文学部通信12号
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2013年3月22日発行研究推進・地域連携委員会 委員長 小松 裕 第9回21世紀文学部フォーラムは、昨年の11月4日に開催された。例年12月上旬に開催しているが、それほど参加者が多くないので、試験的に大学祭期間中に実施した。 テーマは、昨年度に引きつづき「東日本大震災は社会をどう変えたか?」で、副題を「コミュニティの絆とマーケティング・コミュニケーションの側面から」とした。第一講演者はコミュニケーション情報学科の江川良裕先生、第二講演者は社会文化科学研究科の石原明子先生である。 江川先生は、「震災とメディア、企業―広告やマーケティングがどう変わったか」というテーマでお話しされた。ご専門の経営学的な観点から、震災後の新聞紙面での広告の取り扱い方や、テレビのACのCMの変遷など、詳細なデータをもとに分析された。結論としては、新聞広告の自粛は、阪神淡路大震災や昭和天皇が亡くなったときよりもはるかに徹底していたこと、震災後のCMは国民の生活感情の変化(そこそこの生活、家族や友人との対話を重視、など)に対応しており、好感度の高かったCMは「ガンバレ」などを前面に出さなかったものであることが指摘された。 石原先生は、ご専門の紛争解決学・平和構築学の観点から、「原発災害後に壊される人の絆―水俣と福島に考える」と題して講演された。福島第一原発爆発事件の被災地を何度も訪問してえた知見をもとに、福島県民が、避難した人、避難していない・できていないが放射能を心配する人、そして避難していなく放射能を心配していない人・心配をやめた人・心配するのに疲れ切った人の三極に分かれていることを指摘した。そして、これらの人々の間で、コミュニティの絆が分断され、差別事件も発生していることを述べ、チッソ水俣病事件と同じことが福島で繰り返されていると述べた。最後に、熊本で何ができるのか、さまざまな提言がなされた。 参加者は30名程度であったが、非常に内容の濃いフォーラムで、アンケート調査の結果によると、参加者の満足度は非常に高かった。熊本日日新聞も、11月18日の紙面で大きく取り上げてくれた。ただ、もう少し天気がよければ、参加者が増えたかもしれない。 大学祭期間中の開催については、メリット・デメリットの双方があり、来年度の委員会で再度検討することになった。ちょうど10回目のフォーラムになるので、盛大なフォーラムになることを期待している。 講演された江川先生、石原先生、事前の準備を担当された中川順子先生、それに当日の司会を担当された大辻先生、どうもご苦労様でした。 広報・情報化推進委員会 委員長 渡部 雅男 平成24年度オープンキャンパスを8月10日(金)に実施し、1,084名の高校生・高校教員・保護者の皆様が参加されました。 各学科に分かれて、次のような説明が行われました。学科長の歓迎挨拶、学部の概要、学科の概要、学習環境・学習支援、国際交流、卒業後の進路・就職、入試など。その後の模擬授業では、総合人間学科「当たり前を人類学する」(シンジルト)・「『シリコンアイランド』九州の地理学」(鹿嶋洋)、歴史学科「過去を読みとく~近世イギリス庶民の世界~」(中川順子)・「戦国時代から『天下泰平』へ」(稲葉継陽)、文学科「<熊本>から考える<世界文学>」(坂元昌樹)・「ドイツ語への招待」(トビアス・バウアー)、コミュニケーション情報学科「ちょっと真面目にテレビCMを考える」(江川良裕)・「異文化の相互理解と会話における危機的状況」(イアン・アイズマンガー)などの講義がありました。 一方、各学科の研究室では「研究室訪問と質問コーナー」が開設されました。本年度も、来場者からの「在学生とのコミュニケーションの機会を増やしてほしい」という強い要望に応えるため、昨年同様にこの時間を長くしました。多くの来場者の方々が、在学生と、受験準備・大学生活・授業・アルバイトなどについて相談をしていました。 オープンキャンパス終了時にアンケートに答えてくださった皆様のご意見を参考に、来年度はさらに「来て良かった」と言われるオープンキャンパスにする予定です。