文学部通信12号
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文学部 ~この1年~文学部 ~この1年~2013年3月22日発行■アジア史学 教員2名と大学院生1名(修士2年)をあわせて総勢13名で研究室を運営しています。 研究活動の面では,足立啓二先生が東洋史研究会の大会で「二十世紀前期の諸論争を振り返って」を発表されました。伊藤正彦先生も明清史研究合宿のシンポジウムでパネラーを務めるとともに,2009年から3年間にわたる科学研究費補助金基盤研究(C)の成果報告書(『「万暦休寧県27都黄冊底籍」の世界』)を刊行しました。 人数は少なくても元気にやっています。今年は4年生5名・修士1名全員が卒業論文・修士論文を提出しました。9月の集中講義では,佛教大学の山崎覚士先生から中世東アジア海域史研究の最新の成果を学びました。 5月の歴史学科対抗ソフトボール大会では,主軸となるメンバーが参加できなかったにもかかわらず,全勝で2連覇を飾りました。結束の賜物です。 来年度は,長年にわたって研究室と本学の発展に御尽力されてきた足立先生が定年を迎えられます。■考古学 2012年度は2年生4人、大学院修士課程2人、学部研究生1人を迎えました。近年、考古学専攻生の減少が各地の大学で指摘されていますが、この4人という人数がそうした減少傾向と一連のものであるのかどうか、これから数年、注意深く見守っていかなければなりません。さて、今年度の夏の発掘調査実習は熊本県阿蘇市に所在する平原古墳群6号墳で行いました。直径30m程度の円墳ですが、その正確な規模や墳丘構造の解明を目的に、墳丘の3箇所にトレンチを設けました。約1ヶ月間の調査の結果、良好に残る葺石や段築の存在を確認し、多くの壺形埴輪片、土師器片を検出しました。未登録の古墳を付近で発見するなどの成果もあり、今後も当古墳群を継続的に調査していきたいと考えています。昨年度ですべてが終了した沖縄県伊江村ナガラ原東貝塚の発掘調査ですが、これについては、今、総括報告書作成作業の真っ最中です。2013年3月の刊行を目指しています。1972年に創設された考古学研究室は2012年4月1日、40周年を迎えました。それを祝したパーティーを10月13日、ホテルニューオータニ熊本にて開催しました。卒業生・在校生あわせて約90名の参加があり、大いに旧交を温めました。なお、今年度の集中講義は、文化庁の水ノ江和同先生にご出講いただきました。また、小畑弘己先生が第25回濱田青陵賞および第6回九州考古学会賞を受賞されました。■西洋史学 2012年度は新2年生11名を迎え、学部生28名、博士前期課程学生2名の大所帯となりました。4年生は就活に苦労しながらも全員無事に卒論を完成することができました。ゴシック建築から食文化、アメリカ合衆国のアジア系移民に至る多彩なテーマが並んでいます。参考文献も英語ばかりでなく、フランス語、ドイツ語の文献を使う例が増えてきました。3年生もなかなか元気で、もう少しで卒論になりそうな課研報告・レポートにいくつか接することができました。大学院生2名もそれぞれ気合いの入った修士論文を提出しています。勉学意欲の高まりを2年生が引き継いでくれることを確信しています。今年度は集中講義に徳橋曜先生(富山大学人間発達学部教授)をお招きしました。地中海地域の歴史について第一人者から直接教えを受ける貴重な機会となりました。講義ばかりでなく、調理実習、阿蘇への1泊旅行などを通じて徳橋先生との交流を深めることができました。研究室の国際化も進んでいます。9月に3年生1名が1年間の予定でオーストラリアに出発、また4年生が海外調査実習資金を得てフランスに卒論作成のための実地調査に出かけました。昨年度からセント・ルイスに滞在していた三瓶准教授は10月から校務に復帰、滞在中の研究成果が近々まとめられることと思います。2月には中川准教授がボルドー大学に出張し、熊大文学部との交流活性化に向けた協議を行予定です。■日本史学 4月に2年生10名、3年生8名、4年生14名、留学生1名、研究生1名、大学院生5名(修士4名、博士1名)、教員3名の計42名で今年度の研究室活動をスタートさせました。5月の歴史学科対抗ソフトボール大会では、4試合を2人の女性ピッチャーが投げ抜きましたが、惜しくも3位という結果に終わりました。8月の、通称「古文書合宿」では、阿蘇郡高森町の草部吉見神社宮司・芹口家の文書を調査しました。今回は、これまで私たちが地道に続けてきた調査の成果報告書をご覧になった神社関係者の方から、特に要請されての調査でした。それだけに地元の期待も高く、最終日の報告会は40名を越える地元の方々がお集まりになるという盛況ぶりでした。特に、江戸時代の神幸行列の姿が書き留められた史料には、その行列が現在も続いているだけに大きな関心が寄せられました。この史料を解読・検討した結果、江戸時代は現在とはかなり違った順番で行列が行われていたことが分かり、神社や氏子の方々が、その場で「来年以降は本来の順番に戻すべきではないか」と話し合われるという一幕もありました。この様子は、『熊日』『朝日』両紙に掲載され、詳しく報道されました。 今年度の本研究室は、「国際色」に彩られた1年でもありました。中国の准陰師範大学を卒業して、4月に研究生となった左佳さんが演習に参加したほか、ポーランドのワルシャワ大学から来たチャルネツカ・モニカさんが9月に帰国した後、10月からはドイツのボン大学からマルクス・ショメル君がやってきたからです。研究室メンバーは、3人の高度な日本語能力と深い日本史知識を目の当たりにして驚愕すると同時に、彼らとの交流から心地よい知的刺激を受けることができています。 年が明ければ、卒論・修論・博論の審査が行われ、今年度も終わりを迎えることになります。この文章を書いている段階では、年度末の研究室旅行の行き先候補地があれこれと取りざたされ、それが論文執筆に苦しんでいる学生たちの唯一の「希望の星」になっているようです。 ■文化史学 2012年度は、2年生12人が研究室の仲間入りをし、大学院生3人(博士前期課程1人、博士後期課程2人)が入学しました。3年生が8人、4年生が11人、大学院生が7人と、全部で38人です。また、長らく小松先生が一人で指導されていましたが、ヨーロッパ近現代思想史を担当する新井先生が着任され、教員2名体制が復活しました。4月に恒例の新2年生歓迎コンパ。5月の研究室対抗ソフトボール大会では、惜しくも優勝は逃しましたが準優勝を果たしました。9月には2年ぶりの課研・夏合宿を「木の研修施設」(七城)で行いました。11月には山形の芋煮会、12月にはキリタンポ鍋と、研究室恒例の行事で盛り上がりました。学生が自主的に決定している課研の今年のテーマは「転換」。日本における肉食観の転換やヨーロッパにおける子ども観の転換、はたまた幸徳秋水やマルコムXの思想的転換など、それぞれ個別テーマを設定しレポートをまとめました。小松先生の演習で取り組んだのは石橋湛山、新井先生の演習ではカルチュラル・スタディーズです。小松先生が昨年1月に田中正造の解説者として出演されたNHK・Eテレのシリーズ番組が6月、書籍『日本人は何を考えてきたのか 明治編 文明の扉を開く』(NHK出版)になりました。4▲ 徳橋先生の調理実習、イタリア料理を堪能しました▲ 2012年課研・夏合宿(文化史学)▲2013年1月15日,無事に卒業論文を提出した4年生たち▲ 平原6号墳の北1トレンチにて(2012年9月12日)▲ 8月31日、古文書調査報告会の後で、参加者の方々とともに歴史学科

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