熊本市中央区 立田山南麓古墳(上)
発掘調査・測量調査
(2020年度)

徒 然 な る ま ま に


2020年9月22日(火) 後日

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 発掘調査終了からおよそ1週間。

 世間はシルバーウィークとかで4連休でしたが、熊大考古では禰宜田佳男先生の集中講義。
 みっちり3日間。
 で、今日が集中講義の最終日。

 コロナ禍ですが対面での講義を行うことができ、学生にとっては先生と直接会って話すことができる、また多くの学びを得ることのできるいい機会になったのではないかと思います。

 そんな今日の午後、適度に曇っていたので、まだ撮影ができていなかった古墳の近景写真を撮りに現場へ行きました。
 上の写真が、本日撮したカットの一部です。

 現場への道すがら、カメラと三脚を抱えて歩きながら、学生たち、よく頑張って通ってくれたなあと、少し感慨胸に迫るものがありました。
 まだ1週間程度しかたっていないのに、だいぶ時間が過ぎたような、そんな変な感じでした。

 私たちが来なくなったせいか、古墳周辺の地面がかなりイノシシに掘り返されていました。
 そんなところにも時の流れを感じた、今日の午後でした。


 さて、来週から後期が始まります。
 報告書の作成に、頭を切り替える必要があります。
 2・3年生とともに、いい報告書作りができればと思っています。



2020年9月14日(月) 22日目(最終日)

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 最終日。

 学生たちは午前9時半からブルーシートと土のう袋の洗浄、乾燥、片付け作業。
 私は、朝一で提出書類の決裁を大学事務に依頼し、借用していたコーンとコーンバーの返却のため午前のうちに熊本県文化財資料室まで行きました。

 午後には、熊本大学自然科学研究科・理学部総合研究実験棟の9階バルコニー、およびその屋上から、立田山の遠景写真を撮影しました。
 上の写真は、数枚の写真を合成したパノラマ写真です。
 中央に流れるのは白川、遠くにみえる山並みは阿蘇、そして左にみえる山林が立田山となります。

 古墳の場所を明確に指し示すことは困難なのですが、白川に近い側の丘陵の中腹あたりと思います。


 学生たちは、明日から10日ほどのごく短い夏休みとなります。

 後期、立田山南麓の古墳および金峰山南麓・東麓の古墳のあり方について考察を深め、学生たちと報告書の作成に尽力したいと思います。


 コロナ禍の今年、何とか完走することができて、本当によかった、、、
 困難な状況となっても、すぐにあきらめず、何とか事態を前に進めるよう努力することの大切さ、、、それをあらためて学んだ今回の発掘調査実習でした。



2020年9月13日(日) 21日目

 休日
 学生たち、体を休めることができたでしょうか。

 私は、この休日を利用し、調査後に提出しなければならない各種書類の作成を行っていました。

 ・熊本中央警察署に提出する「埋蔵物発見届」。
 ・熊本県教育庁に提出する「埋蔵文化財保管証」。
 ・熊本県上益城地域振興局に提出する「保安林(保安施設地区)内作業完了届」。
 ・熊本県環境生活部に提出する「金峰山県立自然公園第2種特別地域内行為完了報告」。

 明日朝一に大学の教務係にまずは提出し、決裁が下り次第、それぞれのところに送りたいと思います。

 そんなこんなで、休みといっても、夕方までパソコンに向かっていた1日でした。



2020年9月12日(土) 20日目

 大学での器材洗浄の1日。

 朝方は激しい大雨、雷でしたが、9時半頃から太陽が顔をのぞかせました。
 天気予報では、1日中、雨となっていましたが、洗浄後の器材がよく乾く、そんな1日でした。

 今日の人員は、私を含めて7人。
 少人数でしたが、学生たちの頑張りもあり、あとはブルーシートと土のう袋を残すのみとなりました。

 明日は休み。
 明後日の月曜日は、博物館実習が休みの3年生も参加してくれるので、その日のうちにすべての洗浄、片付けを終えたいと思っています。



2020年9月11日(金) 19日目

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 今日、皆で行わなければならない現場作業をすべて終えることができました。

 昨日と同じく、今日も午後から雨の予報が出ていたのですが、雨は降らず。
 1日中、現場作業を行うことができたおかげです。


 残っていた作業、、、
  1.第1トレンチ北壁の土層断面図作成。
  2.第1トレンチ平面図へのレベル落とし。
  3.第1トレンチの埋め戻し。
  4.国土座標測量。
  5.器材撤収。
  6.器材洗浄、片付け。
  7.古墳の近景および遠景の撮影。

 これらのうち、1〜3の第1トレンチに関する作業、そして4、5を終わらせました。

 今日から助っ人の4年生も不在となり、学芸員実習中の3年生も引き続き不在。
 本日は、2年生6人と、本当によく頑張っている3年生1人という少人数でしたが、皆、テキパキと各自の役割をこなしてくれて、現場で行うべき作業はすべて終了することができました。
 皆、目にみえて成長しているなあと、あらためて感じた次第。
 現場開始前までは、レベルを立てるのもおぼつかなかったのにね、、、

 残るは、6の器材洗浄と片付け、および7の古墳の近景・遠景写真撮影です。

 7の写真撮影に関しては、私の時間が許せばいつでも行えます。
 先にも書いたように、遠景の撮影場所もほぼ決めています。
 天気の様子をみて、来週にも撮しに行きたいと思っています。

 6の器材洗浄と片付けですが、明日に実施する予定です。
 でも、明日こそは本当に雨が降るように思います。
 ですので、ブルーシートの洗浄は、次に晴れる月曜日にまで持ち越しそうです。

 そうしたことから、現場の真の終了は、来週月曜日になると思います。


 本日、古墳現地での作業は終了しましたが、すべての関連作業が終わるまで、あと少し、コロナ禍のなか、気を抜くことなく走りきりたいと思います。



2020年9月10日(木) 18日目

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 午後から雨の予報でしたが、1日、天気がもちました。
 というか、太陽がずっと顔をのぞかせていて、写真撮影に苦労しました。


