木下尚子(KINOSHITA Naoko)


こんにちは。私の研究について、説明しましょう。

私は、日本文化の形成過程を、物を通して明らかにしていくことを目指しています。でも、これだけではあまりに漠然としていますので、いくつかのキーワードを用意しました。まず私の専攻する「考古学」、研究する主要地域の「琉球列島」、「環東シナ海」、研究テーマの「交易」、「貝文化」、「装身文化」。これらを次のような三つの方向に分けて研究しています。

その一は奄美や沖縄諸島、先島諸島を含む琉球列島の考古学研究です。これら亜熱帯地域の古代文化が、日本の古代文化形成に深くかかわていることを、具体的に明らかにしたいと思っています。これまで弥生文化と南島(琉球列島のこと),古墳文化と南島の関係を調べてきましたが、その前の縄文文化や、その後の古代、中世については現在進行中です.

その二は、東シナ(中国)海に面した沿岸地域間の文化交流の研究です。中国や朝鮮半島沿岸地域と、琉球列島、西日本の交易を介した人の動きを追跡して、古代人のダイナミックな動きをとらえたいと思っています。琉球列島の特産物である大型貝類は、交易にかかわる人間の動きを知るのに有効です。

その三は装身具の研究です。抜歯や入れ墨などの風習を含め、装身の習俗は人間集団の精神性や思想をよく反映しています。この分析から、日本的精神性や価値観の形成を具体的に描きたいと思っています。勾玉や腕輪、辟邪にかかわる文様論を追跡中です。

夏にはたいてい琉球列島のどこかで発掘しています。久留米絣のもんぺで砂丘を掘っているおばさんがいたら、それは非常に高い確率で、私です。