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【研究室】地震ストーリーズ③ このシリーズについて

2016.05.23

だいぶ落ち着いてきた熊本より記しております。ただ、まだ入院していたり避難所で生活しているみなさん、家を失ってしまった人、小さいお子さんのい るご家庭、地震とその後の建て直しで強いストレスを感じている方々が身近にいて、すべき手伝いや心配はつきません。普段の景色も、足場で覆われた服屋、 「赤紙」を貼られた家、日々大きくなるアパートのヒビ散乱したままのガラスでパンクする自転車等、なかなか安心させてくれません。

人類学でもよくいう「日常生活」が不安定化し歪んでいます。私たちは「日常」が安定したものだと考えがちですが、「日常」が簡単に歪むことを熊本にひとたちはいま経験していると思いますし、同じような地域がたくさんあります。

不 安定が常態である「日常生活」についてはグロー バル教育カレッジのジョシュア・リカード先生(人類学、中東)の昨年度の講義でも多くの文献が取上げられていました。不安定な政情・経済的情勢により難民 化した人々の普段の生活や、誘拐が蔓延する中での普段の生活とは何なのかについて考えさせられた講義でした。今回の地震でそれらの論文やマイケル・ジャク ソンの民族誌 Life Within Limits: Well-being in a World of Want  を思い出しました。政 治・経済・歴史・自然等様々な理由によって自分の居場所や周囲の状況が変わる中で、人間がどんな選択をし、何に影響され、何を大切にしながら日常を新たに 築いたり、回復していくのか、サバイバル状況を経験した全ての人々に関係する問題かも知れません。そしてそれらの「回復」は地域全体に関わることであり、 「がんばるばい、熊本!」の掛け声の下にイデオロギー化されていると同時に、個々人に固有のそれぞれ異なる経験でもあるように思います。

こ の「地震ストーリーズ」は、集団的であると同時に個々の経験でもある、地震によって生じた行動や感じ方を記しておこうという動機から始まりました。それ と、一時期地震以外のことはなにも手につかず集中できなかったため、どうせなら地震関係で何かした方がよいと思い立ちました。何の役に立つか、人類学的に どう貢献できるかはわかりませんが、なるべく公にむけて記していきたいと思います。以下、遅ればせながら形式についていくつか記します。

 

[タイトルについて]

今 回、 阪神淡路大震災を経験した方達(地域的に関西と九州は近いので関係者がわりといた)から余震のやり過ごし方や引き続きの用心の仕方、罹災証明に関すること などで具体的なアドバイスをもらった人が多かったようです。「怖かった」「余震が続き安心できない」「またくるのではないか」といった感情の共有もでき安 心につながりました(恐怖という証明が難しい曖昧な感情が理解されないと、そう感じる自分がおかしいのではないか、用心し過ぎなのではないかという疑念が 生まれ発狂しそうになるので)。東日本大震災を経験した方々からも、一部批判に晒されたという学生たちの募金を応援してくれたり、励ましを多くいただきま した。そういった理由で、このシリーズは「熊本地震ストーリーズ」ではなく「地震ストーリーズ」にしております。

[匿名について]

上記と関係ありますが、日本に住むみんなに関係があることなのでは、 自分もいつか経験するかもしれないという気持ちで読んでもらえればと思い、匿名にしています。今回の地震に関わった人ほとんども、こんな地震が来るなんてとひとごとだったと思うからです。

[M ◯.◯ について]

このストーリーの「M ◯.◯」は通番です。地震情報を日に数回チェックする習慣ができたことで、数字がマグニチュードに見えてきてしまった症状が表されています。

(香室)

 

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