Activity
活動内容

留学報告

2008.10.10

香室
 2007年9月から2008年7月の11ヵ月間、熊本大学文学部の交換留学制度を使い、ドイツ西部に位置するボン大学に留学した。その目的は、(1)ドイツ語を基礎から学ぶこと、(2)アフリカとヨーロッパ、そしてドイツ植民地主義との関係について調査を進め関連資料を集めること、(3)ドイツにおける南部アフリカ研究とドイツ植民地主義に関する研究の動向を調査すること、以上の3点であった。これらの目的は、元ドイツ領ナミビアで現在暮らしているヘレロ(Ovaherero)たちのアイデンティティとドイツ領時代の歴史との関係という、修士論文の研究テーマから生じている。

【留学中の活動とその成果】
まず目的(1)に関しては、留学生用の語学プログラムに参加し、文法、会話、読解、発音などの講座を週15時間ほど受講した。さらに個々人の活動として、ボン大学で日本語を学んでいる学生たちとペアを組み、ドイツ語と日本語の会話の練習や言葉の言い回しの練習をパートナーとして行った。このような学習方法と学生寮での生活によってほぼ毎日誰かとドイツ語を話すような環境を作ることができ、自然な形でドイツ語力を高めていくことができた。
目的(2)に関しては、修士論文作成に向けた文献収集をボン大学やケルン大学の図書館などで随時行った。また、首都ベルリンの民族学博物館やドイツ歴史博物館、ベルギーの王立中央アフリカ博物館、ポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウ、オランダのアンネ・フランクの家といった、直接的、または間接的にヘレロ研究と関係する場所を訪れ、資料収集やデジタルカメラによる撮影を行った。特にドイツ歴史博物館では、ドイツ領で用いられていた物や写真などの資料を観ることができた。さらにここでは、近年のヘレロ研究の動向を示す資料Namibia-Deutschland: Eine Geteilte Geschichte(『ナミビア―ドイツ:共有される歴史』)を入手した。現地で紹介されたドイツ国立公文書館のホームペー上の資料も、修士論文に活用している。
目的(3)に関しては、現地の留学生担当の先生に頼んで他大学の研究者やケルン大学でアフリカを研究する学生を紹介してもらい、そこからEメールのやり取り、実際に会ってみるなどして研究の動向を探っていった。これらの調査により、主に言語学的研究が行われているアフリカ研究所と、歴史的研究なども行われている民族学研究所を有するケルン大学でのナミビア現地調査の発展性を知った。次のドイツ留学の機会があれば、ケルン大学民族学研究所で行いたいと考えている。

【その他、感想】
 ドイツでの1年間は、第一に、ほとんど初心者レベルからどのようにしてどこまでひとつの言語を身に付けることが出来るのかという、自分の中の実験でもあった。おそらくこれは、人類学の現地調査に付きまとってくる課題だと思うからだ。ドイツ語習得の過程は、始めは全く認識できなかった単語を無理やり用いていくうちに実感がわいてくるようなもので、色々な人たちとのそれぞれのやり取りの中で発展させていくことができた。それぞれ学生によって目的が異なる留学生活の中で、ドイツ語学習に意欲的な人、もうすでにドイツ語が流暢で医療施設での研修や会社でのインターンシップのために来ている人、また日本にかなりの興味を持っているドイツ人学生など、何らかの刺激を与えてくれる人たちと知り合えたのは本当に幸運だった。そして様々な移民の子孫―トルコ、イタリア、ポーランド、韓国、日本など―が一緒に暮らすボンという都市に住めたことも、また面白い経験だった。
 大失敗や諦め、無気力期間、ドイツ語研修との二重生活で手に付かない修士論文作成といったストレス要素ももちろん留学生活の一部だった。特にそれらの苦い思い出は、まだ行っていないナミビアでの現地調査の際に戒めとして活かすことができるだろう。このドイツでの生活を最初のフィールドワークにしたいと思いながら出発したのだが、どの程度それが達成できたのかはわからない。だが何にしても、次こそはナミビアへ行ってやるだけやらなければと、現在はそのような想いを抱いている。

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