文学部通信13号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~総合人間学科■倫理学 宮崎 真緒さん(3年) 私の所属している倫理学研究室では、アリストテレスの『二コマコス倫理学』という文献を読み、アリストテレスの考えを通して、現代の問題について考えたり議論したりする一方で、様々な資料を読み、幼児虐待や噂、所属集団と個人の自己評価の関係といった、私たちの生活に身近な問題について取り組み、倫理学的に学んでいます。これらの授業はディスカッション形式だったり、先生の講義を聞いて発言や質問をするという形式だったりと、様々な形式で行われます。前期は院生の方とも一緒に授業を受けたので、様々な視点で考えることができました。 私たち倫理学履修モデルの学生は、現在、高橋隆雄先生、杉本裕司先生、田中朋弘先生、そして今年から熊本大学にいらっしゃった立花幸司先生のもとで学んでいます。倫理学履修モデルに入ってからの1年、友人たちと様々な議論をする機会や自分の興味のあることに関する文献を読む機会も増えたので、自分の視野を広げることができました。■社会学 原田 久美子さん(3年) この社会で起こる出来事・現象、それらすべてが社会学の研究の対象です。そのため社会学で扱う事柄は多岐にわたります。社会学は、なぜそのような事象が起こるのか、そこにはどんな社会的背景が存在するのかを問うことで、実際の社会の動きについて深く考えることのできる学問です。 私はこの1年で、現代社会に生じるさまざまな事象と向き合いました。所属するゼミでは、1年を通してカール・マルクスの『経済学批判』やマックス・ヴェーバーの『宗教社会学論選』といった本を読み、現代社会においてその理論に基づく事例はないかと意見を出し合い、社会学的な理解を深めてきました。また、興味・関心のある事例に関しては、実際に現地に行きフィールドワークを行うという経験もしました。 社会学履修モデルでは、それぞれが持つ社会への「好奇心」に基づいてさまざまな観点に立ってアプローチできます。今年度も、積極的に社会の中の出来事に目を向け、主体的に学んでいきたいと思います。■文化人類学 佐藤 睦さん(3年) 私が所属するゼミでは、マルセル・モースの『贈与論』を読み、議論を通して身近な事例から「贈与交換」について考えました。また、卒業論文に通じる各自の研究テーマを深めるために、各々で事例や文献をもとに関心領域を探り、授業では意見を出し合いました。先生や他の学生の意見を聞くことで、さらに視野が広がり、同時に自分の関心や問題意識を再認識することができました。夏休みには大阪へ行き、国立民族学博物館や鶴橋のコリアンタウン、沖縄色溢れる大正区などを訪れました。歩いて、見て、聴いて、食べて、学んだ課外授業でした。 この1年間で、聞くことと実際に行ってみることの重要性を実感しました。そして、なによりそれらを楽しめるようになりました。これが文化人類学の魅力の一つかもしれません。授業でもイベントごとでもアットホームな雰囲気の文化人類学履修モデルでは、このような勉強の面白さを感じることができます。■民俗学 長谷 麻奈美さん(4年) 民俗学研究室には、3年生から院生まで、多くの学生が在籍し、様々な調査を行っています。時には学年関係なく調査地に足を運び、聞き取り調査などを行うこともありました。今年度は、3年生が中心となり、南阿蘇の地獄温泉へ赴き、湯治を実際に体験しつつ調査をおこなったり、宮崎県諸塚村で神楽や生業、大学生に身近な問題として就職活動についての調査も行ったりしました。また、昨年度も調査を行った人吉球磨は前回のものを更に発展させ、新たな発見もあって、充実した調査となりました。他にも、日本民俗学会での発表をおこなった学生もいました。さらに、学業の面だけでなく、ソフトボール大会やドッジボール大会で交流を深めました。 ゼミでの発表は、食事という生活に身近なもの、果ては変身ヒーローまで多岐にわたっており、これらの発表を聞くことで、自分が全く知らなかったこと、考えたこともなかったアプローチの方法など、様々なことを学ぶことができた充実した1年となりました。■地域社会学 真鍋 聡さん(3年) この一年、地域社会学研究室では多くの農村に行き、調査をするフィールドワークを行ってきました。今年度は熊本県水俣市久木野地区や大分県の杵築市筌口地区、遠い場所では岩手県石巻市相川地区の集落を調査しました。それぞれの調査では住民の方たちの交通手段や食生活、娯楽といったものなどを直接住民の方たちに聞き取り、本やテレビでは見えない「生の暮らし」を知ることが出来ました。