総合人間学科

文化人類学

horse.jpg 文化人類学は旅に似ています。ただ、文化人類学の旅は少々特殊なものです。旅先で出会った自分とは異なる人びとの世界に魅了され、その世界の細部へと分け入りながら、自分で旅のルートを模索せねばならないからです。最初は誰でも不安なのですが、その不安は自信に変わっていきます。旅の記録とも呼ぶべき民族誌を助けにしながら、教室の仲間とあれやこれやと悩みつつ、自らの旅のルートを見つけていくのがこの学問の面白いところです。
 文化人類学には旅先案内人としてシンジルトと慶田勝彦がおり、各人が演習や特殊講義等を通じて文化人類学に関する基礎的な考え方について多角的に授業をします。大学院進学や文化人類学を専門とする留学などにも対応した教育になっています。学部から文化人類学を専門に教育している大学はそれほど多くはありませんから、それだけでもユニークな教育研究領域であるといえるでしょう。

afr.jpg シンジルトは、主に中国の西部民族社会における集団範疇と自然認識の展開を研究しています。前者に関して、少数民族集団の間で生じる土地紛争などの場面において、「部族」や「民族」といった集団範疇がいかにげんきゅうされているかについて、当事者たちの会話や主張の文脈を整理しながら研究してきました。これに加えて現在、動物(家畜・その他)や植物そしてほかの自然物とのあるべきとされる接し方をめぐっる地域住民の説明や解釈を収集し、そこで見られる彼らの自然認識のあり方がいかに生成され、いかなる多様性をもつかを考察しながら、彼らの境遇と論理を理解していこうとしています。

 慶田は、主に20世紀初頭から現在にいたるまでのケニア海岸地域における歴史的、社会的、宗教的、政治的実践をフィールドワークしています。特に、妖術、憑依、祖霊といった社会のjの影のような領域の研究を通して人間が作り出す文化の複雑さと滑稽さに驚くと同時に、様々な困難を抱えた現代社会をシリアスに、しかしユーモアをもって生きている人びとの姿に感銘を受けています。また、文化人類学の歴史、映像人類学、アフリカン・アート、世界遺産研究に関心があり、いろいろな領域における文化人類学的なアプローチの可能性を模索しています。

 

授業内容と授業科目例

学年 授業内容 授業科目例
1年次 文化人類学の対象、方法、基本概念について学びます。 文化人類学概論Ⅰ
2年次 文化人類学の基礎的な知識と実践についてを幅広く学習します。 文化人類学概論
社会調査法概説
3年次 各人の研究テーマの設定と研究方法について学習をすすめます。 文化人類学演習
文化人類学応用演習
社会調査実習Ⅰ・Ⅱ
課題研究Ⅰ・Ⅱ
4年次 スタッフの指導を受けながら卒業レポートに取り組みます。 社会人間学応用演習
課題研究Ⅱ
社会人間応用演習

卒業論文のテーマ例

他者を構成するもう一つのまなざし:女性割礼を中心に/韓国の仮面:風刺が形成した社会/カンボジアの絵絣ピダン:「もの」としてのはたらき/哈日族のなり方:経済的集団がつなぐ日台関係/民族境界の超え方:中国の計画出産政策を利用する人たち/再建されたトーテム・ボール:北西海岸におけるモノ、自然、社会

メッセージ

慶田 勝彦先生

 文化人類学は多様性に満ちた学問ですが、多様性を無理に統合するのではなく、様々な個性を尊重しながら、お互いの個性を響き合わせたり、繋いでみたりする試みを大切にします。違っていることを批判したり、矯正したりするよりも、異なる考えや価値を共鳴させ、他者の語りを自分の語りのじようにするのが性に合っている学問なのでしょう。人は自分のことをより深く知りたいと思う動物ですが、自分の心の奥を覗き込んでも本当の自分が姿を現すとは限りません。他者のちょっとした働きかけによって意外な自分にきがつくこと、この日常的営為の先に文化人類学は位置しています。

坂井 優理恵(2014年3月卒)

 私の所属している文化人類学研究室の特徴は以下の2点です。第一に、研究対象が非常に幅広い点です。学生それぞれがアジア・アフリカ、そして日本国内における様々な文化現象について研究しています。第二に、ゼミの活動が授業だけではなく、多くのことにチャレンジしている点です。特に研究室でフリーペーパー『Kumadai Anthropology Today(KAT)』を制作・発行していることは非常に珍しい取り組みだと思います。研究室に在籍している学生だけではなく、OB・OGの方も原稿を執筆しています。昨年のオープンキャンパスでは出来上がった『KAT』を高校生に配布しました。文化人類学に興味を持ってもらう良いきっかけになったのではないかと考えています。

 私は文化人類学とは「他者を知り、自分を知る学問」だと認識しています。たとえば、ある民族の儀式などを学ぶとき、最初は理解できないとしても、「なぜそういう行動に至るのか」ということを突き詰めていくと、自分たちもさほど変わらない考えで行動していることがわかります。他者を理解し、比較することで、自分自身のことがわかる。これが私の考える文化人類学の一番の魅力です。この考えは日常でも応用でき、自分が理解できないことに対しても、根気強く理解しようとする姿勢が身につきました。

 今年度は研究室に6人の新3年生が入ってくれ、ますます楽しい研究室になるのではないかとわくわくしています。みなさんも私たちと共に、いろんなことに挑戦し、より充実した学生生活を送りませんか。

  • 大学院社会文化科学研究科
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