慶田研究室ニュース

【日本文化人類学会】11月26日(日)2017年度「次世代育成セミナー」

文化人類学会経由、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所よりお知らせです。

2017年度「次世代育成セミナー」
日時: 2017年11月26日(日)12:30~19:00
会場: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)3階、304・302・306室
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
 
 
プログラム(会場304室、ワークショップには302・306室も併せて使用)
 
12:30~13:45 開会の挨拶:西井凉子(AA研)
若手支援ワークショップ
学会「若手支援ワーキンググループ」主催のワークショップです。以下の3つのテーマでグループに分かれ、若手研究者に役立つノウハウや情報の共有と意見交換を行います。博士課程やポスドク、これからのキャリアを考える修士課程の方々、ライフイベントからの研究再開を考えている方々など、多くのご参加をお待ちしています。
 1. 論文投稿や博論出版等について
 2. 研究継続について(助成金や非常勤等の状況)
 3. ライフイベントと研究のバランスについて 
 
13:45~14:00 休憩
 
14:00~14:05  学会からの挨拶と説明:小田亮(首都大学東京)
 
14:05~15:35 発表1
 白石奈津子(京都大学大学院)
 「共存/共生の技法―フィリピン ・ミンドロ島、落穂拾いの実践からの考察」
 コメント 風間計博(京都大学)
 質疑応答
 
15:35~15:40 休憩
 
15:40~17:10 発表2
 于晶(東北大学大学院)
 「中国における新しい葬制の特徴―樹木葬と海洋葬を中心に」
 コメント 山田慎也(国立歴史民俗博物館)
 質疑応答
 
17:10~17:15 休憩
 
17:15~18:45 発表3
 酒井貴広(早稲田大学文学学術院)
 「災害の『予感』に関する実践人類学的研究―南海トラフ地震に備える高知市沿岸部の事例から」
 コメント 木村周平(筑波大学)
 質疑応答
 
18:45~19:00  講評:深澤秀夫(AA研)・小田亮(首都大学東京)
 
*ワークショップは昼食持ち込み可能です。
**発表50分、コメント20分、質疑応答20分
***セミナー終了後は、多磨駅周辺において参加者 ・関係者による懇親会を予定しておりますので、こちらにも積極的にご参加ください。出欠は当日、会場においてとります。
****託児スペース希望者は、11月12日までにAA研吉田ゆか子 yoshidayu[at]aa.tufs.ac.jp (@を[at]に置き換えています)まで、連絡してください。また期日を過ぎてもお引き受けできる場合もありますので、随時ご連絡ください。
*****なお今年度は都合により西日本会場での開催は見合わせ、東日本会場のみでの開催となります。
プログラムのPDF版は以下から入手可能ですhttp://www.aa.tufs.ac.jp/documents/training/seminars/seminar_program_20171126ja.pdf
 
 
+++++++++++++++++++
<発表要旨>
(1)共存/共生の技法-フィリピン・ミンドロ島、落穂拾いの実践からの考察
白石 奈津子
本報告は、フィリピン、ミンドロ島を舞台に展開される「よそ者の落穂ひろいを人々が寛大に許容する」という実践に対する解釈の検討から、当地における共生の技法について考察する。
落穂ひろいという現象をとらえる先行研究は、常に、拾い手を選別する拾わせる側からのゾーニングや、拾う側と拾わせる側との間の社会関係を強化するパトロン・クライアント関係などといった枠組みを用いて事象を分析してきた。だが、本報告の事例において、拾う側と拾わせる側との間には、民族とし ての社会集団の差異が表象として存在する。時に対立的な言説を向けあう二つの社会集団間において、なぜそういったある種の「与える」関係が成立するのか。
本事例において、落穂拾いを支える規範や倫理は独立した営みとして存在するのではなく、そこには、二つの集団が絶妙な距離のもとで互いへの視線を交錯させつつ、拾い、拾わせる行為を倫理規範やパワーポリティクスから論じ、相手を自らの論理の中への取り込もうとするせめぎあいの実践が垣間見られた。
 