 第1トレンチ。

 土層の状況を慎重に再検討し、表土下の均質な砂質土も地山として理解することで、石室の位置や残存する墳丘の高さ、第2・第3トレンチで確認した礫を多く含む金峰山由来の火山噴出物堆積層の状況などを、もっとも整合的に説明できると判断しました。

 そうして分層を完成し、全面清掃後、トレンチ全景および土層断面の写真撮影に移行しましたが、太陽が曇らず、じっと我慢の数時間。
 あまりに曇りそうにないので、途中でいったん実測のための割り付け釘の設定などを行ったりしましたが、夕方近くになって一時的に雲間がひろがり、その瞬間を狙って、何とか予定したカットをすべて撮影することができました(上の上段写真)。

 その後、割り付け。
 第1トレンチで残すのは、土層断面実測と埋め戻しです。


 第2トレンチと第3トレンチ。

 第1トレンチ作業人員以外の全員で、一気に埋め戻し。
 学生たち、どこにトレンチがあったのかが一見では分らないほど、かなりきれいに埋め戻してくれました(上の下段右写真)。


 午後3時前、第1トレンチで作業を行う学生だけを現場に残し、残りの人員で不必要となった器材の大学への撤収、そして洗浄作業を行いました。
 今日までの参加の4年生が中心となって行ってくれましたが、洗浄が面倒なブルーシートを含め、多くの器材の洗浄を終えてくれました。


 あと、1〜2日の作業量。
 明日、天気がもってくれたら、明日のうちに終わるようにも思いますが、あいにく午後から雨の予報。
 今日も、明日が1日晴れてくれることを祈って休みたいと思います。



2020年9月9日(水) 17日目

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 午前、いい具合に曇って、第3トレンチの平面写真、断面写真は順調に撮り終えることができました(1段目の写真)。
 そして、第3トレンチでは、断ち割りで掘り下げた箇所の断面図を書き加えたのち、埋め戻しに入りました。
 今日は、川砂をトレンチの床に敷いて(2段目左の写真)、トレンチのおよそ3分の1程度まで埋まりました。

 第2トレンチでは、昼前から埋め戻しに着手、数時間でほぼ埋まりました(2段目右の写真、3段目の写真)。

 明日で、第2・第3トレンチでの調査は完了します。


 ただ、第1トレンチが難航。
 土層の解釈がどうもうまくいかず、担当する3年生が1日中、断面とにらめっこ。
 真剣に、真剣に、断面に対峙しているようでした。

 私は今日、大学の教務委員会がZOOMで実施されるため、委員会実施時間の午後2時40分から午後5時まで、現場に持ち込んだパソコンで委員会につなぎながら、ときおりトレンチの様子を見て回っていました。

 私は、午前で第3トレンチでの写真撮影を終えていたので、昼食後の昼休み時間から教務委員会開始時間までの2時間ほどでしたが、学生と一緒に第1トレンチの分層に集中しました。頭を悩ませました。

 やはり難しい、、、

 墳丘面に何の造作もしていないだろうこともあって、どこを墳丘の残存面とするのか、盛土らしき盛土も見出せないので地山成形を主とする墳丘だとは思うのですが、今日のところは、まだすっきりした線引きなっていません。
 すべてのトレンチでの状況、石室との位置関係などがもっとも整合的に説明できる線引き、そして解釈を、明日には確定させたいと思っています。

 明日は午後から雨の予報が出ていますが、何とか1日、天気がもって欲しいことしきりです。



2020年9月8日(火) 16日目

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 台風10号の影響による二連休が明けました。
 台風一過の快晴。
 吹く風もずいぶん涼しくなったようで、30度を超えているようなのですが、とても快適な気候でした。

 さて、今日から学芸員実習期間となり、それに参加するほとんどの3年生は不在。
 でも、1人だけ、学芸員資格の取得を目指さない3年生がいて、その彼女が現場に残り、今日から2年生を引っ張ってくれています。

 真面目に、慎重に、そして的確に仕事をこなしてくれる彼女なので、もっと積極的に前に出てもいいのではと思う学生ですが、それはそれ、彼女の性格でもあり、いいところでもあります。

 今日の現場ですが、第3トレンチでは、金峰山火山起源の噴出物の堆積層だと考えている礫を多く含む土層の断ち割り作業(上左の写真)。
 その礫層がまだまだ下位に続いていることを確認しました。
 礫が多く混じるためきわめて掘りにくい土層であり、またどこまで掘れば終わるのか見当もつかないので、まだ下層に続いていることを断面で確認できる程度で掘り下げは中止。
 この断ち割りに多くの労力を割いても仕方がありませんし、礫層が続くことを確認できたことでOKとしました。

 第2トレンチでは、割り付けのための釘や水糸をはずしたのみ。
 明日、埋め戻す予定です。

 第1トレンチでは、トレンチ北半部のサブトレンチ掘り下げ作業の継続(上右の写真)。
 かなり思い切って下げましたが、何も出土しないこともあって、なかなか土層解釈の難しい状況となっています。

 地形測量図では第1トレンチ周辺は削平されていると読み取れること、第1トレンチ東端部は横穴式石室にごく近いので墳丘面がそれほど下層に来ることはないと判断されること(低すぎると石室が残存している現状の説明が困難になること)、第2・第3トレンチの状況からすれば黒色土層の地山上面が墳丘面である可能性が高いこと、などの状況と整合性のある土層の線引きができるのか、明日以降、じっくり検討したいと思っています。


