んだのは「ひろしま」を描いたマンガについて(とりわけ「はだしのゲン」)、清水先生 の演習で取り組んだのは丸山眞男です。新井先生の演習では、まずベネディ クト・アンダーソンの『想像の共同体』を読み、その後このテキストとの関連でそれぞれ個別テーマを設定し発表しました。 4▲ フィレンツェの夕日に大感動!(イタリア研修旅行)▲ 2013年 課研・夏合宿(七城)▲2014年1月14日,卒業論文を提出した4年生 (アジア史研究室にて)▲ 平原6号墳でのひとこま(2013年夏)▲ 夏季の古文書実習歴史学科

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