慶田研究室ニュース

【KAFS】報告・熊本人類学映画会 第5回 11/17(木)17:30-, 5th Session: "FireKeepers"&"Kids Got a Song to Sing"

11/17(木)に熊本現代美術館5階アートロフトにてKAFSの第5回セッションが行われました。用意した椅子が全て埋まるほどたくさんの方に参していただき、ありがとうございます。
KAFS第5回セッション詳細はコチラから
 

 Rosella・Ragazzi (ロゼッラ・ラガッツィ)監督作品の"FireKeepers"  (2007年、ノルウェー、57分)は、ヨイク(yoik)というサーミ人にとって、簡単に定義することはできない音楽を中心とした映画である。ヨイクとは歌であり、自然や人との対話、経験そのものでもある。映画は、焚火を囲み、テントを張った湖畔でヨイクを歌うシーンから始まる。ヨイクは伝統的な音楽としてサーミの中で受け継がれている一方で、現代的なライブハウスや、野外スタジオで披露される。ヨイクは伝統的なものであるだけでなく現代の中に織り込まれているのだ。映画では、Lawra SombyとSara Marielle Gaupの二人の若いサーミ人に焦点が当てられている。この二人のヨイク歌手を中心にサーミの文化、サーミ語についても触れられている。
現在、サーミ語は話者の減少が著しい言語とされている。さらに、サーミ語は北サーミ語と南サーミ語に別れており、時にはこの言語の問題をめぐって家族内でも対立することがある。ヨイクやサーミ語を積極的に話すことで自らの文化を守ろうとする運動が若い人たちの間で起こっているが、Sara Marielle Gaupはそうした運動により差別的な言葉を浴びせられていたことを語った。また、Lawra Sombyは幼い頃、サーミ語を話していたところ、学校でサーミ語を喋ることを強制的に禁止されたエピソードを通して、自らの言語やサーミ人、自分のアイデンティティが不明確である不安、そして怒りを語っていた。彼は最後に、こうして、カメラを向けられ語ることで子供の頃から抱えていた判然としない思いが分かった気がすると笑ったのだ。この彼が想いを吐露するシーンはとても印象的であった。
 川瀬慈 監督"Kids Got a Song to Sing"(2005年、エチオピア、37分~45分)は、弦楽器マシンコを弾き語るアズマリ(自称:Enzata)の二人の少年、タガブとイタイアが主人公である。二人は結婚式などが行われる場へ赴き、演奏を披露し稼ぎを得る。しかし、映画の中では、すでに契約を取った演奏家や大人のアズマリに邪魔をされたり、追い出され、思うように演奏ができない、稼ぎが得られないといった状況に陥る。映像の中で笑顔で演奏をし、同年代の友人たちや監督にじゃれつく元気な姿を見せる一方で、監督が二人の演奏を褒めても、「上手くない」「大人のようにたくさん歌をまだ知らない」と返答する二人に少年から大人へと向かう過渡期の悩みを感じることのできる映画である。
 懇親会にて上映会参加者から、大人のアズマリがいて思うように演奏ができず悔しそうに結婚式の一団を見つめる彼らのシーンについて「あの場面は本当に見ていて悔しかった」との感想が出た。そのコメントに対して川瀬監督も「あの時は自分も本当に悔しかった」のだと語ってくれた。映像に映された二人の少年から会場はやりきれない思いを共有したのである。
 上映後、川瀬監督に、なぜアズマリの少年たちを撮ったのかと尋ねたところ、「自分が彼らを選んだのではなく、彼らが僕を選んだ。Rosellaもサーミを選んだのではなくサーミが彼女を選んだのだ」と答えた。今回は特別版ということでに2つの作品を上映し、フィールドやテーマは異なるがどちらも音楽が大きなキーワードとして構成されていた。そして、どちらも対象者の感情を感じることのできる作品であった。特に私にとって印象的であった、幼いころから抱えていた不安を吐露し、自分を語ることが出来たLawra Sombyの語りや、やりきれないくやしさを監督にも鑑賞者にも共有させた二つのシーン。このシーンから、カメラや監督ではなくカメラを向けられている対象者が映画を描くということ、同じ空間で映画を共にする上映会の意味を強く感じた回であった。(田口)
 
 
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次回、KAFS第6回セッションは2017年1月17日(火)です。
17:30開始、熊本大学グローバル教育カレッジ1階
上映作品 『自然と兆候/4つの詩から』(岩崎孝正監督 2015)
詳しくはコチラへどうぞ、次回もお楽しみに。
 
これまでのKAFSの活動
★セッション第6回 お知らせ
★セッション第5回 お知らせ・報告
★セッション第4回 お知らせ報告
★セッション第3回 お知らせ報告
★セッション第2回 お知らせ報告
★セッション第1回 お知らせ報告
 
Kumamoto Anthropology Film Society (KAFS)
運営委員:慶田勝彦、ジョシュア・リカード、香室結美、田口由夏


 


 

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