 明日の午前、第3トレンチの写真撮影をする予定です。
 これを順調に終えることができれば、撤収を今週のうちに行うことができるかもしれません。

 明日、うまく曇ってくれることを祈っています。



2020年9月6日(日)・7日(月) 14日目・15日目

 今、7日、月曜日の午前11時すぎ。

 台風10号は、九州島の西をかすめるように北上し、現在、朝鮮半島南部の東岸にまで進んでいます。

 台風の風が強くなってきたのは、昨夜の日が変わる頃。
 それを確認して床につきました。
 時折、風が窓を激しくたたく音で目を覚ますこともありましたが、ほぼ朝までぐっすり、、、
 普段以上に、ゆっくりと眠ることができました。

 11時過ぎの今もまだ吹き返しの風が強く吹いていますが、少なくとも私の自宅の周辺では大きな被害はなさそうです。
 コインパーキングに駐車しているレンタカーの軽バンにも、先ほど確認してきたのですが、被害はありませんでした。

 学生たちの自宅はどうなんだろう?
 何事もないことを祈っています。

 今日の午後、今の風が収まった頃合いをみて、現場の様子を確認しに行きたいと思っています。

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 午後3時前、現場を見てきました。

 古墳までの道すがらにある桜の枝が折れていたり、古墳北側の道路には小枝や葉っぱが散乱していたりしましたが(上段の2枚の写真)、また、第1トレンチのシートには少し雨水がたまっていて、やや大きな枝も落下していましたが(下段左の写真)、でも、第2トレンチ、第3トレンチにかけたシートにはほぼ何事もありませんでした(下段右の写真)。
 雨水がたまってシートがトレンチ内に落ち込んでいることもなく、またシートを少しめくってトレンチ内を確認しましたが、トレンチ内に雨水が入り込んでいることもなく、とてもうまくシートをかけることができていたのだと思います。

 ホッとしました。


 古墳からの帰り道、遠景写真の撮影場所を探しました。

 立田山と白川との関係がよく分かる場所として、熊本大学の自然科学研究科・理学部総合研究実験棟の上を1つの候補と考え、今日、理学部の事務に問い合わせて、許可をいただきました。
 後日、撮影を試みたいと思います。


 さあ、明日からの再開現場。
 ラストスパートで頑張りたいと思います。



2020年9月5日(土) 13日目

 二連休明けの実働2日目。
 でも、台風10号接近の前日。
 ですので、明日からまた二連休とする予定です。

 今朝はかなり曇っていて、天候の悪化を心配したのですが、午後には太陽も顔をのぞかせて、1日中、順調に作業をすることができました。

 明日からの二連休明け、9月8日から、学生の中心となってここまでの現場作業を牽引してくれた3年生が不在となります。
 博物館実習が始まるためで、コロナ禍の今年、博物館実習の実施期間も1ヶ月ほど後ろ倒しとなっているのです。

 ですので、今日のうちに、3年生が担当していた実測などの作業を区切りのいいところまで終わらせる必要がありました。

 学生たち、頑張ってくれました。

 第2トレンチ、第3トレンチの平面図、断面図の作成はすべて終了しました。
 土層注記も、少し不安だったのですが、まかせた3年生の2人が相談しながら、何とか仕上げてくれました。
 途中で注意を与えたり、最後に少し追記したりしましたが、、、

 やっぱり仕事をまかせてみるものだと、あらためて実感した次第。
 実習ですので、じっと我慢をして見守ることも大切だと、逆に学生たちに教えてもらったような気持ちです。

 第1トレンチでは、集石部の実測作業が昨日までに終わっていたので、その性格を確実に判断するため、トレンチ北半部の半裁作業に入りました。
 すると、集石部ですが、上下に厚く堆積するものではなく、地表近くのその場所に石材が薄く集まっているだけであることが明らかとなりました。
 確実な証拠はないのですが、斜面傾斜が水平に変わるその場所に石材がたまっているだけにすぎない可能性がきわめて高いと思われます。

 測量の線引きは昨日のうちに終えていたのですが、トレンチの測量基準杭、および第1トレンチで実施したSfMのための基準点の座標計測も本日のうちに行いました。
 台風10号がとても強烈だということで、万一現場の木々が倒れたりしたら、今設定している基準点も動かされてしまう恐れがあるためです。

 今日の発掘・測量作業では、いくつかの仕事が入れ替わりつつ並行して進むそんなバタバタした感じでしたが、学生たちが頑張ってくれて、何とかキリのいいところまで終えることができました。


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 今日の現場で特筆すべきなのは、現地説明会をオンラインで行ったことです。

 私が行う実習調査では、学生教育のために、どんな小規模なものであっても必ず現地説明会を実施するようにしています。
 自分たちの調査成果を一般市民の方々にわかりやすく説明するということは、調査成果を客観的に見つめ直すうえでも、また文化財調査・保護の意義を考えるうえでも、きわめて重要であると考えているからです。

 ですが、コロナ禍の今年、人を現場に集めての説明会の実施は、密を避ける観点から、その実現はきわめて難しいものでした。
 ですので、通いによる今回の実習調査の実施を決断した頃から、人を集めての説明会に代わる説明会を何とか実施できないだろうか、と模索し始めました。
 そしてたどり着いたのが、YouTubeによるライブ配信であったというわけです。

 今年度は、授業も会議もその多くがオンラインで実施されていますし、10月以降の後期もほぼそれが続きます。
 そうしたオンラインの便利さ、あるいは問題点を身をもって感じる今年度の前半でしたが、そうした経験があったからこそ、オンラインでの現地説明会の実施を思いつくことができたのだと思います。
 コロナ禍の功罪のうちの功の側面ではないでしょうか。

 で、そのオンライン現地説明会。
 午後1時30分からの約20分間。

 上の写真ような状況で実施したのですが、いかがでしたでしょうか?