 
(2)中国における新しい葬制の特徴―樹木葬と海洋葬を中心に
于 晶
近年、中国では、樹木葬と海洋葬などの新しい葬制が普及している。新しい葬制は一般的な葬制と比べると、火葬までの流れは一致しているが、その後の遺 骨処理方法は異なる。また、火葬後の埋葬形態のみならず、新しい葬制の祭祀も一般的な葬制と一致していない。樹木葬に関する先行研究では、樹木葬の特徴や普及の原因について詳しく研究したものはあまりない一方、海洋葬に関する先行研究には、筆者による論考以外に海洋葬の式次第・特徴について扱ったものはなく、普及の原因はあまり深く分析されたものはなかった。本研究では、樹木葬と海洋葬を中心に、現地調査に基づき、中国において新しい葬制が普及する理由を分析する。研究によって、中国の樹木葬と海洋葬は同じように政府(民生局)の管理下にあり、政府によって推奨されているが、全く土地を使わない海洋葬がより推進されていると判明した。そして、大連市での現地調査により、樹木葬 と海洋葬では、分解できる壷の使用が共通しており、新しい葬制が一般的な葬制より環境に優しいと考えられる。また、樹木葬も海洋葬も祭祀があるが、一般的な祭祀と異なるところがある。一方、墓の有無・祭祀用品については、樹木葬と海洋葬は相違がある。普及する理由について判明したのは、伝統的な考え方と強くつながる自然観は樹木葬の普及に対して大きな影響を与えるということである。一方、樹木葬における自然観と違い、海洋葬における自然観は伝統的な自然観から影響を受けた可能性があるが、現代の科学的な自然観とより近い。また、霊魂観については、樹木葬における霊魂観が伝統的な霊魂観と一致しているが、海洋葬における霊魂観は唯物主議論と霊魂を信じる考えが並存しながら融合し ている状況を反映している。
 
 
(3)災害の「予感」に関する実践人類学的研究―南海トラフ地震に備える高知市沿岸部の事例から
酒井 貴広
本論文は、近年高知市沿岸部の地域住民の間で高まりつつある「災害の予感(以下予感)」の特徴と、この「予感」が引き起こす精神的不安への対策を、公共人類学と実践人類学の融和から明らかにしようとするものである。近年までの公共性論においては、ハンナ・アレントを下敷きとした「多様な公共性」の視座に焦点が集まっており、公共人類学においても、発災後の住民に対する精神的ケアや被害からの発展的復興の意義が指摘されてきた。しかし現状の議論では、災害発生以前に脅かされる地域住民の精神生活の保全とケアが看過されてきた。この問 題に応えるため、本論文では南海トラフ地震への「予感」を事例として、まだ見ぬ災害の被害を可能な限り減ずるべく尽力する人々の実践に着目し、彼ら・彼女らと生活世界を共有しつつ「予感」の全体像を描く、手探りの試みを遂行した。
本論文では、高知市沿岸部・梶ヶ浦地区の一つの家に注目し、実際に梶ヶ浦地区で昭和南海地震を罹災したA氏と、南海地震当時は高知市中心部に居住しており、A氏の弟との結婚を機に梶ヶ浦地区へ転入したB氏の語りを、あえて方言を残したまま描出した。考察の結果、A氏は昭和南海地震とこれに伴う津波を実際に体験したがゆえに、テレビ番組などで報道される東日本大震災の被害と、来たるべき南海トラフ地震の被害を明確に弁別しているといえる。一方、B氏は昭和南 海地震の津波被害を体験していないがゆえに、将来の南海トラフ地震のもたらす被害をテレビニュースや東日本大震災の映像から「予感」していると解釈できる。加えて、あえて方言を残した語りを取り上げる試みは、学術研究のプロセスにおいて、インフォーマントの個性や主体性を過度に抽象化せざるを得ない知の陥穽を乗り越えるための道筋を示しつつあり、「多様な公共性」論の進展にも重要な貢献をなすと期待される。

 

ニュース一覧に戻る