英語学分野

英文学分野

◆教育理念・特色、修了者の進路
 本学英語学の特色は、テクストの綿密な読みを基盤として、語源・文法、意味・修辞・文体の研究を行います。個別研究に共通するスタンスは、通時的(歴史的)と共時的の両面にわたります。前者は特に語源・文法研究において威力を発揮します。後者は特に意味・修辞・文体研究において必須の視点です。この視点は文学テクストの言語を主題との関係で考察するという広がりを持ちます。
 即ち、我々の英語学はフィロロジーであり、テクストの言語事実を微細に観察することから、それに基く巨視的な文体研究に迄及びます。
 チョーサーや中英語ロマンスを中心とした作品を、詩行の統語的構成や修辞法、また意味の問題を考察しその時代性と独自性を明らかにします。同時に古期英語から中期英語への推移を語彙、音、語形態、統語、意味、文体の面から考察します。
 Tottel's Miscellany(1557)研究においては、初期近代英語期(1500-1700)に入ったばかりのこのテクストの英語の古さと新しさを、語源と綴り、意味及び修辞法の面から考察します。そして初期近代英語の多様性と近代英詩の成立に向けて研究を進めます。
 以上のようなフィロロジーの領域と共に、言語学の視点も新しい方法論の獲得のために重要です。文法化がどのような意味変化を伴いながら成立するのかを通時的に考察することによって、英語表現の形式と意味の間に見られる多様な関係を支配する原理を追求します。
 私たちは教師の養成を主眼においていますが、更に研究者を目指して進学出来る学力と研究法を体得して送り出します。また、現場教師のリカレント教育、社会人及び留学生へのきめ細かい教育にも熱意を燃やしています。

 英文学分野の授業は、ラフカディオ・ハーンと夏目漱石が教鞭をとった旧制五高以来の伝統をバックボーンに、「広範囲をカヴァーできる充実したスタッフ」と「少人数クラスによる質の高い教育」がその特色です。本分野の学生は、近世から現代に至る英米の文学、批評の読解や、外国人教師による授業をとおして、二年間英語漬けになります。いきおい、多くの時間を授業の予習や課題の処理に割かなければならなくなりますが、そのかわり、読解力、作文力、聴解力、会話力の四技能を徹底的に鍛えられることになります。当分野の学習の集大成である修士論文は、A4判で60枚ほど(約15,000語)の英語で書きます。

 国際化が叫ばれる昨今、英語のできる人材は待望されています。しかし、上記の四技能を鍛え抜かれた、本当の意味での実力がなければ、社会では通用しません。当分野が授業レヴェルを下げないのは、そのような人材を輩出したいからにほかなりません。英語力が鍛えられるという点では、全国の大学院でもトップレヴェルであると、スタッフ一同自負しています。平成15年度に博士課程が設置されると、さらに研究を深めることも可能になります。当分野をめざす皆さんには、高度な知的環境に浸る喜びを味わってもらいたいと思っています。

 本分野修了者は英語学分野の修了者と合わせて、1999年度までに80余名を数えます。そのうち約半数が、大学、短大、高専などにおいて英語英文学の教育、研究に従事し、一割強が高校の英語教師になり、一割弱が官公庁および民間企業に就職、それ以外は他大学の博士課程へ進学しています。

◆担当教官と研究領域

【隈元 貞広】 チョーサー、中世ロマンス研究、中期英語、英語史研究

【登田 龍彦(教育学部)】 英語の文法理論・語法、言語の歴史的変化

【大野 龍浩】 ギャスケル、ギッシング、ブロンテ、英国小説、文学批評

【永尾 悟】 アメリカ文学 

【Richard Gilbert】 American Literature

Alan Rosen(教育学部)】 Modern American Literature

◆これまでに開講された講義題目例
Tottel's Miscellany―近代英詩表現の成立、中世英詩研究:その成立と変遷、中英語ロマンスおよびチョーサーの言語と表現、機能文法、言語の構造と機能、語彙と文法における多様性

Shakespeare's Contemporaries、Felix Holt:The Radical研究、20th Century Modern English Literature、19世紀アメリカ小説、Modern Short Stories in the English Language II、批評理論のケーススタディ―現代批評理論入門

◆過去5年間(1995-99)における日本人教官の研究

著作総数

37

一人当たりの著作数

6.2

一人当たりの年間著作数

1.2

(『熊本大学文学部外部評価報告書』(1999)より)