 まず、私が挨拶し、そのあとの調査成果の説明は、現場リーダーの3人の3年生が分担して行ってくれました。
 説明内容をかなり念入りに準備していたようで、学生たちの説明はとても上手だったと思います。

 オンラインで見ていただいたある先輩から、感動しました。でも、地山などの専門用語を使わずに優しい言葉で説明できるようになればもっとすばらしいものになったのではないでしょうかとの感想をいただきましたが、それは今後の課題としておきたいと思います。
 なにせ、3人の学生にとっては、こうした説明会自体、初めての経験なので、そうした気配りまではなかなか思いが及ばないのは仕方のないところでしょうから、、、

 私にとっては、オンラインでの現地説明会の可能性を大いに感じさせる経験となりました。
 人を集めての現地説明会を同時にオンラインでも中継する、ということが今後一般的になれば、足を運ぶことのできない遠隔地で実施される説明会にも気軽に参加できるようになります。
 また、チャット機能やメールなども使えば、説明会に対する感想も簡単に聞くことができます。
 それは、文化財ファンの方々へのサービスの向上に直結すると同時に、文化財調査・保護の意義をもっと広く一般の方々に伝えるための有効な手段ともなるのではないでしょうか。

 以下のリンクで、今回の私たちのオンライン現地説明会をご覧になることができます。
 ご感想をお聞かせいただけましたら幸いです。
 https://youtu.be/dCNnKYzD3BU

 なお、オンライン説明会での私の反省点ですが、カメラワークをあらかじめ念入りに考えておくべきであった、という点です。

 学生たちは、説明内容を事前に準備し、予行演習までしていました。
 でも、パソコンを持って撮影する私は行き当たりばったり、、、

 現場の何を撮すのか、どこをどのアングルで撮すのか、どのような導線で現場を歩くのか、などを事前によく考えておくべきであったと反省しています。

 パーンが行ったり来たりしたり、寄りと引きを繰り返したり、画面が揺れたり傾いたりなど、ご覧になっている皆様が画面に酔うような、そんな映像になってしまっています。
 さらに、どこをどのように撮せば調査成果を効果的にお伝えできるのか、についてもっと考えておくべきであったと感じています。
 石室内をもっと寄って撮せばよかったと、終わったあとで思ったりしています。

 そんな経験をして、東京でテレビ番組を作っている友人の苦労に少し思いをはせました。



 さて、今日の現場作業で、もう1つ大切であったのは、台風10号対策。
 先日の台風9号以上に警戒すべきであると思われるため、さらに土のうを100個追加作成。
 トレンチにかけるシートの四周を完全に固める処置をとりました(下の上段写真2枚)。

 また、今日の午前、現場見学に来て下さった熊本大学埋蔵文化財調査センターの新里さんのアドバイスもあり、普段はシートにくるんで現場に置いている器材をすべて大学の考古学資料室に引き上げました(下の下段写真2枚)。
 沖縄出身の新里さんにとっても、今回の台風10号は経験したことのないような猛烈な台風だということでした。

 軽バンで2往復の器材撤収。

 現場が終わっていないのに、現場置きの器材をすべていったん撤収するなんて経験は初めてなのですが、念には念を入れるに越したことはありません。

 今日の現場終了後の大学資料室でのミーティングで学生たちにくれぐれも台風には注意するようにと伝え、本日の慌ただしい現場を終えました。


 何事もなく、台風明けの8日を迎えることができるよう、心から願っています。


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2020年9月4日(金) 12日目

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 二連休明けの現場。
 器材置き場近くの木が一本倒れていたけれど、トレンチへの台風9号の影響はほとんどありませんでした。
 モグラが穴を掘って、トレンチが少し荒らされていた程度です。
 でも、次の10号は、、、大いに心配です、、、


 さて、現場ですが、測量は本日で終了。
 3年生リーダーの1人が、2年生たちを力強く引っ張ってくれました。

 墳丘トレンチですが、第1トレンチでは集石部のレベル落としを午前中で終えました。
 集石部ですが、おそらく後世の削平時に地山に含まれる安山岩が集められた場所の可能性が高いと推定していますが、その確認、ダメ押しのため、明日以降、断ち割りを行う予定です。

 第2・第3トレンチでは、午前に平面・断面実測のための割り付けを行ったのち、午後から3年生の4人が手分けして、トレンチ平面図と土層断面図の実測を開始しました。
 平面的に意味のあるものが何も出ていないので、平面図の線引きは本日で終了。明日レベルを落として終了です。
 土層断面図は、まだ線引きの最中。明日には土層注記に移行できればと思っています。

 いよいよ、現場も終盤に入ったような、私はそんな気がしていますが、実測が初めての学生も多くて、私が一からさまざまな作業の手順を示さなければならず、今日の現場はちょっと手が足りない、少しバタバタした状態でした。

 でも、実測の要領をよく覚えて、次の現場に生かしてくれたらと願っています。


 明日、オンライン現地説明会を実施予定。
 今日の試行ではうまくつながったので、このはじめての試み、楽しみになってきました。



2020年9月3日(木) 11日目

 現場二連休の2日目。

 台風9号の影響はほとんどなく、午前中は少し風が強かったですが、現場を行ううえではまったく支障がないレベル。
 ですので、現場を行えばよかったかなあとまったく思わないわけではないのですが、でも、私にとってもいい骨休めになりました。
 学生の皆はどんな連休を過ごしたのでしょうか?