調査は大変な時もありましたが現地のおいしい食べ物を食べたり美しい風景を見ることができたりしてとても楽しい時間をすごしました。 また普段のゼミではとてもユニークな先生方や大学院生も含めた先輩方が懇切丁寧に御指導をしてくださり、ゼミ以外にも学会やシンポジウムなどに参加することで幅広い知識を得ることでき、楽しく勉強をさせてもらっています。 人と話す機会が多いこともあって色々な考え方や価値観を学ぶことが出来ました。この刺激的で退屈しない一年は自分の人生にとってよい一年だったと思います。■地理空間学 堀 元気さん(3年) 地理学は自然や人々の暮らしについて研究する学問です。テーマは自然環境をはじめ、都市、産業、経済まで幅広い分野を扱います。例えば、私が現在取り組んでいる観光地理学は、観光地や観光施設の分布、観光客の行動特性などについて研究するものです。 ゼミは、各々が関心のある論文を持ちより、それを題材に議論するという形式でした。先生やゼミ生と議論を重ねるにつれて、思考が深まるほか、新たな発想や疑問が浮かんでくることもしばしばありました。そして、私が今後研究したいテーマが明確になり、非常に有意義なものとなりました。 また、地理学は様々なデータを収集し、それを正しく分析、解釈することが欠かせません。そこで、課題研究では基礎統計解析や多変量解析を学習しました。内容は難しく、習得に苦労しましたが、情報分析の幅が広がったので、今後活用していこうと思います。 この一年で卒論の方向性が見えてきました。来年度も地理学研究室の皆と引き続き研究を進めていきたいです。■認知哲学 花田 覚さん(3年) 学問はある意味で孤独である一方で、他の人に自分の課題を説明する重要性と難しさが、この一年で分かった。私の研究分野は論理の哲学だ。論理は間違いえないと思われているが、その論理や推論規則が正当化できるかは議論の余地がある。論理学も哲学も研究者が少ないことと、一人での研究が基本的であるため、方針が立てづらかった。そこで、今年度前学期は、自主ゼミサークルを作り、初学者と一緒に論理学の基礎基本を勉強し直したり、論理学および哲学の学会や勉強会にも積極的に参加し、時には発表したりすることで、自分の問題意識を明確にすることを試みた。後期からは、研究計画を明確にすることを目指して、教員と一対一の議論を始めた。まず自分のテーマを説明することがとても難しかった。しかしテーマをはっきりと明確にした後は、自分の研究も進み、教員も分かってくれるようになった。その後もへこたれずに教員と真剣な議論を積み重ね、文献を読み解いていくことで、知的タフネスを身に着け、哲学とは何か、そして私が何をするべきか、が見えてきた。■芸術学 西城 厚美さん(3年) 芸術学研究室では、この1年を通して、写真や現代アートに関する演習、西洋音楽史や音楽理論についての演習、コミュニティ音楽療法に関する研究など、多岐にわたる分野の研究・教育がなされました。 特にコミュニティ音楽療法に関する研究に関わっては、1年を通して、週に1回子飼商店街で実習の授業を行ってきました。実習では、心身の活性化を図るという目的のもと、高齢者の方々と一緒に歌を歌ったり、楽器を演奏したりして、楽しく交流することができました。また、地域振興を目的として、子飼商店街、そして地域の方々と一緒に、熊本県立劇場でコンサートを2回実施しました。企画から運営まで研究室の学生主体で行い、初めて学ぶこともたくさんありましたが、無事成功できて良かったです。 高齢者の方々から学ぶべきことは多く、大変良い勉強になっています。来年度もこの音楽活動を通して、高齢者の方々の文化を受け継ぐとともに、新しい高齢者文化の創成のお手伝いが少しでも出来ればと思っています。■認知心理学 石川 悠美さん(4年) 認知心理学研究室の楽しさは、実験に参加したり、自分が実験を行うことができるところにあると思います。仲間と一緒に目の錯覚や記憶について実験し、人間の脳の不思議やそのシステムを学びました。卒業論文作成のための実験では、先生方を始めとして先輩後輩を問わず協力していただいたおかげで、無事4年全員が提出することができました。この時の達成感は何事にもかえられません。 また、新歓に始まりBBQやハロウィン、忘年会など研究室全体で集まり、騒ぎ楽しむことも多くあり、私たちにとって本当に居心地のよい場所となりました。 この研究室で過ごした2年間で、私たちは物事を多面的に客観的に見ることや、仲間を頼り助け合うことを経験し、その重要性を学ぶことができました。本当にありがとうございました。文学部通信 第13号3

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