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考古学とは
 考古学は大地に残された「もの」によって、人間たちの歴史を考える学問です。先人の残した道具や住まいのあと、食物や墓などから、彼らの行動を復原していきます。

 考古学の調査・研究の対象となる時期は、この地球上に人類が登場して以来現在まで、つまり人類が過ごしてきたすべての時間です。
 歴史学の学問分野にはほかに文献史学(熊本大学文学部では日本史学や西洋史学など)がありますが、人類の登場がおよそ500万年前としますと、人類が文字を使うようになったのはわずか5000年前でしかありませんから、文献史学で明らかにできる歴史は全人類史の0.1パーセントでしかありません。

 考古学は、人間たちの歴史すべてをあきらかにしうる唯一の学問なのです。

 ただし、よく質問を受けるのですが、恐竜は考古学の調査・研究対象ではありません。考古学はあくまで人類の歴史を明らかにすることが目的ですから、人類がまだ登場していない恐竜の時代はあつかわないのです。
 ちなみに、恐竜を研究対象にする学問は古生物学です。理学部に置かれていることが多いです。
      
どうやって学ぶか
 考古学を学ぶには、講義を受けることのほかに、遺跡を発掘したり、遺跡や遺物を記録する技術を身につけることが必要です。学生はこれらを演習と実習で学びますが、熊本大学考古学研究室ではとくに実習に重点をおいています。

 実習は毎週行なう学内実習と、夏休みなどに集中的に行なう学外実習にわかれます。

 前者では、拓本、実測、写真、地形測量、製図、報告書編集に関する基礎的な技術を修得します。毎週2時限をこれにあてていますが、学生にとっては、提出物作成のため「毎日が実習」というのが現実でしょう。
 後者では、阿蘇や天草、菊池川流域など熊本県下の遺跡の調査と、奄美や沖縄といった琉球列島の2つの地域の調査を併行して続けています。発掘調査の間は合宿生活をします。これによって、研究室としての一体感が一気に高まると同時に、地域の方々との交流などによって地域社会と強いつながりが生まれます。
 考古学という学問は、けっして1人でできるものではなく、チームとなって、また社会との関わりをもって、調査・研究目的を達成していくという特徴をもっています。

 さて、発掘調査が終わると、調査によって得られた資料を整理して報告書を作成する作業にとりかかります。
 多くの場合、発掘調査から報告書完成まで、おもに大学院生が全体の指揮をとります。皆で力を合わせて、約半年をかけて原稿を整えますが、これはなかなか苦労の多い作業です。しかし春先に、刷りあがったばかりの報告書を手にした時の感動は、何にもかえがたいものです。

 考古学の教育にとって、こうした野外での実習と室内での講義は車の両輪です。他方があって一方の意味が初めてよくわかるようになります。

 講義には、史学概論や考古学概説などの入門性の高いものと、外国の考古学を原語で学ぶ外書講読、専門性の高い特殊講義、発表形式の演習・課題研究があり、これらの延長に総まとめの卒業論文があります。
      
どんな4年間をすごすのか
 4月、希望に満ちた新入生が、海原のような桜花の中、赤門をくぐって熊本大学文学部歴史学科にやってきます。1年生の間は、歴史学の基礎を身に付けることに重点が置かれますが、同時に考古学の概説も学びます。1年生の秋に、歴史学科のどの分野に進級するか選択します。ここで、歴史資料学コース(日本史・考古学)と世界システム史学コース(アジア史学・西洋史学・文化史学)に分かれます。

 2年生になると正式に考古学分野の一員となります。実習や演習が始まり、本格的に考古学に取り組み始めます。

 3年生では実習や演習のほか集中講義を含めた各種の特殊講義が多くなり、各種の専門的知識を学びます。後学期には、発掘調査報告書作成作業において2年生を引っ張っていく立場となると同時に、各人それぞれが卒業論文で取り組むテーマを探し始めます。
 研究室のあらゆる活動の中心となるのが3年生で、もっとも忙しい学年になります。

 4年生になると、時間割の上では(他に単位を取りそこねていない限り)、ほぼ卒業論文作成に専念できるようになります。しかし、実際には就職活動や、教職課程を履修している学生であれば教育実習などで、前半は慌ただしくすぎるようです。しかしこれを乗り越え、後半しっかり追い込みをかけた多くの学生は1月初旬に無事卒業論文を提出します。2月、皆の前で卒論の成果を発表し教員や研究室メンバーからの質問の矢を浴び終えると、3月には後輩たちの花束と教員の祝福の言葉に送られて、赤門から飛び立つことになります。
      
教育の特色
 当研究室では、考古学の基礎的知識とともに実技力ある考古学徒の育成に力を注いでいます。そのため実習をとくに大事にしています。

 授業を担当する木下は東シナ海(東中国海)沿岸地域の文化交流史を、小畑は旧石器時代から農耕開始期のを、杉井は古墳時代を専門に研究しています。したがって専門科目の授業内容も、東アジア地域を対象にした考古学(中国考古学、朝鮮考古学、日本考古学、南島考古学など)が中心で、日本列島もアジアの一地域とみる視点を大切にしています。
 しかし講義内容が特定領域にかたよったものにならないよう、毎年異なる専門分野の非常勤講師を依頼して、講義内容に適度のバランスをもたせるよう工夫しています。

 考古学専攻生には、考古学必修科目の履修に加えて、学芸員の資格を取得するために、博物館学等の科目を履修することを勧めています。これは卒業後の就職の便宜と、文化財を生涯教育に生かす発想を養うことを目的とするものです。
      
卒業後の進路
 卒業後も考古学を生かした職業に就くものと、一般企業に就職するものの二者があります。

 とくに前者では県や市の教育委員会や文化財関係機関に所属して、文化財行政の最前線を担当するものが多いです。このほか博物館に勤務したり、社会科の教員となって考古学を生涯教育や学校教育に生かす卒業生もいます。また卒業後すぐに就職せず、大学院に進んでさらに学究を深め、考古学関係の専門職に就くものもいます。彼女・彼らの中には、大学などの専門研究機関で活躍中の「輝く星」が少なくありません。

 しかし最近の就職難の中で、誰もが容易に希望する進路に進めるとは限りません。考古学を生かした職業に就くのは非常に困難な時代になっています。しかし時代の波にもまれつつ、多少の時間をかけても目指すところに着実に向かっていっているというのが最近の実情です。