 私は、今日の午前には、ずっと気になっている熊本県の大綱の会議に出席できました。
 活発な議論が交わされているので、出席できてよかったと思います。

 さて、明日からトレンチの実測作業が中心となります。
 猛烈に強い台風10号が週明けにも最接近しそうなので、日曜日までには、少なくとも第2トレンチ、第3トレンチの実測にはメドを付けたいと思っています。



2020年9月2日(水) 10日目

 現場開始後10日目にして、初めての全休。

 台風9号の接近もあったのですが、9日連続の作業で、学生、とくに皆勤の3年生に疲れがみえたので、そろそろ休みにしようと思っていたところでした。
 そこにたまたま、台風9号の接近が重なったというわけです。
 明日も全休にしています。


 今日は、大学にて、たまっていたメールの処理をしつつ、次に接近してきている台風10号の動きをにらみながら、オンライン現地説明会の準備をしていました。

 コロナ禍の今年、多くの人を現場に集めての現地説明会の実施はなかなかハードルが高く、でも、一般市民の方に調査成果について説明する経験は学生にとってとても大切なものだと考えていますので、何とか説明会を実施できないかといろいろ検討していました。
 そして、オンラインで説明会はできないだろうか、ということで、YouTubeによるライブ配信にたどり着いたというわけです。

 台風10号接近の前には実施したいと思ったので、実施日は9月5日の土曜日としました。
 詳細は以下の通り。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  日時:9月5日(土)午後1時30分から30分ほど
  URL:https://youtu.be/dCNnKYzD3BU
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 学生が手作りで準備するものですので、また私にとっても初めての試みですので、接続が不調になる、画像が見にくい、音声が聞き取りにくい、説明がわかりにくい、などなど、不備が多々発生するかもしれませんが、大目に見ていただけますと幸いです。
 お時間がありましたら、のぞいていただけるとうれしいです。
 よろしくお願いいたします。


 なお、今日は他に、埋め戻しに用いるための川砂を買いに行きました。
 連休明け、現場は中盤戦から終盤戦に向かいます。
 天候次第、また学生の実測のスピード次第ですが、当初の終了予定の9月18日よりは、若干前倒しで現場を終えることができる可能性が高くなってきました。



2020年9月1日(火) 9日目

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 大学はまだ授業中。
 これは昨日も書きましたが、今日から日本史の集中講義がZOOMによる遠隔授業にて始まりました。
 2年生がそれを受講するため、今日の現場は3年生の6人のみの参加となりました。

 少数精鋭?での現場作業、、、

 そのためなのかどうなのか、今日の作業はけっこう順調に進んだように思います。
 適度に曇る天気のおかげかもしれませんが、、、

 今日、第2トレンチ、第3トレンチの平面および断面の写真、計8カットを予定通りすべて撮り終えることができました(下左写真が第2トレンチ、下右写真が第3トレンチ)。
 第1トレンチの集石部の実測も、線引きは午後すぐには終了。
 測量も、昨日計測していたレベルラインまでの線引きは午後3時頃までには終わりました(上左写真)。

 そのあとは台風9号に備えての作業。
 土のうを追加作成し、シートの斜面上部側に置き並べて、シートの下からトレンチ内へ入り込む雨の対策(上右写真)。
 器材置き場のシートもしっかり固定。

 そして、午後5時前には今日の作業を終えました。


 明日・明後日は、台風9号の接近、また雨の予報でもあるので、連休としました。

 しっかり鋭気を養いたいと思います。

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2020年8月31日(月) 8日目

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 まだ大学は授業中なんだなあと感じた出来事、、、
 現場の休憩中、学生がスマホでZOOM配信の遠隔授業を見ていました。
 あらためて、コロナ禍の現在を思い出した一瞬でした。

 立田山公園内の山林にいると、コロナの世界を遠くに感じてしまいます、、、

 さて、現場は中盤。
 第1トレンチでは、墳丘側のサブトレンチ部の清掃、および集石部の実測作業。
 第2トレンチ、第3トレンチでは、掘り下げはほぼ終わり、墳丘面の確定のための土層検討。そして、全面清掃。
 地形測量は、古墳より東側についてはほぼ終了。西側北半部(道路側)のコンターライン記入に移行しています。

 土層検討の結果、墳丘はそのほとんどが地山成形によって構築されていると思われます。
 1955年調査時作成の横穴式石室実測図には標高ラインが示されていませんので、正確なところは今のところ分らないのですが、墳丘の多くが地山成形によるものとすれば、墓壙は深いものと予想されます。
 このあたりの石室を含めた古墳の横断面形状については、もう少し検討したいと思っています。


 台風9号が接近しています。
 明日は現場作業を行いますが、明後日、明明後日の9月2日、3日は現場を閉じる予定です。
 この休みを利用して、古墳の墳丘と石室の関係について、図を作りながら少し考えてみようと思っています。

 、、、明日の撤収は、台風対策に時間をとられそうです。



2020年8月30日(日) 7日目

 現場が始まって1週間。
 ここまではとても天気に恵まれていて、雨によって現場を休んだり中断したりすることはありませんでした。

 今日の昼過ぎ、この現場ではじめての降雨。
 それも、前がみえないほどのすごい大雨とひどい雷。
 13時頃から1時間ほど続いたでしょうか。

 でも、学生リーダーの適切な判断で、皆、雨に濡れずにすみました。

 昼食後の12時半過ぎ、雷鳴が近づいてきて、スマホで雨雲レーダーを確認していた学生が、13時には大雨になると判断。
 すぐにトレンチにシートをかけ、器材を軽バンの荷台に避難させたのち、学生たちは公園のあずま屋に避難しました。
 その直後に土砂降りの大雨。

 1時間ほどの待機のあと、作業再開。
 シートをかけていたのですが、トレンチには大量の雨水が入り込んでいて、その水抜きから作業を開始しました。
 台風9号が数日後に接近するようなので、雨風に耐えることのできるシートかけを工夫したいと思った次第、、、


 さて、今日の作業ですが、第1トレンチでは割り付け、集石部の実測とサブトレンチの掘り下げ、第3トレンチでは土層の精査を行いました。
 人員不足のため、第2トレンチでは作業をしませんでした。
 また、測量では古墳より東側の斜面についてはほぼ等高線の記入を終えました。

 各トレンチにおいて今もっとも大切なのは、どこが墳丘面なのかを根拠をもって認識することです。
 今日、トレンチの分層を担当していた3年生は、とても悩みながらも一生懸命、トレンチの壁と対峙していました。
 もう少し見守りたいと思います。
 頑張れ!


