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エリザベス・ギャスケル『シルヴィアの恋人たち』(彩流社)1997年12月25日発行 737頁 \6,000 |
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ISBN: 4-88202-523-X |
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「真実の愛」とはどういうものか?
様々な価値観が交錯する現代、多くの人が各々の経験に基づいてそれぞれの「愛」観を語る。この物語も、一言で言えば、この問題を提起している。 |
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エリザベス・ギャスケル(1810−65) |
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1810年、ユニテリアン派の元牧師の末娘として、ロンドンに生まれる。1歳で母を亡くしてから、21歳で同派の牧師ウィリアム・ギャスケルと結婚してマンチェスタに移り住むまで、マンチェスタ近郊の田舎町ナッツフォードで母方の伯母に育てられる。父の再婚によって生じた継母や異母弟妹との気まずい関係や、ただ一人の兄や父を相次いで亡くす不幸に苦しむことはあったが、概して幸福な幼少期と青年期であった。 34歳の時授かった待望の長男を9箇月で病死させたことが、作家エリザベス・ギャスケルを誕生させるきっかけとなる。悲しみを癒すために書いた『メアリ・バートン』が好評を博したのである。以降、チャールズ・ディケンズ、W・M・サッカレー、シャーロット・ブロンテ、ジョージ・エリオットなどの作家たちとの交流を続けながら、長編小説『ルース』『北と南』『シルヴィアの恋人たち』『妻たちと娘たち』をはじめ、『クランフォード』『従妹フィリス』などを含む約40におよぶ中・短編小説、および伝記『シャーロット・ブロンテの生涯』を著した。 55歳の時、ハムプシャに買った別荘で急逝。〈苦しむ者へのいたわり〉と〈敬虔な信仰心〉が彼女の文学の底流にある。 |
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書評(29 August 1998) |
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英国を代表する女流作家エリザベス・ギャスケルの長編ロマン『シルヴィアの恋人たち』を文学部助教授大野先生が本邦初訳したすばらしい本である。 物語は18世紀末のイギリスの漁港を舞台に、酪農家の娘シルヴィアと彼女を真摯に愛するフィリップ、チャーリーとヘスタを絡めて展開する真実の愛の物語である。 大野訳の特徴は、原文のヨークシャ方言を熊本弁で訳している点である。そのために、作品が身近に感じられて、長編にもかかわらず一気に楽しく読むことができる。大野訳は、ギャスケル研究者ばかりではなく、一般読者に大いに感銘を与えるでしょう。(by courtesy of Professor Yamada/「熊本大学英文学会だより」第27号より転載)) |
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