慶田研究室ニュース

【KAFS】報告・熊本人類学映画会 第6回 1/17(Tue)17:30-, 6th Session: "NATURE AND ITS MANIFESTATIONS: FROM FOUR POEMS 自然と兆候/4つの詩から"

KAFS第6回セッションの報告です。報告が大幅に遅れましたがKAFS第6回セッションは予定通りに行われました。

大学での開催は4回目となりましたが、嬉しいことに回を追うごとに盛り上がりが感じられます。また、今回の上映後では岩崎監督にskypeを通して会場でのディスカッションに参加していただきました。参加者が上映直後の鮮明な感想を監督にぶつけ、それに対して監督も滔々と語っていただくことができ、この会場と監督を結ぶ試みは成功したように思います。


"NATURE AND ITS MANIFESTATIONS: FROM FOUR POEMS 自然と兆候/4つの詩から"(50min 岩崎正孝監督 2015)

 福島第一原発事故後、立ち入り制限がかかり、閑散としている街の様子、人がいなくなり長閑さを取り戻した野原を撮影する映画監督、写真家の人々を撮影した作品である。福島をチェルノブイリと重ね、福島の避難指示解除準備区域風景を撮影しているオーストリアのニイコラウス・ゲイハルター映画監督。今や人の手が及ばない福島の野原を撮影している日本の写真家、露口啓二氏。現在も福島で行われている「馬追い」祭りの写真を撮影している韓国の写真家、チョン・ジュハ氏。本作はこの3名の撮影の様子に、三名の朗読家、菊池裕喜氏、阿津聖恵氏、徐京植氏らが詠う詩が重ね合わせられていき、映像と詩の朗読がお互いを追いかけるような詩的な映像作品である。
 ゲイハルター氏は"人類世のその後"(人類が滅びた後の世界)をテーマとした作品『SOMETIME』(日本語版タイトル『人類遺産』)の撮影地の一つとして福島を選んだ。主に住民たちが避難した後の街並みや廃墟を撮影していた。人も車も通るこのない交差点の中央に脚立を構え撮影しているゲイハルター氏等撮影隊は、人が消えた町の中で異質さを放っていた。
 露口氏が、人手のつかなくなった田畑や土手、海岸等を撮影している場面では、終始、小鳥や風のかすかな音が流れていた。ジョシュア・リカード先生曰く、映像人類学界ではこうした自然の音をBGMとすること、またそれ自体に関心が高まってきているそうだ。このことを、skypeを通して岩崎監督に伝えると、こうした鳥の声や自然の音を拾うことは大変難しいらしく、本作でも鳥の声がBGMとして使えるようになるまで何度もノイズを取り、苦労したことを語ってくれた。
 ジュハ氏は、前述の二人と異なり、馬追いの様子を撮影している。ジュハ氏の撮影の様子は馬やその周りの人々に囲まれ賑やかであった。廃屋や人寂しい風景の場面も多い中で、馬や笑顔の子ども地元の人々に囲まれて撮影をするジュハ氏の様子は、観ている側に少なからずの安心感を与える効果があるように感じられた。
 本作は3人の映像作家の撮影風景を映した作品であるが、一環して彼らの映像や作品は岩崎監督の映像の中には現れない。作品全体を通して、撮影風景が描かれているにも関わらず、彼らが撮影した作品がどのようなものであるかは最後までわからない。しかし、この裏には被災した地元を撮影することに対する岩崎監督の葛藤が見えるように思う。3人が撮影した土地は岩崎監督にとって地元である。被災地となった地元、眼前に広がる直視しがたい現実を撮影し、映像として伝えるために、第三者であるゲイハルター氏らの目に映される過程を撮ることで岩崎監督は地元を撮影対象として客体化しようとしたのではないかと感じる作品であった。(田口)

(写真、左: 主催者香室結美さん、右: 監督と会場のskype中継の様子)
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これまでのKAFSの活動
★セッション第7回 お知らせ
★セッション第6回 おしらせ
★セッション第5回 お知らせ報告
★セッション第4回 お知らせ報告
★セッション第3回 お知らせ報告
★セッション第2回 お知らせ報告
★セッション第1回 お知らせ報告

 

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