 なお、今日は突然の雨もあって、調査風景などの写真を撮ることができませんでした。



2020年8月29日(土) 6日目

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 ふたたび、やっぱり発掘調査は怖いなあと思った、そして、でも発掘調査はおもしろいなあと思った1日でした。

 まずは、昨日のボタンの出土ですが、それは掘削中の不注意で地表面上に転がっていたものが落下し、それを黒色土に含まれていたものと誤認したものだとわかりました。
 上左の写真がその証拠。
 本日、ほぼ同じ箇所の地表面で、昨日出土したものと同じボタンが発見されました。

 昨日もちょっと疑問符をもってみることもあったのですが、今日のボタンの発見で、本当にすっきりしました。

 もう1つ。
 第2トレンチ、第3トレンチでゴロゴロと出土している安山岩の礫ですが、その堆積は火砕流など火山噴火起源のものではないかとのご教示を得ました。
 人の手が入ったものではないという印象を持ちながらも、その確証を得ることができず、これは何なんだろうと悩んでいましたが、火砕流などによるものとすれば腑に落ちるところが大変多く、また古墳との関係においても整合的な解釈が可能となります。

 昨日の午後から今日の午前までは少し悩みながら進めていたのですが、これでやるべきことが明確となりました。

 明日以降、横穴式石室との関係を意識しつつ、墳丘構造についてさらに検討を進めたいと思います。



2020年8月28日(金) 5日目

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 掘ってみないと分らない、そして発掘調査はやっぱり怖いなあと思った1日でした。

 墳丘面の認定に頭を悩ませながら掘り下げや土層の検討を行っているのですが、第3トレンチにおいて、性格がよく分からないまま古墳時代の地表面の可能性も考えて検討していた黒色土層中からプラスチックのボタンが出土しました(上左写真)。

 サブトレンチの北側に残していた面をサブトレンチのレベルに合わせるよう学生たちが掘り下げていた途中での検出で、そのため私は出土した瞬間を見ておらず、また崩した土のなかに転がるような出土状況であったため、ひょっとしたら木の根や虫の作用によってその位置にあった可能性、あるいは地表面からの落下の可能性も捨て去れないのですが、でも、黒色土層中から出土したという学生たちの所見はきわめて重要です。
 このボタンの検出によって、古墳の東側においては、墳丘面は現地表よりもかなり低い位置にある可能性も出てきました。

 でも、しかし、どうなんだろう?
 明日以降、慎重に検討したいと思います。


 さて、今日まで手伝ってくれていた4年生の2人ですが、ひとまず今日で最後。
 相当助かりました。
 ありがとう。

 残された2・3年生ですが、これが本来の実習メンバーです。
 さあ、頑張りましょう!



2020年8月27日(木) 4日目

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 雨の予報でしたが、1日、天気がもちました。
 昨年は雨にたたられた現場でしたが、今年は今のところ(あくまで今のところですが)、天気が味方してくれています。

 現場は難航中。
 墳丘面がどこなのか、なかなか根拠をもって判断することができず、頭を悩ませています。

 学生たちが掘り下げている横で断面をにらみながら、さまざまに思考をめぐらせていますが、今ひとつ決め手に欠けて、よく分からないというのが今の正直なところです。

 遺物がまったく出ないので、それも判断を困難にしています。

 3つのトレンチは、いずれも露出する石室に近いところにあるので、墳丘面を現地表面からあまりに深い位置に考えてしまうと、石室と墳丘の関係がおかしくなってしまいます。
 とはいえ、古墳以後の堆積量をどの程度とみるのかについても確証はありませんので、なかなか判断が難しい。

 さらに、大きな石材がゴロゴロと含まれている土層もあり、また、第1トレンチで検出されている集石群の性格もいまだ不明なので、本当に難しい、、、

 そうした難しい土層解釈が必要なので、発掘調査自体が初めての2年生やまだ2回目の発掘調査にしか過ぎない3年生たちに、よく考えて掘れといっても酷なのかもしれませんが、でも、遺跡を掘るということの責任の重さを心に刻んで欲しいと思っています。
 ですので、難しい土層解釈が伴う現場なので、しっかり考えながら掘って欲しいと、今日のミーティングで学生たちに伝えました。
 どの程度伝わっているのでしょうか?


 大学院生のいない現場なので、どこかのトレンチを完全にまかせることができず、なかなか気を配るところの多い現場ですが、学生たちが何か1つでもつかんでくれることを願っています。



2020年8月26日(水) 3日目

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 昼頃から午後1時半頃にかけて、少し雨に降られました。
 でも、降雨はその時間帯のみ。
 ですので、昼休みをテントの中で雨宿りして過ごしただけで、午前と午後のほとんどの時間、現場作業ができました。

 第1トレンチでは、集石部を清掃したのち、その写真撮影を行いました(上左写真)。
 それにしてもこの集石は何なのでしょうか。
 葺石??
 でも、後期から終末期に葺石をもつ古墳はどのくらいあるのか、恥ずかしながらよく知りませんので、少し調べないといけません。
 それとも、古墳に伴わない石材?
 そうだとすれば、古墳の墳端はいったいどこ?
 それをどのように確認しようか?

