Activity
活動内容

夏休み活動報告③

2009.11.02

香室結美

2009年8月5日から10月30日にかけて(約3ヶ月間)、南部アフリカのナミビア共和国中部で初めての現地調査を実施しました。研究課題は、「ナミビア・ヘレロのアイデンティティとドイツ植民地主義に関する人類学的研究」(公益信託澁澤民族学振興基金「平成21年度大学院生等に対する研究活動助成」)です。本研究の目的は、少数派ヘレロのアイデンティティとドイツ植民地主義との関連性を、土地所有権をめぐる問題から明らかにすることでした。

ナミビアのヘレロ社会は、ドイツ植民地政府との戦争およびジェノサイド(1904-08年)によって一度崩壊したとされていますが、1920年代以降、互助団体の設立や祖先・英雄の墓への巡礼を通した組織化が進められてきました。21世紀初頭からは政治家でもある「最高首長」K.リルアコ氏の指導の下で土地の買い戻しを目的の一つとするドイツ政府との補償交渉や、植民地時代にドイツへ研究のために持ち帰られた頭蓋骨の返還運動が行われています。私は、このような過去の植民地主義を基にした南西アフリカ地域の先住民としての意識が、ヘレロの集団的アイデンティティを強化しているのではないかという仮説を立てました。現地調査は、伝統的指導者の墓への巡礼が毎年行われるオカハンジャとオマルル、そしてオカカララを中心に行いました。初の現地調査ということで、カウンターパートとなってくれる現地の知り合いを増やしつつ移動しながら調査地を探し、徐々にヘレロの生活圏に入っていきました。

その結果、新たにドイツ人騎手像移動問題が勃発するなど植民地主義への批判的動きがメディアの報道などを通して一般に議論可能な問題に発展しており、人々の反応が多様化していることが明らかになりました。少数の白人が国土の約半分を所有するのに対し、国有の共有地で不自由に農牧を営む人々の不満は大きいといえます。そのため、ドイツ政府を訴えることで、先住民としてのヘレロの団結と国内での政治経済的地位向上を図るリルアコ氏の試みが、植民者に対する憎しみや補償の必要性と共に一部のヘレロに支持されていることがわかりました。しかし他方では、リルアコ氏のスタンドプレーは、ヘレロ内部の権力バランスを崩すと同時に他民族との融和を乱す、という主張も存在しました。さらに、故郷を離れて都市で働く若者には、ヘレロの組織や権力自体に関心を持たない者も多いことがわかりました。また、ヘレロはサンの土地を侵略してきた移住者でもあり、土地所有権の正当性には疑問が残ります。これらから、ヘレロの先住民的団結は未発展だといえますが、社会再建の過去と現在についての彼らの語りが現代ナミビアにおけるヘレロ・アイデンティティの多様化の進行を示していることを指摘しました。

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