永青文庫研究センター長 甲元 眞之 4年目を迎えた文学部附属永青文庫研究センターは、熊本大学附属図書館に公益財団法人永青文庫から寄託されている4万3千点余りの細川家文書の基礎目録作成、重要典籍の編集出版と細川家文書のもつ重要性を社会的に広める活動を行っている。 今年度は『永青文庫叢書』の第4巻として、「絵図・地図・指図編 Ⅱ」の編集にあたり、「江戸幕府の成立と領国支配」をテーマに、支配領国の国絵図や街道の整備状況、殖産事業、被った災害の様子などとともに、江戸から熊本までの参勤交代の折の知見を描いたものや鎖国状態にありながら、諸外国の情報入手に努めた細川藩の記録類で構成されている。 永青文庫セミナーも今年で第7回を迎え、11月の学園祭当日、「竹原家故実と細川藩」と題して、高濱州賀子さんにより講演がなされた。竹原家は代々細川家に仕え、細川藩の故実相伝に大きな役割を果たしていて、現在も武田流流鏑馬の宗家として活動している。稲葉継陽さんは熊本での各種講演やシンポジュームに参画するばかりでなく、細川幽斎との関連から、平成25年3月出版の京都府舞鶴市『細川幽斎と舞鶴』の編集の中心となって参画した。このほかセンター関係者は、細川家文書の解析から得られた知見を基に九州各地の文化財保護活動にも積極的に係わっている。 こうした永青文庫研究センター諸氏の活動を通して、永青文庫の有する資料的評価を高め、国民の共有財産としての国の文化財指定に向けて取り組む日常である。 「熊本大学文学会」は、教員と学生が参加して、文学部の教育の充実と学術研究の促進をはかり、学生会員が文学部で学ぶ環境をよりよいものにしていくための活動を行う互助組織です。前身の法文学会の時代を含めると、50年以上の歴史があります。本年度に行った事業は次のとおりです。1. 文学部フォーラムなど文学部の事業への支援文学部が行っている研究を地域社会に還元するフォーラムや、教員の研究活動の成果を教員や学生の間で点検するピアレビューのための経費として50万円を補助しました。2. 講演会や学術交流に対する支援九州アメリカ文学会大会(5月)や日本フランス語教育学会(11月)など、学生の皆さんも参加できる計7つの催しに対して34万円を補助しました。3. 図書整備費の支援教育と研究に必要な中・大型図書を充実させるため、4学科輪番で支援しています。今年度は文学科に25万円を補助しました。4. 就職開拓に対する支援「学内就職講座」・「公務員試験対策講座」・「教員採用試験対策講座」といった講座について、本会員(文学会加入の学生の方)を対象に、1つの受講につきそれぞれ3,000円の現金補助を行なってます。5. 研修旅行に対する補助それぞれの研究室が行う研修旅行の参加について、本会員を対象に、2,000円を補助しています。6. 卒業・進級記念品の贈呈卒業と2年次進級に際して、本会員を対象に、2,000円分の図書カードを記念として贈呈しています。7. 学生専用複写機の利用法文棟内での学生専用用コピー機の維持管理を行なってます。今年度よりカラーコピーも出来る機種に更新しました。カラーについては値段設定を大学周辺のコンビニエンスストアのものよりも安くしてありますので、どうぞふるってご利用ください。(設置場所は1F学科事務室の奥です)8. 「文学部通信」の発行ご覧になっている「文学部通信」は文学会の経費で作られています。 これらの事業は、教員と学生の会員会費から、本会員の皆さんに直接・間接に還元されているものです。未加入者におかれましては、ぜひともご加入をお願いします。 連絡先は法文棟1F教育支援室096-342-2459(担当:吉田)です。発 行:熊本大学文学部/熊本大学文学会編 集:熊本大学文学部 広報・情報化推進委員会 渡部雅男、大杉佳弘、小畑弘己、千田俊太郎、石原明子ウェブサイト www.let.kumamoto-u.ac.jp文学部通信 第12号2013年3月22日8第9回21世紀文学部フォーラムの報告第9回21世紀文学部フォーラムの報告永青文庫研究センター活動報告平成24年度 オープンキャンパス永青文庫研究センター活動報告平成24年度 オープンキャンパス平成24年度 熊本大学文学会活動報告平成24年度 熊本大学文学会活動報告2012年度文学会常任理事 中島 隆 ▲ 江戸時代の絵図を検討する北野教授と藤本研究員

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