 第2・3トレンチでは、それぞれのトレンチ内の南側にサブトレンチを設けて、さらに掘り下げを行ってます。
 墳丘面がどこなのか、断面をよく観察しながら、考えたいと思います。

 測量は、昨日までは大学院生がついていてくれたのですが、本日から3年生が2年生を指導する体制となっています。
 そのせいか、少しペースは落ちたようです。


 明日は雨の予報が出ています。
 第1トレンチの集石部について、4年生の1人にSfMでの三次元モデル作成をお願いしているので、天気予報がはずれることを願っています。



2020年8月25日(火) 2日目

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 通いによる実習発掘調査、2日目です。

 器材搬入など、朝一から全員で行わなければならない作業は今日からありません。
 ですので、大学の考古学資料室からその日に使う精密機械や図面類、それからお茶などを準備して現場にもっていく班と、直接現場に行く班に分けました。
 大学集合班は私を含めて3人。私以外は今年の現場リーダー(フィールドマスター)の3年生と器材係の2人です。
 この3名以外は、自宅から直接現場に向かいます。

 この今日からの生活パターンですが、おそらく数日で慣れると思います。
 でも、今日はまだ体が馴染まず、今、夜の10時前ですが、なにかとても体がだるいです。

 現場はいつもと同じく、午前8時半から午後5時頃までの作業ですが、現場ミーティングを済ませたあと全員が大学の資料室に戻ることとしています。
 そして、資料室にて、皆、調査日誌を書いたりしながら、現場ミーティングで伝えきれなかった点や翌日の作業内容、準備するものなどを確認するためのミーティングを行います。そのあと、翌日に使用する器材の準備をしたのち、解散。今日は解散が午後7時頃となりました。

 そうそう、今日の午後は、3年生が不在となりました。
 熊本大学ではまだ前期の授業期間中で、今日の午後に3年生が受講している授業が行われましたので、3年生たちは午前に現場で作業を行い、昼食を済ませたのち、大学に戻っていきました。
 ですので、今日の午後は、現場には私を含めて8名のみ。
 私も、ひさびさに測量のスタッフ係となりました。

 測量が初めての2年生たち、要領をつかめたでしょうか、、、
 今日から本格的に測量図を描きはじめました(上の上右写真)。
 平板でもなく、はたまた電子平板でもなく、その中間の手法・・・レベルで等高線を探し、その位置の座標をトータルステーションで計測して方眼紙上に描くという、アナログだけれど距離誤差はほとんど生じない手法を用いています。
 学生たちには、測量器械の使い方のみならず、地形を読む力をつけて欲しいと願っています。

 墳丘調査では、3箇所にトレンチを設けています。
 第1〜3の3つのトレンチ。

 樹木の間を縫うように設定しなければなりませんので、本来なら互いが直交する位置としたかったのですが、第2・3の2つのトレンチがとても近い位置とならざるを得ませんでした(上の下右写真)。

 第1トレンチでは、表土直下から、早くも性格不明の集石が検出されています(上の下左写真)。
 何でしょうか?
 人工的なものなのか、はたまた自然に堆積したものなのか、まったくよく分かりません。
 古墳にともなうものとも思えないのですが、念のため、写真撮影を行い、さらに3次元計測が可能なデータで記録を行ったうえで、先に掘り進めたいと思っています。

 第2・3トレンチは、まだ表土除去が終わったところ。
 古銭が出土したりしています。
 明日から、いよいよ、本格的に後世の堆積土の除去作業に入ります。
 墳丘土との境界をどのように認識するのか、難しい局面になることを覚悟しています。

 台風第8号が北上していますが、逸れてくれることを祈っています。

 あぁ、眠い。今10時過ぎですが、もう床につきたいと思います、、、



2020年8月24日(月) 1日目(初日)

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 立田山での通いの実習調査、初日です。

 朝7時半に大学考古学資料室に集合。
 大学のトラックとレンタカーの軽バンに荷物を積み込み、運転手以外のほとんどの学生さんは自転車で現場に向かいました。
 そして、午前8時30分、調査前写真の撮影から作業を開始しました。

 はじめての通いによる実習調査、しかも県立公園内だということもあって、器材置き場をどうするか、休憩場所をどうするか、から少し試行錯誤。
 当初は、少し離れた五高の森駐車場脇に器材置き場を設置する予定でしたが、やや遠いので現場近くの平坦地の一角に器材を置くことにしました。
 休憩場所もそのとなり。
 調査地の周囲を虎ロープで囲い、許可証も掲示しました(上左写真)。

 そんな風に調査環境を整え、そして昼休みまでにトレンチ設定が終わり,午後からは早くも表土矧ぎに着手することができました。

 測量基準杭も10箇所ほどに設置を終え、明日からは測量に着手できそうです。

 はじめての通い実習調査ですが、思いのほか順調に進んだ印象です。
 それもこれも、大学院生や4年生の手助けがあったからだと思います。

 やはり、現場を複数回経験しているのとしていないのとでは、相当に違うなあと実感した次第。

 明日以降、大学院生の手助けもなくなり、また授業で抜ける学生もあって参加人数も今日ほど多くない日が続きそうなので、どの程度の進行具合になるのか、よくよく見極めつつ、進めたいと思います。

 天気に恵まれることを祈っています。



2020年8月19日(水) 5日前

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 夏の発掘調査実習の直前ミーティング、そして器材準備。
 ようやくここまで漕ぎ着けました。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、本当に紆余曲折、いろいろありましたが(昨日の午前までは、本当にできるのだろうかとの思いでいましたが)、何とか、器材準備を行うところまで漕ぎ着けました。

 今日の午前中には、300人も入る大教室に調査参加者20名程度を集めての直前ミーティング。
 教室の机にはQRコードが貼り付けてあって、それをスマホで写せば、誰がどの席に着いたのか、大学が把握できるようになっています。
 万一の濃厚接触者追跡のためのシステムで、今年の5月頃から本学では稼働しています。


 平時であれば、4年生が準備してくれる発掘壮行会が行われ、そこで鍋でもつつきながら、またビールでも飲みながら、調査に向かう2・3年生が抱負を述べたりするのですが、今年はそうした行事もなく、でも、それでは、「さあこれから調査が始まるぞ」という気持ちの入れ替えも難しいので、今日の直前ミーティングで、それぞれ一言述べてもらいました。

 世の中、こんな状況の中でも、調査を行えることの幸せをかみしめ、かつ緊張感をもって、皆臨んでくれているようです。

 そうそう、ミーティングの最中に、YouTubeによるライブ中継の実験も行いました。
 今年は、人を集めての現説もできないと判断しており、でも、調査成果を市民の皆様に伝えることも学生教育にとってはとても重要だと思っていますので、YouTubeを使ってLive中継を試みる予定です。
 上手くいかないかもしれませんが、新しい試みなので、私はこれを楽しみにしています。


 ミーティングのあとは、器材の準備。

 宿泊をしないため、また1日の現場参加者が平時の半数程度となっているので、さらに大学近くの現場だから器材に不足があればすぐに取りに戻れることもあって、持っていく器材の数を大きく減らしました。
 泊まりの現場であれば持っていくはずの洗濯機や冷蔵庫、洗濯物干し台などの大道具がないので、上右の写真にあるように、器材の数がとても少ない印象です。


 さあ、今日でほぼすべての準備が整いました。法的手続きもすべて終わりました。

 あとは、無事、8月24日を迎えることができるよう、祈るだけです。



2020年8月13日(木) 11日前

20200813kofun-genjo20200316.jpg(127699 byte)  コロナ禍の今年、夏の発掘調査実習は立田山南麓古墳(上)にて行うこととなりました。

 熊本大学黒髪キャンパスから徒歩20分、熊本市中央区黒髪8丁目に所在する後期ないし終末期の円墳です。
 現状において、上半部が失われた横穴式石室が顔をのぞかせています。
 右の写真のような状態です。

 さて、その古墳の立地からもお分かりになるように、今年の調査実習は合宿ではなく、自宅からの通いで実施します。

 いつもの公民館での合宿では、3密の状態をどうしても避けることはできません。
 というか、合宿生活は3密の極みというべき状態です。

 昨年度からふたたび合宿をお願いしている阿蘇市山田地区ですが、お年寄りも多くいらっしゃるので、そうしたところに若い学生が大挙して訪れること、そして何より万一新型コロナウイルス感染症を広げてしまったら取り返しが付かないこと、また学生同士の間においても合宿ではどのように頑張っても接触の機会が多くなってしまうこと、などさまざまに考えた結果、学生の社会性を養ううえではとても残念なのですが、合宿での発掘調査実習の実施を断念しました。

 実は、合宿での発掘調査実習の実施が難しくなることは、コロナがはやり出し、さまざまなイベントの中止が目立ちはじめた2月下旬にはすでに予想していました。
 ですが、学生の学びの機会を失うことは何としても避けたいと思い、合宿ではなく通いで発掘調査実習ができないかと、その頃からフィールドを探りはじめました。
 そして、かねてから気にはなっていたけれど実態を詳しく調べたことのなかった立田山の古墳での調査の可能性を考えはじめました。

 3月の半ば、調べた情報をもとに、地図と簡易GPSをもって立田山を歩き回りました。
 その過程で、『新熊本市史』では1955年の調査後に消滅したとされている立田山南麓古墳(上)が現存していることを確認しました。
 そして、この古墳をもしフィールドとすることができれば、少なくとも大学の近くに暮らす学生たちは通いで調査に参加でき、また自宅生であってもバスなどの公共交通機関を用いれば何とか通えるだろうと思い立ちました。
 さらに、もし未報告のままとなっている1955年調査の成果も合わせて報告することができれば、文化財の保護・公開にとっても、さらに学生教育にとっても、きわめて有意義なものになるのではないかと考えました。

 そうした思いを、熊本市や熊本県の文化財保護部局にお伝えしたところ、とても親身になって相談に乗って下さり、今回の調査の実施になんとか漕ぎ着けることができました。
 その過程では、古墳が立地するのは保安林であり、また県立公園内でもあったため、熊本県森林保全課や林務課、自然保護課の皆様からもさまざまな配慮を頂戴しました。
 本当にありがたく思っています。


 さて、今日、8月13日。
 有志の学生、3年生の3人と一緒に、古墳近くまで標高を運びました。

 猛暑、、、暑かった、、、久しぶりの外での長時間作業で少々疲れました。
 理由がよくわからないのですが、この1年で体重がかなり減っているので、少し体力が落ちているのかもしれません。

 ところで、今回のレベル移動ですが、移動距離と高低差が大きいので、作業を簡単にするため光波測距機にて実施しました。

 とはいえ、光波で座標を出していくのではなく、光波をレベル代わりに用いるというもっとも通常のレベルによる水準測量に近い手法です。
 この手法では、基準となる水準点と古墳近くのポイントとの間を往復しますので、誤差の確認を行うことができます。
 また、移動距離も簡単に記録できるので、何級の許容誤差内におさまっているのかも確認できます。

 くわえて、光波のいいところは、器械よりも高い位置との高低差を計測できるところ。
 それにより、測定回数を大幅に少なくすることができます。
 つまり、誤差が生じる余地を大きく減らすことができるのです。

 でも、レベルでスタッフの目盛を読むように高さを直接測っているわけではないので、視準の際は一定位置にしっかりと固定するようにしなければ、大きな誤差が生じてしまいます。

 結果、、、4級水準測量の許容誤差内にかろうじておさまる成果を得ることができ、それでよしとしました。

 実習の授業、練習ではなく、実際の現場のための本番のレベル移動を初めて行ってくれた3年生たち。
 よく頑張ってくれたと思います。


 調査の開始は8月24日の予定。
 今年の前期の授業終了は9月4日なので、調査は授業期間内から始めることになります。
 そのため、授業のある学生は、とくに前半戦には参加することができず、研究室の2・3年生が毎日全員参加するわけではありません。
 1日の参加者がとても少ない日もあります。
 そうしたコロナ禍の通いの現場。
 初の試みなのでどのように運ぶのか、かなり不安な部分があるのですが、何とか無事にやり遂げることができればと願っています。